熟したら
どんなことでもできる。
どんなことでもできる。
勉強も運動も仕事も遊びも、
どんなことでもできる。
できるのにしていない。
できるのにしていない。
掃除も工作も芸術も献身も、
できるのにしていない。
物心がついてからの
自分の気持を思うなら、
どんなことでもできたのに、
できたというのにしていない。
自分にできないことは、
何と何と何だろう、
そういう考えも持ってみた。
人は殺せないなぁ。
自分の不安は何だろう。
そういう考えも持ってみた。
大きな音に怯える。
高いところから落ちる。
不安なことはそれだけで、
他の不安はただの思い込みで、
この星で生きている限り
確かに生かされているから。
育んでいる力の中では、
余分な不安を持つことが
悲しい歴史の始まりになる。
世界はとっくに見えている。
見つめられる風は、
滑る木の葉を追い立てる。
聞き取れる花は、
飛び交う虫を呼び寄せる。
踏み出せる足は
この体には昔からあって、
差し出せる手も、
この体には大抵はある。
たどり着けるところは、
この地球にしかないから。
まだあの銀河ではないから。
どんなことてもできる。
どんなことでもできるのに
していないだけ。
どんなことでもできたのに、
してこなかっだけ。
わかっているのに、
何にもしてこなかった。
わかっていたのに、
そのままにしてきた。
そして、今日もそのまま。
そのままにしている。
やっぱり会いたかったと、
それさえ伝えないままで。
宇宙から見られたなら、
優しい地球に甘えた、
ただ呼吸するだけの思い。
何も遂げられぬ思い。
どんなことでもできると、
確信する頃には、
熟した蜜柑や柿のように、
鳥がこの身を空へ運ぶだろう。
まだ空にいない今は、
熟してもいないのだから、
固くて美味しくはない。
種もなく美味しくはない。