オハナシ
あるところに一人の青年がいた
名を 勇者様という
勇者様の両親は普通の農民だったが、
運悪く魔獣同士の戦いに巻き込まれ亡くなった。
魔物の息吹に焼かれた両親の遺体は見つかっていない
二人の兄妹は母方の祖父母宅に身を置くこととなった
両親が亡くなったのは
勇者様が12歳の時、妹君が9歳の時だった
勇者様は祖父の木こりの手伝いをしていたときに、
突如現れた大熊を斧で切り倒した。
祖父はその様子を見て剣術の腕があるのを知り、
勇者様を村の騎士団に所属させた。
勇者様は祖父のことを信頼して、
勇者様は約3年間、村の騎士団で鍛錬を重ねた。
任期が終わり、勇者様が祖父母宅に帰宅すると
家は見るも無惨な状況だった。
妹以外は死んでいた。
また魔族に殺されたのだ。
優しくもあり厳しかった祖父母はもういない。
勇者様は祖父母を亡くしてから少し経った時期
彼の剣術の噂が突然
村の騎士団から、領土の騎士団まで広がった
噂が広まってしまったことで彼に魔族討伐をすることの依頼が届いた
彼は冒険者でも何もなく
ただの平民だ
だから平民の勇者様が、その依頼を断れるわけなかった。
エョヴルレイ領地の領主様から命じられたのは
【魔獣討伐】
彼は答えた
「マクナ・ルーズベルト領主様、私のような平民にご機会をいただきまして、誠に感謝しております。」
彼はにこやかに微笑む
「しかしながら、私には己の命に変えられない大切な家族がおります。今回の件につきましては、辞退させていただきたく存じます。」
彼は領主様が住む館で静かに抑揚のない声で告げた。
その返答を聞いたマクナ・ルーズベルト領主様は苛立った。
「なぜだ、其方のような腕の立つ剣士がいつまた生まれるかわからぬのだぞ!!其方は我が領地と己の家族を天秤にかけるのか!?」
マクナ・ルーズベルト領主様の怒号が館内の大広間で響き渡る中
勇者様は苦悩した
妹君とも相談をし
二人である決断をした
自分たちには信頼できる人もいない
自分自身を守るために王国が応募していた魔物討伐に志願しようと決意する
だが、魔物討伐は四人から志願することが可能だ
たった二人では応募すらもできなかったため
彼は妹と仲間を探す旅を出た
というのがミファタリアリルバイス王国が望む物語
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《玉座の間》
蝋燭の炎が揺らめく、玉座の間に控えるのは
王国の最高権力者
ミファス・レモド国王陛下
彼は玉座に鎮座して、
静かな巨木のように目の前にいる青年と少女を見下ろしていた。
一人の黒髪の男が手を挙げた
「この件に関してどなたか異論はございますか?」
そう言われ手を挙げるものはいない
黒髪の男はニコリと微笑み
国王陛下を見た
「陛下ご決断を」
陛下の琥珀色の瞳が目線の下にいる
一人の青年と
一人の少女を
捉えた
「ラルシ・べガルド」
胡桃色の短髪が揺れ 顔が見えた
少し明るめのシャドウブルーの青年はこちらに何かを訴えるようにみる
「サナラ・べガルド」
胡桃色の長髪が揺れ こちらも顔が上がる
その瞳は兄とは違い若草色がゆっくりと見開く
何かに対し ひどく絶望したかのように。
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私は玉座の横から二人を見下ろした。
見下ろす際に国王陛下の右側を見てもあの人はいない
笑みが溢れそうになるがなんとかそれを抑える
「貴様らは今年で幾つになる」
ミファス・レモド国王陛下が話してくださるお言葉に二人の子供の姿勢が正される
「はい。」
まず喋ったのは青年の方だ
「私は今年で11となります」
ミファス・レモド国王陛下はサナラ・べガルドの方を見る
「私は今年で6となります」
国王の視界の中に二人は入っていない
「そうか、」
琥珀の目は濁っている
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国王様は私たちを見ない
国王様の側に控えるのは
黒髪で青目の男と
白銀で金眼の男だ
あの人じゃない
紫の瞳の中に少し黒を含んでいる瞳じゃない。
汚れを知らない綺麗な白銀………
私がその人のじっと見ていると
ふと国王様の横にいた黒髪の人と目が合った
「何か?ありましたか?」そう目線で言われている気がして
私は慌てたように視線をそらした
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「ラルシ・べガルド」
国王陛下が僕の名前を呼ぶ
「サナラ・べガルド」
国王陛下がサナラの名前を呼ぶ
「貴様らに命じる」
「ミファタリアリルバイスに蔓延る魔物 並びに北部地方にいる」
「魔王ファラッセンの首を刎ねろ」
この王国を喰らう“それ”を、貴様らで終わらせろ。
時霊 ウーアティメット 加護の元
二人の兄妹にご加護がありますように




