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天より落ちし光の柱は魔石を運ぶ  作者: えとう えと
第六章 鳥取ダンジョン編
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79話 距離


 人を誘うなんて初めてだ。いや、初めてっていうのは少し違うが、誘うにしても前提があった。祭りに行く(行ったことない)とか花火大会に行く(見たことすらない)とかそんな前提があっての話で理由もなしに誘ったことはなかった。


 実際理由はあるのだが、間違ってもお前が怪しいからとは言えない。


 それに普段女の子どころか友達も誘うことがない俺にとっては幾ら建前があろうと勇気がいる。こんな事のためになけなしの勇気を使いたくはなかった。どうせならナンパとか……いや、やめとこう。紗奈が怒りそうだし。


「一緒に?」


 そうやって首を傾げる彼女をみる。


「そ、そう、さっきの様子だとスキルミスったら結構危なそうだし、俺もレベリングしててさ、一緒にしてた方が効率いいかなって」


 この期に及んでまだ俺キモくないかな、とか思っていられる俺は案外余裕があるかも知れない。


「それなら、よろしくお願いね」


「あ、ああ、何か七体の強いモンスターもいるっぽいし、一緒に行動した方がいいだろうしな」


 承諾してくれてるのに未だ言い訳をし続ける自分を殴りたい。これだと、キモいかも?ではなくて我ながら普通にキモい。


「……七体の強いモンスター?」


 やべぇ、失言だったか?いや、此処はあくまで気づいてないふりを。


「ああ、さっき確認したんだ」


「そうなんだ。でも、こんなに魔力感知がしづらいのにどうやって?」


 そう、今いるこの場所は転移前の場所も大概ではあったが魔力濃度の影響か魔力感知をするには状況が悪すぎる。その為この広大なダンジョンで遠くのモンスターを見つけるのは難しい。それ故の疑問だろう。


「此処にいるんだから君もネストだろうから知っていると思うけどオペレーター経由で教えてもらったんだ」


 作戦のことを伝えずに真実を話す。


「あー、この支給されたやつってその為のやつだったのか」


「でも、今は通信状況が悪いみたいで使えないけどな」


 通信が切れていたのは案外ラッキーだったかも知れない。本人は詳しくは知らないようだが通信が切れていなければ本部に確認されてオペレーターは任務時以外基本つかないことがバレてしまうかもしれない。話くらいはあちらでも合わせてくれるだろうが完璧ではないと思うし。


「ふーん、あ、そう言えば名前聞いてなかったよね」


 そう言えばそうだった。俺は勝手に相手の名前を知っていたがこいつは俺の名前を知らない。


「そうだな、俺は津田伊織」


「津田くんね……」


 何か俺の名前を呟いた後考え込むように黙った。もう流石にバレたかもとは思わないが。


「……あ、そうだ、あの動画だ。あの人狼みたいなやつ」


「知ってるのか?」


「うん、知ってるよ。君結構有名だし」


 ……有名……俺が?学校でもあまり話題になって無かったのにそんな筈はない。


「いやいやいや、そうでもないだろ?」


「いや、結構再生数もあるし……動画はすぐ消されちゃうみたいだけど、その度に上がってるよ」


 とは言われてもそんな実感ないしな。いや、まぁ良いか。


「今度は私ね、私の名前は沖田イオ、改めてよろしくね」


「ああ、よろしく。んで、沖田さんは――」


「イオで良いよ」


「そうか、なら俺のことも――」


 瞬間、轟音、土煙、牛、牛、牛。


 此処は壁もなければ天井もない。だが、ダンジョンである。そんなダンジョンに和気藹々(?)と喋る時間があるわけもなく。


 やはりどこにでも湧くらしい牛たちに襲われたのだった。

















 取り出した端末を見ながら紗奈は顔を顰める。


「紗奈さん、どうだった?」


「……発信機の反応自体はあるけど場所は特定できない」


 蒼介の問いに素気なくそう答える。蒼介は伊織と交友があるがそれでも伊織とは住む世界が違う。最近伊織は昇格してボッチからインキャにジョブチェンジしたが蒼介は陽キャだ。そして、インキャと陽キャの間には分厚い壁がある。と言ってもその壁はインキャ側からしか見えない不可視の壁だが。そしてそんな陽キャである蒼介はもちろん学校でも女子からの人気がある。そんな女子たちが今の紗奈のそっけない態度を見たらどうなるのだろうか。と、普段なら考えるどこかのインキャは今はいない。


 現在紗奈が伊織につけた発信機の反応を追っているがなかなか見つけることができない。とにかくダンジョン内には居て生きてはいるようだが。


 そんなこんなで伊織探しの旅は続く。

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