87話 みってる〜?
【鳩】は高濃度の魔力反応を感じてその地へ向かっていた。
既に黒帯や日高蒼介から魔力を抑え込んでいるモンスターが多数いることが報告されている。
そして既に沖田イオではこれらのモンスターを操れないことは見当がついて容疑者から外れている。
だが、そんな中【鳩】は沖田イオを探していた。借りたと言うより半ば強制的につけられた部下を引き離して全速力で。理由は完全に私利私欲のためであった。
【鳩】は所謂同性愛者と言うものだった。そんな【鳩】だが、【鳰】から送られてきた資料に貼り付けられた写真を見た。そして、沖田イオの容姿は【鳩】からすればドストライクだった。
その顔の造形から髪の黒色そして差し色のように差された紺のメッシュ、そして桃色のかわいらしい目。
そんな写真を見た【鳩】は普段なら難色を示す【鳰】の頼みを文句ひとつ言わず引き受けたのだった。
いきなり現れた女にイオは捕まり連れていかれる。
「ちょっ、まっ離して!」
今連れていかれるのはまずい。モンスター達を操っているのはイオじゃないとすればコイツが犯人だと思われて他のモンスター達が手薄になる可能性もある。
それに言われのない事で問い詰められたりするのはあまり良い気分ではない。
「あの、ネストの人ですよね?」
「うん、まあ、そりゃここに入れるくらいだしぃ」
「あのそれで今回のモンスター達の操作を行っているのは――」
「あー、ごめん。君階級幾つ?」
「え?えと、三級です」
「ふーん、じゃあ覚えといて、私は幹部の【鳩】」
幹部だと。いや、そう言えば、におさんが、はとっていうめんどくさい奴がいるって言っていたような……
このおっぱ――女の人のことか?
確かに特徴は一致しているが。デカいし。
「わかったぁ?階級が違うの」
なんかうざいな。
わかったなら、黙っていろとばかりにそう言う。
「でも、イオは……」
「わかってるわよぉ、モンスターを操っている犯人じゃないんでしょぉ」
「え、あ、はい」
あれ、知ってたのか?
なら何故?
そんな事を考えていたらいつの間にか二人は消えていた。いや、少しは見えたけどえげつないスピードで消えてった。さすが幹部ではあるけど。
約1時間後二人は帰ってきた。
なんか、薄着になってる気がする。それに……いや、やめとこう。
満身創痍の体で1時間放置された俺だが、はとさんがあたりのモンスターを一掃していたのか襲われることはなかった。あっちは襲い、襲われだったかもしれないが。
二人から目を逸らし端末をいじる。未だ電波は入らない――正確には入りはするのだが繋がらないのでできることは少ないがどうやら、はとさんが人を呼んだのでここにいれば良いとのこと。ちなみに邪魔をされたくなかったのかどう言う方法を行ったかは知らないが呼んだのはつい先程だ。
だから、これからまた待たないとならない。
しかも少し離れた位置に座っている二人は妙に距離が近いので俺は一刻でも早くこと空間から出たかった。
それから少しして迎えにきたであろうネストの人たちと一緒に紗奈と蒼介が迎えに来ていた。
「伊織君、大丈夫だった?」
「うん、まぁ、死んではない」
「伊織君、他の女の子の匂いがするけどなにこれ?」
「いや、イオ……さんに身を挺して庇ってもらった時のやつで」
一瞬何のことか分からなかったが、そう言えばと思い出しそう言う。
「そうなんだ……」
何か考え込んだ様子を見せた後、紗奈はイオの方へ向かっていく。殴り込みか?と思ったけど直ぐに帰ってきた。
「どうかしたのか?」
「お礼言ってきただけだよ」
「そうか、わざわざ悪いな」
「ううん、当然のことだから」
自分もあの後言いにくいなと思いながら二人の世界に屈することなくお礼は言ってきていたのだが。それでも言いにくかったなと思いだす。そこにわざわざ言ってくれた紗奈にもありがたく思った。
「それでだけど、結局誰が操ってたんだ?」
沖田イオが違うとなれば誰なのか気になっていたのだが。
「それは、あるモンスターが原因だったらしいよ」
蒼介が説明してくれる。
どうやら、このダンジョンは特殊なようでものすごい強い奴が一番上で指示を出していたらしい。それに目立つように敢えて七体のモンスターは魔力を解き放ち、実際のリーダー格といえるモンスター達は魔力を抑えて行動していたと言う。ちなみに俺とイオが倒したやつはどちらでもないらしい。
そして、そいつらは、はとさんがここに来るまでに倒したり、におさんの部下が倒したりしたらしい。
「強えな」
「そうだね、主要な奴らはあの3人で全部倒しちゃったらしいし」
とそんな話をしていると紗奈と蒼介を連れてきた二人が近づいてきた。




