表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

浦川 日歌里ノウラジュウニシ【side:U】

その高い枝のうえからおりて

作者: 歌川 詩季

 風、来ないなあ。

 風さえあれば遠くまで飛んでいけるんだって

 高い枝のうえから 吹かない風を待ってる

 もうちょっとだ もうちょっと待っていれば

 きっと強くて ぴったりな風向きのやつが

 吹いてくるはずだなんて

 ずいぶんのんきな話だよな


 逆に たとえ風が吹いたって

 ちゃんと南まで連れてってくれるかだとか

 心配するんだったら気がはやいぜ

 そもそも いつまでも風が吹かなかったら

 おまえはどうするつもりなんだ?

 いやいや そりゃあ

 いつか風のひとつくらい吹くんだろうし

 もっと待ってりゃあ

 おまえをちゃんと南まで連れてってくれる風だって

 いずれ 吹くんだろうさ


 でも そいつが吹くまえに 冬がやってきちまったら

 おまえはどうするつもりなんだ?

 秋がその色づきを()せさせていくのを

 ただ 見まもりながら

 冬に(むしば)まれていくのをゆるすつもりか?


 正気かよ? 手遅れになるぜ

 いつまで その高い枝のうえで

 吹きもしない風とまでは言わないが

 いつ吹くかもわからない風を待つつもりなんだ?


 おまえのちっぽけな(はね)

 風をまきおこせなんて 無茶言うつもりはないけど

 頼りなくとも 二本の(あし)ならおまえにも

 ちゃんと はえてやがるんだろ?


 だったら

 吹きもしない風とまでは言わないが

 いつ吹くかもわからない風を待ちつづけて

 手遅れなっちまうまえに

 その高い枝のうえからとっとと降りて 地に足をつけて

 頼りない二本(あし)で歩き出せ


 手遅れになっちまうまえに

 風、来ても、気づかなかったり。


挿絵(By みてみん)


※ 下↓にリンクがあります

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  わからぬものを待つよりも、今確実にできることを。  タイムリミットがあるのならなおさら、でしょうか。  歩けると信じてくれている、言外の信頼が素敵です。  日常だと。  バスこないから…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ