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天より落ちし光の柱は魔石を運ぶ  作者: えとう えと
第六章 鳥取ダンジョン編
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76話 こわ



「――ッ、伊織君!」


 紗奈がそう叫んだ時には伊織は光に包まれて消えていた。転移系のアイテムの仕様が確認されず、アイテムを使った場合転移対象の付近から魔力の動きを感じるのに対し今回は外部から、少なくとも、30メートル以上離れた場所から魔法又はスキルの行使が行われている。


 と言うのも紗奈のスキルには空気中の魔力の動き――正確には空気中に存在する魔素の動きから魔法などの力の行使を確認できると言うものがある。そしてそのスキルによって正確に感知可能なのはおよそ30メートルだ。その事からこちらに気づかれずに行使された強制転移はそれ以上の距離で使われたと見て間違い無いだろう。普通ならそんな長距離で空間支配系統の術の発動など考えられないことではあるが可能性はあると考えていた。


 だが、そんな事よりも紗奈は気が立っていた。なんと言っても伊織と距離を離されたからだ。そしてそんな状況だからこそ冷静さを失いそうになるが、ならばこそだ、そう思い冷静な考えのもと行動しようと試みる。実際考え自体は感情に振り回されていない。だが、矛盾しているようだが、現在紗奈の感情は冷静とは言えなかった。


「伊織君の場所は?」


 オペレーターに確認する。確か強力な七体のモンスターは魔力反応などを使って発見したと聞いた、ならば伊織も見つけることが出来るだろうと、そう思い訊くが返答は芳しくない。魔力を全開にしているモンスターとは違い見つけにくいのだとオペレーターは言うが、ならば生体反応はどうなのかと問うがそれでも見つからないと言われる。


「チッ」


 思わず舌打ちをするが伊織に何かがあった場合紗奈にはわかる、だから大丈夫だと自分に言い聞かせる。今はそんな事よりも。


「さっさと拘束してくれる?」


 そう言って蒼介を睨む。いや、本人にはそんな自覚はない。それは蒼介もわかっていたがそれでもやはりこれは苦手だ。伊織がいる時は「〜だよ」とか「〜だね」とか言っているくせにいなくなった途端これだ。しかも今は詩もいない。詩が居れば伊織ほどともいかないが緩和されるのだが。


「《鎖》ッ」


 ため息を吐きそうになりながらも先ずはゴートマンを拘束する。先ほどと同じように意図も容易く拘束されるゴートマン。


「ベルレェエ!!」


 何か叫んでいるが気にしないでおくのが――いや、違うこれは――


 蒼介が振り向こうとした頃には既に紗奈は状況を把握していた。


「……見つけた。《有明月(ありあけづき)》」


 約50メートル先にモンスター――杖や展開させた魔法陣から術師タイプと仮定。転移を行使していた個体はこれだと推測。


 モンスターはこちらも見た目はゴートマン、違うのはボロボロのローブと気ででいた杖を持っている事だろう。


 既に発動した魔法は術師ゴートマンへと迫る。


 有明月――月宮紗奈の保有する魔法の技の一つ。自身を地球と仮定し地球から見た月が周りを回るかの如く軌道上へと設定された対象を切断する魔法。今回軌道上に置かれた術師ゴートマンの首を刈り取ろうと死神の鎌のように迫る。


「ベルゥエ!」


 だが、術師ゴートマンは間一髪のところで攻撃を避ける。


「――ッ」


 有明月がくると予め分かれば避けるのはそう難しいものではない。有明月はその性質上術者を中心とした円を描くようにしか動く事はできない、その為来る場所を読む事は容易い。だが、だからと言って今のは避けられるはずの攻撃ではない。避けるのはそう難しくもないとは言ったがそれは予め何が来るかわかっていて準備した場合の話だ。だが、今の攻撃はいくら軌道上を通るものだと言っても発動してから対象を刈り取るまでに1秒もかからない。そんなものを見てから対処するなど本来ならば不可能であった。


 だが、そんな事を考えている場合ではないと更なる攻撃を仕掛けようとしたタイミングで術師ゴートマンの足元に魔法陣が現れる。そう思った時には既にこの場から消えていた。


「……逃げられちゃったね」


 そう言った蒼介に凄い形相の顔を見せる。だがすぐに切り替えたようで今度は最初から相手をしていたゴートマンへと視線を移す。


「蒼介くん、ちゃんと鎖離さないで」


 そう言い残すと紗奈は八つ当たりをするかのようにゴートマンを攻撃し始めた。先ほどの攻撃が効かなかったのを嘘だというように傷付いていくゴードマンを見て紗奈を大人しくさせる事をできる伊織は結構凄いのかもしれないと思い直した。

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