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経験値は   になる  作者: 杏原 千鶴


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苛立ちと古びた家

「あの、どいてください」

銀髪の青年は自分の上に乗っかっている僕に冷ややかな瞳と声を向け睨んだ

「ご、ごめんなさい!!」

僕は慌てて青年の上から体を動かして立ち上がる

ことの経緯はこうだ、

皮袋から屋台のおばちゃんにいただいたトナトの分をお支払いしようと

銅貨を取り出そうとして

銅貨を取ったまでは良かったのだ

僕の手から銅貨は転がり落ち坂道のある地面で転がった


落ちた銅貨を追いかけていた僕は

目の前にいる青年に気づかず


 勢いそのまま衝突した


「はぁ、」青年も立ち上がり地面に散らばったでかい何かを拾い始める

それはきちんと形が整えられている木箱のようなものなのだろうか。


「全く、今日はついていないですね、ただ本を調達しに来ただけなのに。」

ぶつぶつ不満と小言が青年から聞こえた

「あの、」

恐る恐る、彼の持っていた何かに目を向けた

それは濡れてはいけない物だったのだろうか

どこかで水が付着してしまって少しふやけていた

「なんですか?」

僕が青年が拾った物に目を向けていると

青年がその視線に気がつき棘のある言葉をこちらに向けてくる

その言い方に怯んでしまい

足が一歩後ろに下がった

はぁ また青年のため息が聞こえ青年と目があった

翡翠色の瞳と銀髪が特徴的な青年で

風が吹くと青年の銀髪がサラサラ揺れた

青年はまた僕とサナラをチラリと見て

嫌そうに眉間に皺を寄せた


多分訳アリとわかったのだろう

巻き込まれるのが面倒

そんな表情だ


__________________________________

「あれま!サリソンくんじゃない!」

屋台で野菜を売っているおばちゃんが

僕らの目の前にいる青年のことをサリソン君と呼んだ

知り合いなのだろうか?

青年の方に目線を向けると

青年はさっき僕らに向けていた表情ではなく

にこやかな品のいい顔をおばちゃんに向ける。

僕達に向けた表情とは違う

おばちゃんは嬉しそうに銀髪の青年にも近づき

僕たちに渡したトナトを青年にも一つ渡した

青年は嬉しそうに

「ありがとうございます!」とにこやかに微笑んで慌てたように四角い何かを抱えながら青年は立ち去った。


カランッ


青年のポケットから何かが落ち

それが僕の足元近くに落ちた

僕は慌ててそれを拾う 水のように透明だが少しサラサラしていてこれは小石だろうか

「待って!落としたよ!!」

そう叫んでも青年はもう僕らの遥か前にいてこれを落としたことに気づいていない

隣にいるサナラが心配そうに僕を見てきて


「にいちゃん!追いかけよう!」

サナラは僕の手を引いて

僕達は石を落とした青年追いかけた









____________________


誰かが僕を笑った


魔術がきちんと

保てない

創れない

出来損ない


そう誰かが僕のことを指差して

笑う


かの有名な家柄の生まれなのに

なんという


落ちこぼれだ


うるさい

黙れよ。


誰も僕を見ていない

父も 母も


お婆様もお爺様も



お前はいらない


違う



違う

違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う


私は落ちこぼれなんかじゃ

_____________________

本を抱えて自宅に帰っている途中

「ねぇ大丈夫?」

後ろからガキっぽい子供の声が聞こえ

私は振り返った後ろにいたのは

さっき屋台にいたガキだったそいつの茶髪は汗で濡れているのか額にベッタリと張り付いていてシャドウブルーの瞳がこちらを見る

そのガキの後ろには歳が離れた子供がいてその子供は後ろに隠れてこちらを見ていた


「またお前ですか?」

そう嫌味を込めてその少年を睨む

少年は私の睨みにおじけたのか、

一方後ろに下がる

かと思ったらこちらにまた近づいて

私の前に透明な石を差し出してきた


それは私の魔石のハクリューム原石だった

「なっ!」

私は慌ててポケットに手を入れて確認するが

ない 慌ててハクリューム原石を青年から奪い取った

青年は驚いた様子だったが関係ない

口から言葉が漏れる

「あなたが私のハクリューム原石を取ったのですか」

_________________

「あなたが私のハクリューム原石を取ったのですか」

「えっ?」

落としたものを拾って渡しにきただけなのに

目の前にいる青年はなぜか目を大きく見開いてこちらに怒鳴ってくる


「あ、あの!」僕が拾っただけだと青年に伝えようとするが青年の怒りに火がついたのか

まるで聞いてくれない

どうしよう どうしよう 


僕が彼の怒気に固まっていると

「にいちゃんは!拾ったのをお兄ちゃんに渡そうと思っただけだよ!!」

突然後ろにいたサナラが僕と青年との間に、割って入った

チッ と舌打ちが聞こえ青年の手がサナラに近づこうとしたので慌ててその手を掴み返す

「い、妹は関係ないでしょ!」

まるで喧嘩をしている男女のようだ


青年は僕の手を強く掴み歩き出した

逃れようとしても痩せている割に筋力があるのか

青年に引っ張られる形で僕は慌ててサナラの腕を掴み

サナラと僕 そして青年はどんどん市場から離れていく

「まっ、待って!一体どこ」

「黙ってついてきなさい。」

決して大きくはない声

だが彼が放つ妙な威圧感に負けてしまう

僕は後ろからついてくるサナラを横目に見ながら青年に腕を掴まれたまま森の中を進んでいく






雑木林を抜けると古びた家があった

家には草木が生い茂っており屋根の瓦は少し落ちていて所々穴が空いている、

家の手入れはうまくされていないようだ


青年はその家の前に着くと何かを喋り始めた

「あの、」今しかないと声をかけようとしたら


ドンッパリンッ!

何かが落ちる音と何が割れる音がし

目の前にあった扉は大きな音を立てながら後ろに倒れた


「えっ…」

その光景に固まる


「なにぼさっとしてるんですか?」

青年は壊れた扉に足を乗っけて家の中に入った


青年はまたこちらに振り返った

「さっさとこっちにきてください」


背中に嫌な汗が垂れたまま

僕らは玄関が吹き飛ばされた家の中に入った







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― 新着の感想 ―
物語の定型句を「おまじない」であり「呪い」であると定義する導入から、作品の一貫したテーマ性を感じました。魔法が衰退し、水差し一つ直せない現実の重みを積み重ねることで、万能な勇者像という虚構がより浮き彫…
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