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天より落ちし光の柱は魔石を運ぶ  作者: えとう えと
第六章 鳥取ダンジョン編
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71話 馬鹿なのに飲み込みがいい奴はいる


 危険区域内での異変のあと鳥取内にいる一定階級以上の【Nest】に所属するものにはある指令が送られた。


 それは危険区域内から出ようとするモンスターの一斉排除。モンスターの位置は本部での確認はできている。


 と言うのも危険区域に指定されている場所にはダンジョンがあるのだが普通のダンジョンとは違う部分が多々あった。


 一番デカいのは外部からの観測が可能だと言う事。それが、できているのは構造物の様になっておらず外界に接しているため観測できるのである。とは言え魔素の影響で空からの既存の方法での観測はできない


 本来ダンジョンは現世とは隔絶した空間に発生するものである。だが、今回のものは別の空間ではなく現世に発生している。そのせいでダンジョンと地上の境目が曖昧になり一定以上まではモンスターが出てきてしまう。


 この一定――つまり50メートル付近には申し訳程度にフェンスが張られている。それに加えて住宅街も転移によって消失しているので一般人が迷い込んでしまう可能性は限りなく低い。


 とは言えモンスターがそれより先に進まないと言う保証はない。そもそも、魔素の少ない場所では活動しにくいモンスターだが転移被害が出た後地上で活動していたことを考えれば不可能ではないと言うことは察することはできるだろう。


 そもそもダンジョンが地上に現れたわけだがこんな事が起こったのにはもちろん理由がある。それはやはり転移が関係してくる。転移は様々なものを運ぶ。土地、人、モンスター、そして今回の場合はダンジョンという空間が転移されてきた。


 初めはそこまで大きなものではなかった。吹き飛んだ市街地のほんの一部の地面が置き換わって少し魔素濃度が濃くなったくらいだった。


 だが、ダンジョンは成長した。日を追うごとに少しづつ、でも着実に。そしてもう数ヶ月であの日から1年経とうとしている今となっては区域と言われるほどにそれを広げていた。
















 ネストには主にモンスターたちと直接対峙する俺たちの様な戦闘員が居るわけだがネストを構成する要素はそれだけではない。


 つまり非戦闘員がいると言うわけだ。それがオペレーターだ。その名の通りオペレートしてくれる。


 ちなみにだが、ネスト内の開発部なんかはモンスターの素材なんかも扱う事があるため階級が必要の様で全員戦闘ができる人たちだ。


 そして今俺たちはオペレーターの指示に従って進んでいた。


『改めて作戦の確認をします。現在危険区域内にいるモンスターの活発化が確認されています。』


 耳につけたインカムから聞こえてくる声に耳を傾ける。ちなみにこれも端末と一緒に支給されている。そして声は女の人だ。もしかしたら男の人の可能性もあるから決めつけてはいけない。におさんのこともあるし見た目や声で判断するのは危険だ。


『活発化したモンスターたちの一部はこの区域内から出る勢いで進行しています。モンスターたちの行動の仕方から見て誰かが指揮していることを考慮して先ほどの作戦と合わせ行動してください』


 やはり、区域内にいたか。先ほどの作戦――つまり、沖田イオの捜索も同時進行でやらなきゃいけないらしいがモンスターがいる場所にいるのだろうか。実際の能力の効果範囲がわからないとやりにくいな。


『前方からモンスターの反応を確認……数53』


 いきなり耳から聞こえてくる声にびっくりそうになりながら前方を確認する。まだ姿は見えていないが気配は感じる。魔力で感知するには魔素が濃いがこちらでも何とか捉える。


『速やかに対処してください』


「了解」


 短く返事を返すと。一緒に走ってきた二人が戦闘体制に入ろうとするが声をかける。


「二人とも、俺だけでやるから大丈夫だ」


 二人は若干心配そうな顔をしながらも頷く。でも、そんな心配は要らないんだけどな。ようやく姿を捉える。牛だ。正確には二足歩行の牛、黒帯曰くミノタウロスではないらしいが、そんなのどうでも良くなるくらい切って切って切ったモンスター。一応こいつはそれなりに強いらしいのだが。何時間も現れる牛全てを漏らさずに狩っていたんだ、これくらい楽勝だ。


 足を止めずに腰に下げた刀に手を添える。


「――ッ」


 身体強化で地面を蹴り真横に刀を振う。魔法を使わない純粋な刀の攻撃。


 瞬間、総勢53匹にも及ぶ牛の頭が浮いたと思うと噴水の如く真っ赤な血を降らせる。


「……おっと」


 そんな状況を確認しながら着地する。


「伊織君!すごいね!」


 紗奈が誉めてくるのでありがたくもらっておく。ちなみに立ち止まったりはしていない。ちゃんと走っている。


「……」


「どした?蒼介」


 走る速度は落ちてないがなぜが様子がおかしくなった蒼介をみる。もしかしたら俺が凄すぎて感動してしまったのかもしれないな。


「そんな凄かったからって驚くなよ」


「いや、今の攻撃はもちろん凄いけどそんなことよりこの短期間でここまでなるのかと思って」


「もうちょっと素直に誉めてくれても良くね」


「いや、正直そこまですごくない。と言うか、身体強化を覚える前の伊織でも技術があればできた」


 なんか傷ついた。


「それよりもその技術を習得するスピードが速いって事だよ」


 誉めてんのか?


『さらに敵来ます』


 耳元からの声でそれに気づく。やはりさっきと同じ牛だ。奴らしかいないのだろうか?


「じゃあ、次も――」


「いいよ、時間ないし」


 冷た!?いや待てマジで冷たい。


「《足》」


 そう呟いた瞬間には目の前の牛が銅像の様に固まっていた。なにこれやば!?つーか、足って言うから氷のクソでかい足かと思ったのに足から凍らせただけかよ。


 ……ん?足から!?


「おい、蒼介今足から――」


『次来ます』


 またか。忘れていた。あの牛どもはいくらでも湧いてくるんだ。


「《下弦の月》」


 紗奈が何か光の様なものでできた弓を上に向けて矢を放つ。放たれた矢は幾十にも分かれ牛に降り注ぐ。


「……つよ」


 俺の修行の成果は?なんかみんな強いし。


「そうかな?伊織君のさっきのやつの方がすごかったよ」


 なんか慰められた。


「……ありがとう……」


 取り敢えずお礼を言って前を向いた。後ろは振り向かない。俺は過去に囚われない男――え、今の攻撃であの数を――うわ範囲攻撃とか強っ。


 俺は今を生きる男なのだ。

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