59話 歳の差はらから
放課後家に帰ると着信が来ていた。
[伊織くん帰ってない様だけど、どこに居るの?]
「利己さんからか……」
利己、俺の母親の妹――つまり叔母である。利己さんは俺たちの両親が居なくなってから保護者になってくれている。と言ってもほぼ家には帰らず飛び回っているので経済的な面が大きいが。
この内容から詩から一応元気だとは聞いていたが、帰ってきたのだろうか。
そう言えば今は紗奈の家で世話になっているが伝えてなかった気がする。とにかく行く旨の連絡を入れて出かける準備をする。
「あ、お兄ちゃん」
そこで詩が来る。その手には携帯が。
「お兄ちゃんも連絡きたの?」
「ああ、どこに居るのって、一応連絡入れて今から向かおうと思ってたんだが」
「じゃあ、詩も行く」
じゃあと言われなくても連れて行くつもりだったがどちらにしても行く事が決定した。
「それにしても、紗奈ちゃんは用事あったなんてね」
今日は紗奈は用事があるようでまだ家に帰って来ていない。どうやらネスト関連らしいが、紗奈もあの人とは仲良さげにしていたので連れて行こうかと思ったのだが。それ以前に紗奈の家にお邪魔している旨を伝えるには本人も来たほうがいいだろうし。
「そうだな。それにしてもこの道久しぶりだな」
あの転移から数ヶ月転移先で過ごし直接紗奈の家に言った為、帰ってきても一度も行っていなかった。必要なものは何故が事前に運ばれていたし俺の分の生活用品もあった。
そんな考えを巡らしていたあたりで家に到着する。紗奈の家とは近いのでそれほど時間もかからない。
「「ただいま」」
鍵を挿しドアを開け同時に声を上げる。
「あ〜二人ともおかえり〜」
すると、奥の方から間伸びした声と共に一人の女性が出てくる。利己さんだ。年は未だ二十代である。
「あ、お茶入れるね〜」
俺たちが家に上がるとまるで外からの来客の様な行動をする。昔からだが彼女は誰かが家に入ってくると家の主人であろうと持て成す。
「ありがとうございます」
お茶を出されお礼を言う。美味いな。
「それで聞こうと思ったんだけど二人ともどこに居たの?」
至極当然の疑問を投げかけてくる。
「え?詩、連絡したよ」
「え?」
慌てて携帯を取り出し履歴を確認する。詩が横から覗き込み此処だよと言う。
「あ、本当だ」
至極当然の疑問ではなかった様だ。と言うか送っていたのか。しかも見せられた画面にはしっかり『OK』と書かれていた。承諾もしていたらしい。
「ご、ごめん忘れてた……」
この人は昔から忘れやすい人の様で良くこう言う事が起こる。
「もう!」
詩はそう言うが利己さんはどうせ帰ってきたら呼んだんだからと言いながら謝る。
「でも〜今更だけど女の子と男の子がって不味くない?」
「それは俺も思うけど」
説得はされたが俺もそのことは一番初めから頭にある。
「でも、二人とも付き合ってるし、詩は紗奈ちゃんと一緒に寝てるから大丈夫だよ」
どうやら詩は紗奈と一緒に寝ている様で朝は同じ部屋から出てくる。というより紗奈に手を引かれた詩がまだ眠いと言いながら出てくる。大抵俺の方が遅い為あまり見ないが。
「そうか〜そうなの?」
一瞬納得しかけてまた聞いてくる。
「そうだよ紗奈ちゃんのお母さんもお父さん良いって言ってたし」
一応聞いたことはあるのだ、人と話すのは苦手な俺だが昔から話すことのある紗奈の両親となら話すことは難しくない。曰く、俺なら大丈夫だとか親も家にいるしだとか。その二人はと言うと俺たちが寝静まった後に帰ってきて俺たちが起きる前に出かけてしまうが。
「そっか〜あとで挨拶しに行かなくちゃなあ」
「でも、二人とも夜遅くまで帰ってこないよ」
利己さんの発言に紗奈が答える。
「ど、どうしよう伊織君!」
「いや、どうしようと言われても……」
この人は俺と同じであまり人と話すのが得意ではないらしい。だから、こういう時どうすれば良いかわからなくなってパニくる。挨拶に行くのでさえキツいのにどうしたら良いかわからなくなっている。母親はそうでもなかった様だし、俺のコミュ障は此処から遺伝しているのだろうか。
「だって、夜遅くに行くのは良くないし、かと言ってメールとかもどうかと、と言うか何故今更?とか思われそうだし――」
次の休日なら二人とも家にいる為その日に行く事が決まるまでこの調子が1時間続いたのだった。




