表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/18

第14話 優しさの代償

暗い部屋、青白いモニターの光だけが揺れる夜。

スマホに届いた一通のメッセージが、ランドリーの胸をざわつかせる。

そして、ランドリーとみなとの過去が、少しずつ明らかになる――。




暗い部屋に、モニターの青白い光だけが揺れていた。


その光の中で、ランドリーはスマホの通知に目を留める。みなとからだった。


> 「ごめん。軽い気持ちで話してしまった」


メッセージを見た瞬間、スマホを強く握りしめた。


全身に嫌な予感が走った。それは、カフェで光に「ただの友人」と言ってしまった瞬間と同じ感覚だった。


「仲良くしてた人がいたけど、他に好きな人がいるみたい」


その一言が、コメント欄をざわつかせ、光と自分との関係を憶測させたらしい。

光を傷つけるような、心ない言葉が飛び交うかもしれない。

頭の中が真っ白になる。焦りと、過去の記憶が同時に蘇った。



それは、配信仲間の集まりの帰り道のこと。


一人で帰ろうとした僕に、みなとが声をかけてきた。


「ねぇ、一緒に帰ろうよ。方向、同じだし」


みなとは人気配信者で、僕より年上。落ち着いていて、どこか頼もしい存在だった。

キッドとも、僕がミラクルワーカーに入る前から親しく、チーム戦の相手になることも多かった。


公園のベンチに腰を下ろすと、彼女は僕の横顔を見つめ、静かに言った。


「ランドリーって、優しいよね」

「そうかな」

「うん…でも、その優しさって自分を守ろうとしてるだけじゃない?」


その言葉は、鋭い刃物のように胸に突き刺さった。

夢を追っても結果が出ず、誰にも弱さを見せられなかった僕は、いつしか「優しいランドリー」という仮面を被って、自分を守っていた。


「ほんとの優しさなら、もっとちゃんと向き合うんじゃない?」


何も言い返すことができなかった。

元恋人の言葉が、ふと蘇る。


――「それって、いつまで続けるの?」


彼女はただの問いかけだったのかもしれない。だが僕には、夢も、そして生き方そのものも否定されたように聞こえた。



少し沈黙した後、みなとは俯いて言った。


「ねえ……もし私がランドリーのこと好きだって言ったら……どうする?」


薄々、彼女の好意には気づいていた。

僕は逃げるように言葉を紡ぐ。


「……ありがとうございます。でも、ごめんなさい。今は、人を好きになる余裕がなくて」


みなとは少しだけ寂しそうに笑い、肩をすくめた。


「そっか。まあ、分かってたよ。ランドリーって誰にも興味なさそうだもんね」


その笑顔の奥に、ほんの少しの諦めと、深い寂しさが滲んでいるのが分かった。


それでも彼女は、変わらず冗談を飛ばし、僕を気遣うメッセージをくれた。

だが僕は、自分を守るために、みなとから距離を置いた。



そして、そんな臆病な僕の前に現れたのが、光だった。


画面越しの彼女に、僕は強く惹かれていた。

どう接していいかわからず、つい素っ気なくしてしまうこともあった。

だが、気づけば無意識に彼女の声を待っている自分がいた。


光は、他の誰とも違った。

オフ会で初めて会ったとき、なぜか懐かしさを感じた。

まるで昔から知っているような安心感。そして、強烈に惹かれる自分がいた。


夢を追い、傷つき、それでも迷いながら前に進む光の姿は、まるで自分の写し鏡のようだった。

しかし、彼女は僕にはない強さを持っていた。

どれだけ打ちのめされても、倒れても、必ず立ち上がろうとする。

そのまっすぐな眼差しが、まぶしくて仕方なかった。



(僕に、彼女を守れるだろうか)


守りたいと、強く願う自分と、軽々しくその言葉を口にできない臆病な自分がいた


スマホの画面を伏せ、ベッドに身を横たえる。


瞼の裏に、光の屈託のない笑顔が、楽しそうな声が、そして少しだけ不安げな表情が浮かび、消えなかった。





読んでくださり、ありがとうございます。

次回は、みなとの視点でお届けします。

叶わない想いが心を揺らす瞬間を描きます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ