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98話 カコノ栄光


 鳰家に建てられた蔵には特殊な封印術がかけられている。

 開けるだけならば、無理やり壊せばいいがそうした場合中身が刻まれた術式によって焼却されてしまうので素直に封印を解くしかなかった。

 それは正当な血筋の者にしか封印を解くことができないなんて言う至極ありふれたものだがこの術の優れたところはオーロック機能とでも表すことができるその性能にあった。

 というのもこの式は解いた後に術者が掛けなおさなくとも自動的にまた働くのだ。


 封印術と言っても星の数ほどあるが大抵のものは一度術が解けてしまえばそれきりだ。それは術式とそしては"普通"であり当たり前のこと――それ以前に数多ある封印術といえど突き詰めればすべて例外なくここに当てはまる。それ以外はない。それ以外であるならばそれはすでに術としての条件が成立しない、その時点でそんなバカげた空論は机上に叩きつけられる。

 だが、もしそれがあるのならば封印術には分類されない。


 だがこれは封印術でありそれ以外ではない。

 そしてその(てい)を保ちながらそれを可能にしているのだ。


 その封印術の概要は至極単純なものであった。

 まずは解除条件であるが前提条件として正当な【鳰】の血統を持つ必要がある。

 そして必要となるのが体液。血液と唾液だ。

 血液であれば魔力がよくなじんでいるという理由があるのだが、さらに血液に馴染んだ魔力にはパターンが刻み込まれる。それを利用して一種の暗号のように扱うことでカギとして機能させる。そしてこの時魔力のパターンは外部に出てから1.25秒で崩れてしまうため直接指などをつけて解除する必要があった。これは魔力を封じた状態で血液を保存した場合でも同様だ。解除するには本人がいなければいけない。

 そして唾液だが、これも血液同様、暗号のように働く。だが血液とは違い第四属性魔力によるものであり、厳密には魔力ではないこれはさらに封印を厳重にする。

 この方法は工程としては単純なものであったがこれ以上ないほどにこのタイプの封印術に適していた。


 そしてこの封印術の特徴ともいえるオートロック――つまり重複機能だがこれも原理は簡単普段から周囲の魔素を溜めておき扉が閉められた際それを起点としてあらかじめ刻まれていた封印術が発動する。


 このいたって単純な原理の組み合わせに低コストで運用されていた。




















「こりゃ便利だな。あれだけ時間をかけて読むことしかできなかったのに意味まで理解できるなんて」


 かなめはパラパラと髪をめくる。それだけ適当に目を通しているのに意味が理解できているのに驚いていた。と言っても『言語理解』を使えたとてこんな芸当普通はできずかなめのスペックが相まってのことだが。


「……って、そろそろ帰らなきゃだな」


 かなめは腕時計を見てそうつぶやく。今から帰ればそう急ぐこともないがこれ以上此処にいては夕飯までに帰れない可能性もある。

 そう判断したかなめは棚から適当な書物と道具類を鞄に詰め込んだ。


「リュック出来ててよかったな」


 そう一人で呟き蔵を後にした。

















「……もうこんな時間か」


 時刻は午前三時二十八分。

 かなめはかけられた時計を見て伸びをする。

 勉強以外のことをして徹夜をしたのは初めての経験であった。これはかなめが案外真面目であったことも関係しているがそれ以上に住まわせてもらってる身で心配させるわけにはいかないという本人なりの判断だった。


「まぁ、一日くらいはな」


 そんなことを呟くが、かなめ自身有益であったと感じていたからだ。

 というのもかなめは夜通し持ち帰った書物なんかを読み漁っていたのだが、まだわからなかいことも多くあるもののさまざまなことを知ることができた。主に魔法の類の在り方などだ。

 

 かなめは椅子から起き上がり布団を被る。徹夜と言ってもまだ三時代だ。寝る時間は十分にあるそう思い目を閉じた。


















 翌朝、かなめはいつもと同じ時間に起きた。徹夜明けとは言え、普段からしっかり寝ていれば起きられるのである。

 

 顔を洗い朝食に向かう。

 昼神家の朝食は家族全員そろって食べることになっている。夕食も同様だが朝食のような強制力はない。朝食はともかく夕食は仕事をしていれば集まるのは困難な場合もある。それを考慮してのことだろうが大抵こちらも全員集まるので用事がない限り強制と言っても過言ではない。まぁ、あり方としては本来のものに近いのでおかしくはないのだが。


「おはよう、かなめ」


 通路の途中で声をかけられ立ち止まる。


「おはよう。尊琉(タケル)義兄さん」


 昼神尊琉。

 昼神次期頭首でかなめの2つ上の義兄だ。


「昨日勉強してた様だけど、そこそこにな」


 かなめの部屋にはデスクライトがなく電気をつけると外からわかるためわかってしまうのだ。

 まぁ、していたのは勉強ではなかったが、それは普段の行いの賜物だろう。


「気を付けるよ」


 そんな話をしているうちに部屋に着く。


「ああ、二人とも来たか」


 襖を開けると同時に声が聞こえる。

 声の主は着物の上からでもわかるがっしりとした体つきの男性。当代頭首、昼神タドルだ。


「おはよ、父さん」


「おはようございます。タドルさん」


「ああ。二人ともおはよう。さ、全員そろってる早く席に着きなさい」


 タドルに促され二人は席に着いた。

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