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天より落ちし光の柱は魔石を運ぶ  作者: えとう えと
第五章 青鷺学園高等学校文化祭見学編
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54話 本物の黒


 紫炎を散らし攻撃を繰り返す兄を見る。いや、あの中にいるのは違う何かだと言うことには気づいている。


 高出力の魔力はぶつかり相殺しその衝撃をここまで伝える。


 高出力の魔力はいかに使い手といえどその身を侵す。兄である伊織の体の状態はわからない。喰魔石が宿主を守るのならばその身体を壊す事はないのか、それとも生きてさえいればいいのか、そんなこともわからない状態で詩が落ち着いていられるわけがなかった。


 いや、ある程度冷静を保てるのは自分と同等の気持ちを抑えなおも冷静であらんとする紗奈の存在があってこそだ。


 だが、もう限界に近い。幾度になるかわからない攻撃により飛んだ破片で伊織が傷付いた時には、もうどうやって障壁を破り中に入って止めるかシミュレーションが頭の中で高速で行われていた。


 ()()を使ってでもいくしか無い。


 「……――ッ」


 そう判断した瞬間、それを視界で捉えた。


 少女いや、幼女だ。幼女は障壁に手を伸ばす。


「」


 唱えた瞬間ガラスが割れるかのように糸も容易く障壁を破った。


















「――――」


 色葉葉月はそれを聴いた。















「障壁と言ってもこれくらいか」


 幼女が障壁を破り魔力の中心である二つ(二人)に割って入る。


 彼女の瞳は先ほどまでの蒼ではなく黒く変色している。

 

「――――」


 喰魔は問う。何者かと。


「誰かと聞かれれば……そうだね、私は【(カラス)】、【Nest】のボスと言えばいいかな?」


 彼女は年相応には見えないやけに大人びた笑みを浮かべる。


 この幼女――【鴉】は現在の【Nest】のトップであった。幼くしてこの地位に着いた彼女の特筆すべき点、それは圧倒的までの強さ。それが彼女のトップたる所以。


「「――――」」


 だが、そんな事は喰魔には関係がない。すぐさま攻撃を開始する。


 ――だが。


()()()()()では無理だ」


 それは絶対と言えるほどに【鴉】は確信していた。


「まぁ、だから、一旦落ち着こうか」


 【鴉】は手を地に伏せる。


 そして一言。


「――【鳥籠】」


 一瞬、鳥を入れるとは思えないほど大きく頑丈な鳥籠を幻視する。二つの喰魔は格子に囲まれ動きを止める。


「――今一度そこに戻れ」


 【鴉】の言葉に応じるが如く、二つの身体()から力が抜ける。


 ――【鳥籠】。それは【鳥之目】と並ぶほどの術である。



















「クックク、まさか……凄いですね」


 突然の幼女の介入、そして事態の沈静。あれは、噂程度にしか聞かない、【Nest】のトップ、【鴉】だろうと予測する。


 【鴉】はメディアにも出ず、未だに世間では、正体不明ともされている。此方も情報くらいは集めている。そして、幼女だと言うことも聞いていたが、実際に見てみると衝撃を受けずにはいられなかった。


 ――コイツもか。

 

「相間、逃げられないのは分かっているのならさっさと投降しなさい」


 だが、考え事をしている暇はない。


「本当に逃げられないとでも?道具を使えば転移だってできますよ」


 そう()()()使()()()ここから一瞬で消えることだって可能だ。


 だが。


「貴方だって分かってるでしょ。このフィールド内には登録されていない武器、魔道具などは持ち入れられない」


 そう、ここにくる為のゲートを通る際事前に登録されていない道具は全て持ち込む事は出来ない。例え無理やり入ろうとも道具は通過できずあちらに残る。そもそも、相間の立場では転移のための道具は手に入れる事は不可能、例え相間がそれを得て登録しようとも転移の道具はそれと言うだけで弾かれる。


「そう、魔道具の転移は不可能、なら、どうすればいいと思います?」


 相間は余裕たっぷりに聞く。


「正解は、道具を使わずに転移」


 相間の言葉にキイナは目を見開く。だが既に取り押さえようと動いている。


 だが。


「では、失礼」


 遅かった。相間の転移方が早かった。


 キイナは先ほどまで相間がいた場所を睨みつけた。
















「……知らない天井だ」


 真っ白なシミひとつない天井を見る。初めてこの言葉を言えた気がする。


「伊織君!」


「グヘッ」


 紗奈の声が聞こえたと思った瞬間には衝撃が来ていた。でも今はそんな事より。


「何がどうなってるんだ?」


 先ずは事情を聞くところからだ。色葉と闘って闇炎使って、それで……、そこからが思い出せない。


「それは、私から」


 突然の声に横を向くと色葉葉月が立っていた。

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