92話 見る視る観る
リビングに置かれたソファーには横並びにイオと【鳩】が座っている。お互いに身体を預けるほどに【鳩】はともかくイオも緊張を解いていた。
「そう言えば幹部の方達しか入れない場所って此処の他にもあるんですか?」
ここに来て数日、かなり慣れたことや緩い【鳩】の性格もあってイオは携帯を片手に語りかける。
「うーん、まぁ、あると言えばあるけどぉ……そうだなぁ、やっぱり【占いの間】かなぁ?」
「うらないのま?」
占いの間、だろうか?占う場所と言うことなんだろうが、なんとも言い難いネーミングだと内心イオは思いながらそう聞き返す。
「あぁうん……部屋の主人の趣味……いや、本人にそんな趣味はないけど受け売りらしくてねぇ」
「そうなんですか……」
せめて子供っぽい名前か、厨二っぽい名前か片方に突き抜けていれば良かったのだろうが、なんと言うか中間というか。2つを足して割ったような。まだ幼稚な時期にそう言うのにハマってしまった時に付けたような、なんとも恥ずかしくなるような名前。彼ならそんな名前を付けそうだとふ伊織の顔が浮かぶ。
と、まぁ、そんなことは置いておいて気になっていたことを聞く。
「それにしても、占いをするって事ですか?」
そう、それだ。
占いとは言うものの特定の人間以外が入れない場所でやるほどのものだ。恐らく魔法などの要素が関係してくる。到底ただの胡散臭い事柄には見えなかった。とか言いながらイオ自身根拠のない占いを信じるタイプなのだが。
「そう、占い。……正確には予知……の様なものかなぁ。まぁ、本人も詳しくは教えてくれないからなぁ」
そんなことを言う【鳩】であったがそんなことよりもイオはその予知というワードに驚いていた。少なくとも自身の持っていた携帯が手からすり抜け、床に落ちたことに気付かないほどに。
「ホントに予知なんて可能なんですか?」
イオがそうやって聞くのも仕方のない事であった。自身の鑑定スキルや分析スキルを用いて知った程度の知識しかないイオだったが予知なんて代物は人間が扱うことの出来る物の範疇にない。この世界に神というものがいるとすれば或いは……いや、それでも怪しい。
「まぁ実際12月22日の転移被害も当ててるしぃ」
そのおかげですぐに動くことが可能だった。
「そうなんですか!?」
「そうそう、まぁそれでも被害はでかかったけどねぇ」
それに、とイオを横目に見る。【鳩】はイオがあの日つらい目にあってるのは知っている。【Nest】の調べた情報では両親は友に殺されそしてその友にイオ手を下したのは分っている。そのせいか少し口ごもるがその心配はないかのようにイオは笑った。大丈夫だと【鳩】と暮らせて幸せだと。
ちなみにイオのしでかしたことは【鳩】がもみ消した。
薄暗く簡素などことなく和の雰囲気を漂わせる部屋。その場所に一人の少女がいた。その少女の年齢は17,18いや、もしかすると19あたりだろうか。そのさっぱり精機の抜けた顔からは年齢を読み取ることすら難しい。だがそんな顔も今は雑面によって隠されている。面には墨のようなもので謎の文字が書かれているが一度でも『ステータス』を表示させさえすれば使える『言語理解』があればそこに異世界の言語で『アヤザ』と書かれているのがわかる。ちなみに彼女曰く異世界での公用語ではなくとある地域で使われていた古語で書かれたものだという。スキルではそこまでは分らないことなので彼女に異世界との何らかの関係があるのは見て取れた。
そしてそんな少女の前に向かい合うようにいる女性がいる。いや、女性と言っても見た目だけだが。
「よく来てくれましたね……【鳰】さん」
そう【鳰】であった。
「そりゃ、呼ばれれば……それよりオレをさん付けで呼ばないでほしいんですが」
【鳰】はそういうがそれも仕方ないと言えた。幹部である【鳰】ではあるがこの前にいる少女はそれより上の待遇を受ける存在であるのだから。
「それなら私は敬語をやめてもらえると嬉しいんですが……【鳰】さんにそういう風に言われるのはなんだか慣れなくて」
「慣れないもなにもオレは初めから敬語でしたよ」
知り合ってから年単位で時が過ぎてるのだからと思う【鳰】だが、未だにさん付けをやめてくれという【鳰】も大概であった。
「それで今日は何を……」
そう訊こうとして【鳰】の言葉が途切れる。少女の隠れているはずのその目が何故か喜びと悲しみ相反する形容しがたい感情で揺れているような気がした。
「……では、予言を告げます」
そんな様子を見ながらもそんなことは関係ないとばかりに少女は告げる。
その目には先ほどまでのほんのわずかな優しさもなく。
ただ淡々と。
「あなたは死にます」
そう告げた。
来週は更新できそうにないのであしからず。
もし時間が出来たら出します。
友達もいないのに忙しいなんて……




