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経験値は   になる  作者: 杏原 千鶴


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15/27

_______________

兄弟達の楽しそうな声を聞きながら僕はヒベルに疑問をぶつけた

「なぁヒベル、」

ヒベルは何かを考えていたらしく

はっと顔をあげてこちらを見た

「なんだよ、ラル」 

ヒベルの言葉と笑顔が固まった

「ヒベル?おいーどうしたんだ?」


ヒベルに呼び掛けても帰ってくる言葉はない、

だが時折「あ、れ。」と意味のない言葉だけが聞こえてくるだけ


その反応に背中に冷や汗が流れた。

ヒベルは指を震わせながら

僕の背後を指差した

僕は覚悟してゆっくりと後ろを振り返った。

















目 が見えた。

見えた目は人の目じゃない
















獣の目だ。

血肉を求めている獣の目だ

「な、んで、いんだ、」

隣からヒベルの悲鳴に近い声が聞こえた







この地域で、この時期に、冬眠していなくて



この時期に行動をしている


動物は限られている。



俺らの目の前にいる獣





多分


十中八九 



ラダウンドだろう


彼らはとても獰猛で村でも、


過去に人と家畜が襲われて死亡者が出たこともある 


ラダウンドは基本は群れることはない動物だ

1匹で知恵を使い1匹だけで狩を行うため

群れる必要がない

その特徴がある。


群れる期間もとても短く生まれてから5ヶ月ほどしか赤ん坊でも群れない

基本は単独行動だだからこそ、俺たちの目の前にある現実が 信じられなかった





隣で息を呑んだ音が聞こえた

「なんで、あんなに、いるんだよ」

ああそうだ、

オスとオス 



それも多分まだ生まれて2年も立っていない若いオスのラダウンドだった


言葉では怯えながらもヒベルと僕の行動は素早かった   と思う。


魔獣と目をなるべく合わせないように僕らは 


腰掛けていた丸太から立ち上がり


一歩ずつ下がって徐々に自分たちの兄弟達の方に近づいていた


サナラとヒベルの兄弟達はまだ楽しく遊んでいて 


「にいちゃん見てみてー」とサナラは僕に雪だるまを見せてくるが


ぼくたちの変化に気づいたのか


にいちゃんどうしたの?と聞いていて僕らの背後をのぞいてしまった



存在に気がついたのか 悲鳴をあげそうになっていたのを僕は慌てて口を塞いだ


モゴモゴとサナラは動くが 叫んではいけないと気がついたらしくサナラは静かになったが


ゴトンと僕の背後で大きな音がした。

ラベンが林の奥にいるラダウンドに気づいてしまい驚きで大きく丸めていた雪だまを地面に落としてしまったのだ


ラダウンドは直角になった大きな耳で獲物の音を聞くのだという。



僕は父さんからその話聞いたことを脳内で思い出し再生を繰り返す 


ラダウンドはまだ僕たちに気がついいていない


今のうちに逃げなきゃ


ヒベルがここにいる一番年下のラベンを抱き抱えて

ケックも抱き抱えている時ふと溢れてしまったのだろう


震えた声で


「そういえば、俺、ダーラベに聞いたんだけど、」


そこでヒベルの声が詰まる

「ラダウンドって子供を餌にすることがあるらしい」


おい!今ここでそれ話すか!?

と僕が悲鳴をあげたくなったぐらいに驚いていると


ヒッ


と誰かが息を飲む声が聞こえたと思ったら 



ケックがラダウンドに手に持っていた雪だまを投げた 


僕が止めるより早く

その雪だまは空中を舞いながら飛んで行ったのが見えた

 ラダウンドには当たらなかったが 

ゴンッと雪だまは、ラダウンドの近くに落ちて彼、いや


彼らの注意を引くのには完璧すぎた


グルルルと低い鳴き声が聞こえた。

まずいまずいまずい

動かなきゃ

動かなきゃ!

体がいうことを聞かない

思っているだけで体が動かない

「走れ!」

横からヒベルの切羽詰まった声が聞こえて




僕はサナラの手を強引に掴み森の中を走った

体が木の枝とぶつかり頬が裂けるがそんなことを気にしている場合じゃない



「にいちゃん!いまの何!?何があったの!?何がいたの!?」


手を引いているサナラの取り乱した声が聞こえるが

僕には回答をしている余裕なんてなかった

「とにかく走れ!」

追いつかれるぞ!と僕の横から弟二人を抱えたヒベルの声が聞こえて

僕はサナラの手を引きながら山を下り大人達がいるはずの

大きな湖の方向に向かった

湖の方向に行けばきっと大人がいる


大丈夫


大丈夫


大丈夫


心の中で何度も自分を安心させるため大丈夫と呟く


森を抜けると さっきまでいた湖が見えてその周りには他の子供と大人もいた

大人達と子供達は驚いたように僕を見た




僕は必死にその場にいた大人達に見たことを伝える

「森の……奥……っ、…ひみ……き…ちに……行っ……た、ら」

息がうまく吸えなくて言葉が出てこない。

伝えなきゃ伝えなきゃ


だけど息は声にならない


大人達は困った様子で僕と背後で震えているサナラを見ている

サナラはガタガタ訳がわからないと震えていて言葉がでてきていない


あそこで、


あそこで!


起きた出来事を 伝えなきゃいけないのに



大人達はどうしたどうした何があったと

僕を囲む


僕とサナラだけ





僕の横にはさっきまで二人の弟を抱えた


ヒベルと弟達のケックとラベンがいたはずだ


だけど、いつもこういう報告に一番早くする


一番うるさいヒベルの声が聞こえない

横には



サナラしかいない




3人の一人も誰もいない


喉が引き攣る



大人の一人が僕の名前を呼んだ


「おい、ラルシ 」

「ヒベルの坊主はどこだ?おまえさんいっしょに森に行っただろう」


僕はあそこで見た出来後を伝えようとした



ボト


嫌な音がした。

「……」


湖を覆っていた薄く大きな氷が割れ、

誰かの声が、水の中に沈んだ


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