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天より落ちし光の柱は魔石を運ぶ  作者: えとう えと
第六章 鳥取ダンジョン編
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80話 離れていてもペットが亡くなったのが分かることもあるらしい


「いくらダンジョンと言っても湧きすぎじゃねぇか?」


「確かに。レベリングするにしても多すぎるとやりづらいよね」


 イオは俺の言葉に同意しながら最後の牛に蹴りを入れる。身体強化を使ってるにしても凄い威力だ。なんか捻れながら吹っ飛んでるし。


「いやー、それにしても『敵意感知』効かなくてビビったよ。やっぱ二人だと心強いね」


「敵意ってことは空気中の魔素には阻害されねぇんじゃないのか?」


 魔力感知はあくまでも魔力を感知するため、練度にもよるらしいがこの魔力濃度で効きにくいと言うことはあるが、敵意と言うとその辺は関係ないのではないだろうか?


「ん、ああ、別に効果がないと言う訳じゃなくて、スキル自体が無くなっちゃって使えなかっただけだよ」


「スキルがなくなる?」


 その言葉に引っかかり聞き返す。


「そう、なくなっちゃうの。と言っても無になる訳じゃないけど。ああ、でも、それは私の能力に関係しているものだから普通はなくなったりしないから気にしなくて良いと思うよ」


 能力というのが気になるが、多方、このダンジョンにいるモンスターを操っている術とかだろう。流石にどんだけレベルを上げても此処までのことをスキルだけで出来なそうだし。

 

「そうか」


 とりあえず頷いておく。


 それにしても、コイツ話しやすいな。話が途切れたりしない。しかも、おそらく陽の者でありながら話していても俺が灰になったりしていない。これが、オタクに優しいギャル的なやつか。ギャルじゃないけど。


















「ふぁ〜」


 女は両手を高らかに上げて欠伸をする。既に朝と言うには無理がある時間であるが彼女は焦った様子もない。


 彼女はそのまま起き上がり全裸のまま歩き出す。胸につけた脂肪を揺らしながらのしのしと歩く。冷蔵庫まで向かい中を覗き込む。


「……何もない」


 正確には昨日の料理に使った野菜の残りなんかはあるのだが、彼女が探しているのはそれではなくすぐに食べることができるものだった。


 ――ブーブーブー


「……ん」


 枕元に置いた端末が振動しているのを確認し、持ち上げる。


「……もしもし」


 未だ寝起きで覇気のない声で相手に答える。


「……寝起きか……いや、まぁいい、ちょっと頼みたいことがあるんだ【鳩】」


 そして、彼女――【鳩】に事情の説明がなされた。
















「――それ分かるわ、やっぱ八の型だよな」


「そうそう、それにアニメだと原作より使用頻度高いし」


「でも、十の型と十一の型も結構好きかな。なんか横文字もカッコいいし」


「確かに、そう言えば津田くんも刀使えたよね」


「ああ、でも俺にはDVD見ても使えそうもないけどな」


 そんなこんなで俺たちは意気投合していた。

   

 イオはどうやらこう言う趣味もあったらしい。学校とかでは隠していたったぽいけど、その影響か普通の人並みに友達と遊んでいたから陽の気配も感じるっぽい。


 やっぱいいな、こう言うことが話せるのって。俺の周りにはいない貴重な人材だ。


 だとしても、コイツがモンスターを操ってることは忘れてはならない。でも、止め方もわからないし、ネストの人に引き渡そうにも人一人居ないし。


















 ――バキッ


「え?」


 何か音が聞こえ蒼介は振り向く。


「……ッ」


 そこには様子のおかしい紗奈。いや、様子自体は伊織が居なくなってからずっとおかしいけど。だが、今度のはそれとは違うようだ。何というか殺気立ってる。


「……ど、どうしたの?」


 正直話しかけたくもないがこのまま機嫌が悪いとそれはそれでめんどくさい。そう思い仕方なく声をかける。


「い、伊織くんが……」


「伊織がどうしたの?反応が見つかったとか?」


 反応があったのならすぐに向かうべきだとそう聞いたが少し違うように見える。


「伊織くんが他の女と楽しそうに話している気がする」


 嘘だと蒼介は言いそうになるが、そうとも言えない。以前、文化祭の前くらいだろうか伊織が言っていたことを思い出す。あの日、伊織が他のクラスメイトと話せるようになった日、同じクラスのヒヨウという女子と話しただけで勘付かれたと言う。それに後から確認すると時間帯までぴったしだったらしい。どんなホラーだと聞きたくなるがそれを抑えて何とか紗奈が前向きに考えられるようにならないかと考える。このままではただ歩くだけで支障が出る。


「あ、えーと、今まで発信機でしか分からなかったけど明確に生きているってわかってよかったんじゃない?」


「……え、ええ、そうね」


「そうだよ、伊織の生存を喜んであげるのも彼女の勤めなんじゃない」


「そ、そうよね、私は彼女だし」


 蒼介はさっきが収まるのを確認し、そっとため息をつく。モンスターとの戦闘よりも疲れたなと思い。無言で歩き出した。


 陽キャである蒼介に文頭に"あ"とつけさせるほどの殺気を撒き散らせていたのは言うまでもない。

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