90話 仲いい奴と喋るときだけ声が大きくなる
短いです
「お兄ちゃん、おそい!」
危険区域から出たあと俺たちは詩のもとまで戻っていた。そして、あって早々言われた言葉がこれだったわけだが。
「そんなこと言われてもなぁ……。つーか、こんな見るからにボロボロの俺に対してあたり強くないか?」
もうちょっと敬ってくれてもいいんだけど。
「えーでも、ボロボロなの服だけじゃん」
「いや、服だけって……」
まぁ確かに傷の類はモンスターを倒したせいか治癒しきっているためボロボロなのは服だけだが。
「まぁいいか、それよりわっふるは?」
「え、お兄ちゃんと一緒にいたんじゃないの」
俺はてっきり詩に抱えられてると思っていたが。じゃあ、何処にいるんだ?
そう思った瞬間、ズボンの裾をひっぱられる。
「……ん?」
「わふっ」
足元を見るとわっふるが立っている。
「どこ行ってたんだ?」
「わふん?」
俺の質問に対し、どうかしたのと言わんばかりに首をかしげる。
「……まぁ、いいか」
「わふん!」
伊織たちと別れた後、シトイとトンナは【鳩】と別れて帰路についていた。というより、この二人は報告も含めて一緒に行動を共にしようとしたが追い払われてしまった。
仕事は終わったししかないかということでそのまま諦めて帰ることにしたのだった。
「で、シトイさん、よかったんですか?」
「ん?伊織君の学校のこと?あれは仕方ないよ、結局のところ彼を受け入れられる学校は赤高くらいだし」
実際問題、津田伊織は今回の件も含めて3回の喰魔のよる暴走が確認されているが、このままだと不味いというのはこのことについて他の者たちに比べ詳しく知っている程度のシトイにもわかるほどだった。そしてそんな彼を管理するのに一番適しているのはあそこだということも。
しかしトンナは苦言を呈す。
「いや、そのことじゃないですよ。俺も気にならないわけではないですが」
だがトンナは違う事柄に対して話を振っていたようだった。
「じゃあなによぉ?」
シトイは少し拗ねたようで言葉を返すものの歩くスピードが上がり、それが如実に表れていた。
「危険区域のことですよ。あのダンジョンには未だ強いモンスターがいるんですよ」
「そんなこと言っても無限に湧き続けるのがダンジョンってものでしょ」
「そうはいってもまた今回のような事態になったら……」
「またボスを倒すしかない。今までだってモンスターたちが力を抑えていただけで強かったけど何も起こらなかった。それが今回徒党を組んでダンジョンから出ようとしたのは統率するリーダーが現れたから」
少し前を歩いていたシトイは立ち止まり振り向く。
「なら、倒せばいい……それだけだよ、そのために【Nest】に入ったんでしょ?」
そして、一言「帰ろう」とだけ言ってシトイは歩き出した。
わっふる出し忘れててごめん




