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天より落ちし光の柱は魔石を運ぶ  作者: えとう えと
第六章 鳥取ダンジョン編
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86話 目立つものに目がいく


 喰魔は宿主が命の危機に陥ると表に出てくる。


 それは、喰魔を知る者なら皆知っていることである。


 なら、宿主となっている人間を殺すには喰魔と戦わなければならないかと言えばそうでもない。


 喰魔は命の危機に陥ってから表に出てくる。ならば、一撃目、あるいは死の危険を察知する二撃目までに宿主を殺してしまえばいい。


 なら、何故、喰魔をその身に宿すものが下級術師ならともかく一級を軽く超える者達から危険視されているかと言えば、その力は自信が命の危機に陥らずとも条件次第では自発的に発動することが可能だからだ。


 そして、個人でそんなものが使用できたのならばどれだけ弱くとも一級数人を相手取ることは容易い。


 だが、逆にその者達が処理されないのにも理由があった。


 それは、その自発条件が重かった為だ。


 喰魔は普段使用しなくとも宿主を蝕んでいく。


 津田伊織の異常なまでのスキルの少なさもここに関係している。喰魔は喰うのだ。その為スキルを獲得しても喰われてなくなる。その為スキルに頼った戦闘をしている宿主の場合いきなりスキルの使用不可に陥り隙が生まれて負傷することも少なくない。


 そして、スキルなどが喰われて魔法的資産がなくなった時、喰われるのは身体だ。


 そうなったらもう手遅れであり時期に死に至る。


 そんな状況の中さらにスキルを消費して喰魔を発動させるものはそうはいない。


 だが、そこまでの危険を冒してまで得る力は膨大な者であった。

















 紫炎が散り紫電が走る。


 先程までの濁ったような赤は既に不安定な線を描く紫に染められている。


 紫の煌めく魔力は空気を震わす。


 圧倒的な力、所詮人間の器では不相応な力。


 目の前にいる雪男など足元にも及ばない。


 だが、この状況を見ていた沖田イオは喰魔の発動は先程の状況下では最善手ではあったかもしれないが今この状況では致命的とも言える穴を見つけていた。


 そして、紫の凶々しくも美しい魔力に当てられたイオは意識を手放した。
















 次の瞬間、魔力が桜のように美しく舞う。


 それは津田伊織の器を通して放たれたものではない。


 それを放ちこの荒野を桜で彩るのはもう一つの喰魔。


 その原因は共鳴であった。


 喰魔同士の干渉によって喰魔が表に出てくるもう一つの方法。以前、色葉葉月が津田伊織に対して行った方法と同じであった。


 これが取り返しのつかない状況になりながらも沖田イオが気づいたことであった。


 だが、それはもう遅く、事態は悪化した。


 いや、するかに思われた。


 だが、結果はそうではなかった。


 二つの喰魔は攻撃し合うことなく、唯、雪男を排除する為手を翳した。


 そして、魔力同士が相殺することも無く片方は龍のように形を変えて、もう片方はまるで女神のような美しく儚い姿を模す。


 そして、それは過剰と言えるほどの気力をそのままに雪男を消し飛ばした。



















 目を覚ます。


 と言ってもスキルの発動中も意識はあった。体の制御が効かず勝手に動いているのはなんとも言えない感覚だった。


 そして、何故、喰魔同士で戦闘をしなかったのかと疑問も残る。


「……あ、起きた」


 イオは先に起きていたようで座ったままこちらに声をかけてくる。


「ああ、おはよ」


 そんな事を言いながら体を起こす。多少痛むが仕方ない。どんな動かし方をしていればここまでガタガタになるのかわからないが――と言うか意識があって主観で見てたのにわからなかった。


「津田くん、意識あった?」


「ん?ああ、あった」


「だよね、それで気になったことがあって、なんで喰魔同士で争わなかったんだろう?」


「それは俺も気になってた。でもわからないんだよなあ」


 やはり分からない。色葉との戦いでは意識はなかったが後で見た映像には鴉に割って入られるまで戦い続けていた。


 今回との違いは意識の有無だがコントロール出来るわけじゃないので関係ないだろうし。


「いや、それよりなんでお前喰魔の事にそんなに詳しいんだ?」


 俺は実際に共鳴して大事になってから説明をしてもらったのだが。


「別に『解析』とか、あとは津田くんと色葉さんだっけ?の動画を見ればある程度は。まぁ、スキルの方はもう食べられちゃったけど」


『解析』って言うとスキルか。


「でも、それだけでそんな詳しく解んのか?」


「案外大丈夫だったりするよ。他人のスキルなら話は別だけど自分の持っているものなら基本ね」


 そんなもんかと納得する。なんか蒼介もレジストがどうこうって言ってたような気がする。


 そんなこんなで話していたがここは敵地のど真ん中そんなわけにもいかないようで。


「沖田イオ、一緒に来てもらうようぉ」


 後ろからの声に振り向くとそこにはおっぱ――女性が立っていた。

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