93話 時系列の錯綜
遅れた上に短くて申し訳ないです
「……は?」
死の宣告を受け時間が止まる。
だが、止まるのは【鳰】だけ。そんなことは関係ないとばかりに目の前に座す彼女は言葉を続ける。
「と言っても、可能性があると言うだけですけど」
そう言って補足をするが【鳰】にとっては断定的な未来にしか見えない。なんたって今までこの少女は世界の動きをも予言して見せているのだから。
あの時だってそうだ。中学校にモンスターが現れ、津田伊織が転移した。想定よりもモンスターの脅威度は高かったが結局のところ、狼のモンスターが出現するということと転移による被害は的中したのだ。
「……で、具体的なことは」
だが、こうしていても仕方がない。
【鳰】は死因を知らなければ対策をしようにも出来ないと思い詳しく聞くことにした。
「そういえば気になったんですけど」
「ん?なんだ?」
仕事中突然発せられた伊勢穂の言葉にタドルが答える。
「おい、イセホ。業務中だぞ」
一緒に仕事をしていたシタバはそうやって注意を促す。仕事に必要なことなら構わないとも過度でなければ少しの無駄話もダメではないと思うシタバだが、今の声のトーンに不信感を持った。
だが、イセホは「いいだろ」と言い話を続ける。
「それでなんですけど俺って人足りなくて結解の要員になったじゃないですか。で、気になってたんですけど前の人はどんな人だったんですか?」
イセホはアデゥシロイを封印する際、作戦前に新人ながらも人手不足や本人の適性の有無、様々な要因が重なり、大規模結解の一角を担うことになったのだが、その際説明されたことが気になっていた。
【鳰】はその人が抜けてしまったと言っていた。それをふと思い出したのだ。死んだと言われれば流石に聞きはしなかったがそうでもないのならいいだろうと。
「ああ、そうか。当たり前だけどあったことないもんな。単に結婚したんだよ。ほら、怪我するわけにもいかないだろ」
もちろん回復手段はいくらでもあるが家族が心配するのには変わりない。
一方イセホは心のどこかで何かを期待していたが案外普通だったようで何だといったような顔をする。
「イセホ、顔に出てるぞ」
見かねたシタバがそういうと、慌てた表情を浮かべ、そして元に戻る。
「……まぁ、今のシトイさんに代わるときは結構いろいろあったようだけどな」
イセホの顔を見てそんなことを言ったタドルだったが、あまり話すことでもないと思い業務に集中するよう二人に言ってその場は多少無理やりに話を切った。




