その高い枝のうえからおりて
風、来ないなあ。
風さえあれば遠くまで飛んでいけるんだって
高い枝のうえから 吹かない風を待ってる
もうちょっとだ もうちょっと待っていれば
きっと強くて ぴったりな風向きのやつが
吹いてくるはずだなんて
ずいぶんのんきな話だよな
逆に たとえ風が吹いたって
ちゃんと南まで連れてってくれるかだとか
心配するんだったら気がはやいぜ
そもそも いつまでも風が吹かなかったら
おまえはどうするつもりなんだ?
いやいや そりゃあ
いつか風のひとつくらい吹くんだろうし
もっと待ってりゃあ
おまえをちゃんと南まで連れてってくれる風だって
いずれ 吹くんだろうさ
でも そいつが吹くまえに 冬がやってきちまったら
おまえはどうするつもりなんだ?
秋がその色づきを褪せさせていくのを
ただ 見まもりながら
冬に蝕まれていくのをゆるすつもりか?
正気かよ? 手遅れになるぜ
いつまで その高い枝のうえで
吹きもしない風とまでは言わないが
いつ吹くかもわからない風を待つつもりなんだ?
おまえのちっぽけな羽で
風をまきおこせなんて 無茶言うつもりはないけど
頼りなくとも 二本の脚ならおまえにも
ちゃんと はえてやがるんだろ?
だったら
吹きもしない風とまでは言わないが
いつ吹くかもわからない風を待ちつづけて
手遅れなっちまうまえに
その高い枝のうえからとっとと降りて 地に足をつけて
頼りない二本脚で歩き出せ
手遅れになっちまうまえに