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97話 シモン認証


 鳰家が所有する邸宅はまさに和と言った感じの風貌であった。


 ここに住んでいたのは十一年も前であったため子供ながらに大きいと感じていただけで実際成長してから来ればそうでもない……なんてことはなく成長し、背が伸びてもなお立派な家であった。

 まぁ、そんなことを言ってしまえば昼神の屋敷もたいがいだが。


 すでに侵入しているため今更感が半端ないが人気はない。

 かなめは自分が引き取られてからの家の人たちの情報をほぼ知らない状態だが少なくともここに住んでいるわけではないようだ。建物の中には入ることはできないが裏に回った所にある窓は埃がついて灰色に曇っている。

 すりガラスよりも見づらくなっている事から考えると本当に誰も入っていないようだった。


「……つうか、こっちの窓割れてるじゃねぇか――痛っ、チッ指切った」


 割れた窓のガラスの破片を触り切れた指を咥える。深く切れてないようだが指先は何をするにしても基本的に使うことになる。そのことを考えると非常に不便だ。


「はぁ、迂闊に触るんじゃ……蔵か?」


 家の裏に入ってやっと見えるような位置に蔵があった。

 幼いころ家の裏には近づくなと言われていたためこんなものがあるのは知らなかった。


 見た目は一般的な蔵だ。いや、一般的な蔵と言ってもそんな知識はかなめにはないが、特に特徴らしい特徴はないと言える蔵だった。

 だが何か……いや、何もないはずではあるがなぜかそれが気になった。


 そんなことを考えているうちにいつの間にか足は進んでいた。神社もかくやと言えるほどに敷地内一面に敷き詰められた砂利を踏み鳴らして。

 数十秒前までどくどくと血に濡れていた指先はすでに扉に添えられている。


 その瞬間添えた手を囲うように筆で書かれたような字が現れる。

 文字が円をつくり鎖を模すかのようにつながっていたそれが砕けるようにバラバラになり霧散した。


「……ッ、なんだったんだ?」


 魔法か?いや、魔法なんだろうが……

 

 実際のところかなめは魔法の類に詳しくなかった。

 知っているのは魔石を使用して魔法を獲得するということくらい。将来に期待されてはいたものの齢五歳の少年にそこまでの教育は施されてはいなかった。


 かなめが扉を軽く押すといとも簡単に開くことができた。


「……これは」


 蔵の中は薄暗くはあったが外の光を取り入れているようで真っ暗というわけでもない。それよりかなめは内側からは確認できるはずの光を取り込んでいる木の格子が外から確認できないことに疑問を抱いたがどうせ魔法だろうと無理やり納得する。


 中に入ると壁一面に棚があり書物や何かに使う道具を収納しているようだった。

 入り口手前にある棚から適当に書物を取り出してみるがずいぶん昔の物のようで簡単には読めそうもない。不思議なことにパラパラと適当にめくってみるが埃がついている様子もなかった。

 奥の方には何に使うかもわからないような小道具から実物は見たことはないものの時代劇にでも出てきそうな刀なんてものも置いてある。

 

 此処は一体何なのか、この家は何なのか疑問に思ったかなめはもう一度書物を開いてみた。

















「……ん、ああもうこんな時間か」


 とは言ってもまだ帰るには早い時間であった。とは言えかなめが熱中し時間を忘れていたことは事実なのだが。

 それもこれもこの読もうと思えば読めてしまうこの本が悪い。腐っても使われている言語は日本語だ。なんとなくで推測することくらいは出来る。

 それに目当てのものを見つけるのは案外簡単なのだ。読めなくとも日記か家系図かどうかの見分けくらいつく。あとは地道に読むしかないが。


「と言っても、これだけの時間をかけてざっと3.5ページ。それに読めただけで理解できたわけじゃねーし」


 著作権が切れたばっかりの本ですら古文みたくなっていてほぼ読めないなんてこともあるのにこっちは本物の古文だ。そう簡単に理解することができるわけなかった。


「あと簡単に読めると言ったらここら辺の道具と一緒についてるこの説明書みたいなのか」


 棚に置かれた無骨なデザインの腕輪を取る。金属でできていて何の装飾のない銀の腕輪だ。よく見ると何か字のようなものが刻まれているようだが少なくともかなめが知っている言語ではない。

 そして、近くに置かれた文章と腕と腕輪の絵が描かれた紙を持ち上げる。


「えーと、魔力、供給、機でいいのか?」


 紙にでかでかと書かれているこれがこの腕輪の名前だろう。

 そして一緒に描かれている腕の絵にしたがい腕輪を腕に着ける。


「そしたら、これ、カタカナか?」


 二重丸で囲まれた字を読む。


「えーと『ステー、タス、オープン』?これでいいのか……?――うぉっ」


 それを唱えた瞬間、目の前に現れたウインドウに驚きながらも顔を近づける。


「……なんだこれ?」

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