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天より落ちし光の柱は魔石を運ぶ  作者: えとう えと
第六章 鳥取ダンジョン編
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72話 妹ときどき龍


【Nest】本部管制室。


 今この場所に置いてオペレーターたちは任務に当たっているもの達に情報と指示を送っていた。情報は位置情報を確認しながらモンスターとの距離やルートの誘導などをしている。地図を見ながら正確な情報を求められるこの現場ではさらに上から降ってくる指示を聞き逃しなく現場に伝える必要がある。


 そんな管制室では7つの大きな反応を捉えていた。

















『――モンスター達の進行を確認。さらに全体の指示を飛ばしているものとは別に現場で上からの指示を飛ばしている七体のモンスターを確認』


 多分、沖田イオが全体への指示を送って現場にいるモンスターが指示をしている。つまり、モンスター達の中にはリーダー格の七体が存在していてそいつらが隊のように分かれて行動していると言うことだろうか?


「そのモンスター達を倒せば良いってことですか?」


『はい、モンスターの進行は指示を出す七体のモンスターを排除すれば収まると思われます』


「伊織、そこに行こう」


「ああ、そうだな」


 今の俺たちならそれなりに強くても勝てるだろうし。大丈夫だろ。


『ではルートを算出します』

















 詩は兄である伊織達が完全に立ち去ったのを見計らいバッグから端末とインカムを取り出す。二つとも【Nest】の支給品である。


 本部との通信を繋げる。


「あーあー、聞こえてますか?」


 今現在危険区域からモンスターが溢れ出そうしているなかなんとも似つかない気の抜けた声で本部への確認を取る。


『――はい、詩さん大丈夫です』


 耳元から慣れ親しんだ女性の声が聞こえる。最近だと伊織が階級試験の最中に直接あったのが最後だろうか。


「本当はもっと、いろんなところ回りたかったんだけどなぁ」


 そんな調子で話すが今会話しているオペレーターとその他数名にしか聞こえていない。本来部屋にいる全体の者に届くはずの声は本人の希望により特別に設定が弄られている。

 

『仕方ないですよ。それでも今回は階級試験の時と違って途中までこれたじゃないですか』


「うーん、まぁ、そうだけど……」


『それに詩さんは今この現場にいる数少ない()()なんですから』


「そんなこと言われてもそんなに強くないし」


『そんな事ありませんよ。詩さんの実力は魔法が発言してから一週間で当時のお兄さんの実力を抜いているじゃないですか』


 当時というとアデゥシロイとの戦いのことだが、そうは言っても今の兄はその頃とは比べ物にならないほど強くなっている。それに兄である伊織のことをさげて言われるのは良い気はしない。いくら自分が天才だからといってもいくら兄が凡人以下だとしてもだ。こんなことを考えてはいるもののこれは見下しているわけではなく客観的な評価だ。実際兄の事は尊敬してるしそれで良いやという事である。だが他の人が言うのは違うと言うだけの話だ。


「まぁいいや、それで何処で何をすれば良いの?」


『今回の作戦では――』


 今の危険区域内での状況を簡単に説明する。


「でも、お兄ちゃんに見つかるとまずいからあまり出来ないよ」


 詩はそう言うが何ががまずいのかと言うと言葉の通り兄に見つかることだった。兄には【Nest】にいる事は話してないしそれどころか魔法を使えることも話していない。伊織の事だからどうせ自分は無茶する癖に詩には危ないことをするなどいってくるはずだ。だから絶対にバレてはいけない。


 そしてそれは【Nest】とて同じだった。津田詩の実力は一級の中でも上位しかもこれからの成長も考えると手放したくはない人材であった。


『では、この七体のうちの端の方にいる――』


 出来るだけ慎重を期してルートを選択していく。津田詩は【Nest】にとってそれだけの人材であったのだ。

















『――もうすぐです』


「わかった」


 ルートを提案された詩は目的地へと向かっていた。目標は大きな反応を持つ七体のうち一体。


「見えた」


 元は市街地であったであろう面影をかろうじて残す、街並みというには壊れ過ぎた地面を走り目標を目視する。一般人の比にはならないその目でしっかりと捉える。


「二足歩行の……シカ?」


 まるであれはあの日伊織が戦ったというあの人狼のようだ。枝分かれしたそのツノは力を象徴しその二本足で立つ姿には知性もの感じる。だがそれでもあの人狼の足元にも及ばないと詩は感じた。


「じゃあ、さっさと終わらせてカフェでも行こうかな?」


 それは油断ではない。最大限警戒した上での発言だった。これが力の持つもので警戒心をくぐり抜けるほどの技量があったのなら脅威になり得るが生憎目の前にいるこのシカにはそんな実力はない。


「ピャァァァ」


 シカが威嚇するかのように雄叫びを上げる一方で詩はそんな声だったのかと感心する。


 そして、すぐに興味に無くしたように。


「《どらごん》」


 電撃――否神鳴であった。それは伝説の龍の形をしていて、その大きく開かれた口でシカ(エサ)を喰らった。


 辺りにはもう何も残っていない。


 須臾にして雷電空を破り、両竜雲に乗り、騰りて上天に去る。


 これが津田詩が一級と言われる所以であった。

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