91話 シンキョ
【Nest】の施設内には圧倒的な距離を短縮することが可能なゲートがある事は所属する者だけでなく、一般の者たちの中でも知り渡った話であった。
その存在を知ってはいながらも見たことがないため、疑ってかかっても実際あるかどうか真偽を確かめる事すら出来ないなんて事が珍しくないゲートだが、公用のゲートのほかにも限られた者たちにしか利用できないゲートと言うものが【Nest】施設内には存在していた。
それは【Nest】に所属していても存在すら知らぬ場合もある程で、【Nest】内にある施設を全て利用できると言われる『特例』の権限を所持する者ですら利用することは叶わない。
権限を持っているのは幹部と一部の人間だけ。
そしてそのゲートの先に何があるかと言えば11の部屋だった。
ゲートの先にある部屋。
何か重要な部屋なのかと言われればそうとも言えるしそうとも言い切れなかった。
実際のところここはただの部屋であった。研究室でも機密資料の宝庫でもなく。ただの部屋。この11の部屋は全て居住用の部屋であった。
使用者は、幹部7人に準幹部とも言える者たちが3人。
セキュリティは万全とも言えるもので、寧ろ場合によっては出る方が大変だと居住者たちは思っていた。
というのも、ゲートを利用していることから分かるように、この11の部屋は【Nest】施設内には存在しない。この部屋には原則【Nest】本部からの転移でしかいくことができなく、この部屋自体何処にあるかすら分からない。何処かの倉庫にでも模して建ててあるのかはたまた地中の埋まっているのか。それを知っているのは設計者である一級の稲茂景と建設時の工事に関わった者くらいだ。
そして、ゲートからホテルの廊下さながら一直線に伸びた通路の両サイドの壁に幾つもの扉が立ち並ぶ中を優雅に胸を揺らし歩く女性がいた。
幹部の【鳩】であった。
そして、その傍らには先日……というより、昼間知り合ったばかりの沖田イオが遠慮がちに歩いていた。
「……本当に良いんですか?ここに入っても」
「良いの良いの!幹部がおっけーだせば他の人も入ることできるしぃ」
若干不安そうに聞くイオに対して【鳩】はそう答える。ここは滅多に入ることはできないと言いつつも許可さえあればたとえ一般人でも入ることができる。と言っても、一般の人は施設内にすら入れないためそんなことはできないが。
「それにぃ、どーせみんな仕事場で寝泊まりしたりしてここ使ってる人なんて限られてるんだからぁ」
【Nest】の施設内にある幹部に分け与えられた部屋には此処とは別にちょっとした居住スペースがある。豪華とも言えないが人一人暮らすだけなら十分すぎるほどのスペースがあった。その為【鳩】の言う通りそこで寝泊まりするものが多く。幹部でここを使用しているものはあまり多くはない。
「あ、ここねぇ私の部屋ぁ」
【鳩】は一つの部屋の前で立ち止まり自身の部屋を紹介する。
ドアノブの辺りカードを翳してロックを解除する。そして新規にイオを登録する為【Nest】のカードを出すように言う。
「じゃあここに翳してぇ」
「わかりました」
カードをかざすとピッと音が鳴る。
「これで登録完了ぉ」
これで良しと今度こそドアを開ける。
扉の向こうは一般的なマンションの部屋と言ったところか。そんな造りをしている。4人は住めそうなほど広いその部屋は未だ一歩も入っていないのにも関わらず一つの感想を齎した。
「なんというか……簡素?」
「まあねぇ、帰ってきても寝るだけだしぃ」
そう言って靴を脱いで部屋に入るように促す【鳩】。
ちなみに【鳩】の部屋はこうなっているが他の幹部たちの部屋の作りは様々で扉を開けたら洋館になっていたり和室になっていたりと。間取りや広さはドアからもさらに転移して空間につなげている為自由自在であった。
しっかり造りを把握した方が良いだろうとイオを案内する。
何を隠そう此処にこれからイオも住むのだから。
転移ゲートの説明をしたか分からないので一応。
イメージ
【Nest】施設 (第一ゲート)
↓
1〜47番ゲート (第二ゲート)
↓
1〜…… (第三ゲート)
クソデカゲートを通ったあと、1〜47番ゲートで県を絞り込んで最後に市町村単位で絞り込む。
一つの県に多くても4個程度出口がある。ちなみに市町村コードでゲートに番号が割り振られているので13ゲートがあってもゲートが13個ある訳ではない。
ー11の部屋ー
【Nest】本部
↓
廊下
↓
部屋
本部からの廊下そしてドアをくぐると部屋に飛ぶ。
大体そんな感じです。多分。




