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天より落ちし光の柱は魔石を運ぶ  作者: えとう えと
第六章 鳥取ダンジョン編
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88話 友達は少ないが知名度は高い

明けましてを言う相手がいない。


「ちょっといいかな?」


 近づいてきた男女の二人組に声をかけられる。


「あ、はい」


 反射的に返事をするが見慣れぬ顔に顔をかしげる。そんな俺を見て紗奈と蒼介はこの二人がシトイさんとトンナさんだと教えてくれる。先ほど聞いた話にもその名前が出ていたからまだ記憶に新しい。


 まずこの二人だが女性の方がシトイさんで男性の方がトンナさん。シトイさんは白い髪が特徴的な女の人でトンナさんの方は黒髪の男性だ。この二人は、におさんの部下の人らしくもう一人の幹部であるはとさんについてきたそうだ。そしてこの人たちが紗奈と蒼介をここまで連れてきてくれたという。


 戦いが終わり三人で話していた俺たちだが俺たちのもとに先導して駆けつけてくれた二人がこちらに寄ってくれば無視するわけにもいかない。


「いや、悪いね。話してるとこ」


 そう言うのは、トンナさんだ。優し気な笑みを浮かべている。


「実は、津田くん、個人的に君とは話してみたくてね」


「俺とですか?」


 俺は驚きつつも言葉を返す。こんなことを言われたのは初めてだ。というか俺の人生において俺と話してくれる人は少ないので会話してくれるだけで貴重だが。


「私も話たかった。あ、私はシトイね」


 そういうシトイさんお互い面識はないものの名前は知っていたので自己紹介はしていなかった。


「あ、どうも、津田伊織です」


「それにしてもこんなところで会うなんてね」


「たしかに、名前だけはよく聞くけど津田君にあったことある人少ないもんね」


 そういわれて考えてみるが、俺自身もねすとの知り合いは片手で数えられるくらいだと思う。


「俺の名前って、アデゥ……動画の件ですか?」


 アデゥシロイの名前を出しそうになるが何とかこらえる。忘れていたが、たしか、ネスト内でも極秘だったような気がする。一部知ってるやつもいるみたいだけど。


「ああ、アデゥシロイのことなら言っていいよ。こう見えても俺たちは幹部直属の部下だからね」


「あ、私もね」


 付け加えるようにシトイさんは言うが二人が同じ身分なら当たり前だろうと思ったけど黙っておく。


「もちろん、俺たちがよく聞くって言ったのは君がこないだの文化祭のように話題を起こすことは多いってのもあるけど、それよりも君のことに憧れている熱心なファンがいてね……」


「そうそう、安田っていうんだけど」


「安田さん?」


 俺のファンって聞くとなんか嬉しいな。どんな人なんだろう。女の子とかな――紗奈の視線が突き刺さる。


「あーなんていうか。一言で表すと……おっさん」


 おっさん?


「いや~なんでも、あの人引きこもってたらしいんだけど、君の戦う姿に感動して【Nest】入ったんだって」


「それで、【Nest】内で布教しまくっているからよく聞くんだよね」


「え、いや、何というか、すんません」


 今存在を知ったばかりだがなんだかいたたまれなくなり謝罪をする。


「謝るようなことじゃないよ。実際のところそれが役立っている面もあるからね」


「役立つ?」


 俺のファンが増えて団結力が上がるとかか?


「【Nest】って元々一般の人たちが入れる組織じゃなかったんだけど、あの日魔石が降って普通の人でも超常的な力を得て更にモンスターの各地での出現によって一般からも人材をってことになったんだけど」


 ネストにもともといた人たちは、今とは状況が異なり血統によって決まることが多かったらしい。つまり、生まれた時から高い意志を持ちネストに入るためだけに育てられるらしい。その間、通常の教育機関にて常識を身に着けるため、通うことはあれどそれ以外においては術の修行などに充てられるという。そんな人生をかけて日々を送っていた者たちから見れば、何の努力もせずある日いきなり力を手に入れた一般人をどう見るかなど想像に難くない。とは言え、実力主義の世界に身を置く彼らはそんなものたちを見下し卑下するようなものたちではない。彼らは自らと対等のものとして接していた。


 だがそれでも、人間とは不完全な生き物で、口には誰もしなくともどんなにまともに向き合おうとしても、知らぬ間に壁を作ってしまう。


 そんなとき安田のだれ構わず話しかけ布教する姿は周りに影響を与えいつしか壁はなくなっていたという。


「なんかすごいっすね」


「うん、そうだね。でもまあ、彼自身、階級が高かったからこその結果かもしれないけどね」


 実際、実力主義の彼ら名認められたのは、本人の強さあってのことだと言いたいのだろう。


「あ、そうそう、関係ない話だけど、津田君、アオサギの文化祭言ったんだよね?」


「あ、はい」


 いきなり変わった話題に驚きつつも返事をする。


「なら――」


「私のお勧めは赤高!」

 今までトンナさんが話していたからだろうかシトイさんが割って入ってくる。

 

「あかこう?」


赤翡翠(アカショウビン)、青鷺が青高、赤翡翠(アカショウビン)が赤高ってぐわいに」


 そういえば、七校あるって言ってたな。アオサギ――よく考えたら青高しか知らないが。


「赤高はね、学食がおいしいんだ!」


「はぁ」


「あ、いまそれだけって思ったでしょ?」


 心を読まれるとは。といってもそこくらいしかないんだろう、施設はどこも同じらしいし。


「ああっまって、まだある、それに、この学校には魔石を研究している人がいて喰魔のことも調べてるらしいの」


 学食よりそれを先に言えと思った俺は悪くない。

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