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天より落ちし光の柱は魔石を運ぶ  作者: えとう えと
第一章 中学一年生編
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7話 王冠は服に入りますか?


 その、蓄えられた肉は、立ち上がると同時にボヨンと揺れその姿はだらしなく思える。


 その、体に散りばめられた宝石は統一性もなく、とても価値がわかっているとは思えない。


 その、取ってつけたような王冠はとてもサイズが合っているとは思えない。


 キングが立ち上がった。


 

「グギィアアアアアアアアアア!!!!」


 ゴブリンキングが雄叫びを上げる。


「〈鎖〉!」


 蒼介の放った魔法がゴブリンキングを拘束する。


「はぁっ!!」


 キングの身長は三メートル弱俺の身長ではとてもじゃないが届かない。

 

 だか、これまでの戦いで俺の身体能力は上がっている。


 俺は足を踏み込み跳躍する。


 先ず生身の人間で考えられないような動きだが、身体能力の向上によってその力に振り回されないように、体は慣らしている。


 それでも、今回のダンジョンでは、外でちまちま狩っていた今までと比べ物にならないようなくらい成長していた。


 つまり、


 若干力に振り回されて、バランスを崩す。


 だか、確実に、攻撃を叩き込む。


 しかし。


「傷が浅い?!」


 刃を当てた場所を見て驚愕する。


 確かに、傷は与えた、だが浅い。


 ボブゴブリンとは、比べ物にならない。

 

 ゴブリンキングはバキバキと音を鳴らしながらあっさりと鎖を引きちぎり持っていた馬鹿でかい斧振り上げる。


「グギィア!」


「グハッ!」


 刀でいなそうとするが、そのまま吹き飛ばされる。




 その姿は人間からすれば醜く野蛮に見えるだろう。


 だが。


 その、ふくよかな腹は権力を表し。


 その、数々の多種多様な宝石は財力を表し。


 その、金色の王冠は、彼が王であり、強者である事を表している。


 そして、王は絶対的な力を振るう。



「ゴホッ、いってぇ」


 痛みに耐えながら俺は立ち上がる。


 身体が強化されてなかったら、泣き喚いて、這いずりながらでも逃げただろう。


 だか。


 魔法なんて使えるようになって、しかも、こんな、楽しいのに、やめられるわけがない。


 それに強化された体にはこんなもの擦り傷だ。

 

「伊織、大丈夫?」


「ああ、もう一度頼めるか?」


「わかった、いくよ、〈鎖〉ッ!」


 さっきの、戦闘から考えると、鎖を引きちぎるまでに5秒ほど、それまでに叩き切る。


 外で練習し魔力の操作の精度が上がったがそれに伴い、大きさ、向きなどをある程度変えられるとようになった。


 そこで俺は考えた。


 何かにいかせないだろうかと。


 そして、たどり着いたのだ。


「ハァッッ!!」


 基本的にはさっきと同じだ跳躍し振り下ろす。


 そしての瞬間刀に纏わせた炎を峰からロケットのように逆噴射させ加速させる、これこそが、俺のたどり着いた境地だった。


 まあ、単純に速く振れば切れるって事だ。


 ただ、一つ難点があるとすれば、集中力をめっちゃ使うって事。


 だから、反撃されたりしたら詰む。


 それもあって、切り札ってわけだ。


 まあ、キング以外だとただのオーバーキルになるからと言うのもあるが。


 俺は振り下ろした刀を上に向け炎で加速させ振り上げる。


 それを繰り返すが、鎖が壊れてキングが動き出す。


 俺は反応できない。


 キングの斧が振り下ろされる。

 

 その瞬間反撃しようとしたキングに向かって次々と氷の槍が投擲される。


 「グギィアアア!!」


 心の中で感謝しながらさらに、炎圧を強め振り下ろす。


 深く刺さった、傷口に炎を流し込み、内側から焼く。


 ちなみに、モンスター、というよりキングは切ってても基本血が出ないから失血死とかはないと思われる。


 普通のゴブリンとボブゴブリンはでたのに謎だ。


 蒼介がキングの動きを止めている間に何度も繰り返す。

 

 暫くすると動きが止まる。


「もう、死んでるみたい」


 蒼介の言葉を聞き腰を下ろす。


 何故、人目見ただけで判断できるかと言うと、二層でボブゴブリンを倒した時に鑑定なるものを覚えたらしい。


 実はすごいって相場が決まっているアレである。


「伊織も、お疲れ様」


「うん、さっきは助かったよ」


 氷の槍に対してのお礼を言うがいいよいいよ、と返される。


「それより、伊織」


 あれを見てと指を刺す、そこには。


「おー、お宝じゃん」


 決して多いとは言えないが貴重なものと思われる金貨のようなものや、アクセサリーが玉座の横にある台座の上で小さな山を作っている。


「じゃあ、早速」


 玉座の両脇に同じ位づつ置いてあったので話し合い俺は向かって右、蒼介は向かって左を取る事にした。


 結果は……


「同じじゃね」


 金貨の数アクセサリーの種類ともに全く同じ、意図しておいたのだろうが、喧嘩をさせないための気遣いなのだろうか?


「まあ、いいか」


 損したわけじゃないしなと思い直す。


「ちょ、伊織」


「どした?俺この首輪見たいの気になるんだけど」


「え、うん、えーと、主従の首輪ってかいてある、契約が結べるって」


「ふーん、使えねーな、異世界なら可愛い奴隷と契約なんて夢あるけど、実際やったら犯罪だしな」


「伊織、何言ってんの?って言うか普通動物とかじゃないの、まあ、いいや、それでこれなんだけど」


「ん?」

 

「このネックレス、収納機能があるって」


 そう言って、ドックタグみたいなのがついたネックレスを持ち上げる。


 こう言うのでよくあるのはアイテムボックス、内部の時間が停まっていて、食料を入れて置けたり、大きなもの入れて持ち運んだりと、とにかく凄い。

 

「それって、アイテムボックスって事?」


「そう、魔力使うからあまり鑑定は出来ないけど試しに使ったら“収納の首飾り”って出て、どうやら、魔力量に応じて収納量が変わるらしいよ」


 蒼介の手に入れた鑑定は魔力を使うらしい、スキルなのに。


「なら、これ全部しまえるよな多分」


 容量は分からないが金貨一枚なんて事はないだろう。


 使用すると吸い込まれるように消えていく。


 取り出しも普通にできるようだし結構便利だ。


 


 帰る途中、ボス部屋に落ちていた、デカい斧や行きで倒した、ボブゴブリンの刀を三振りくらい、拾って入れて見たがまだ余裕があるようだった。


 ダンジョンから出てきたところで、まだ、遅い時間ではないが、流石に今日は休もうと言う事になり解散する。


 街を歩くと、もうすっかり冬になり道行く人は着込んでいる。


 と言っても、そこまで、すれ違わないが。


 それにしても、すれ違った全員がやたらこちらを見てくるのだがモテ期だろうか?


 すれ違った人の多くが、歳いってたけど。


 そんなにモテる要素があっただろうか?と、最近姿勢が少しよくなり上がった視線を下に落とし自身の体を見る。


「げっ」


 どうやらモテていたわけではないらしい


「さっきのキングの攻撃か」


 俺の胸に空いた穴から冷たい風が通り抜けた。


 「寒っ」

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