4話 自業酸欠
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津田伊織
魔法 :炎魔法
:闇魔法
スキル :言語理解
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「これだけ?」
なんかレベルとかHPとかMPとか無いのか?
まあ、いいか。
「ちゃんと見えたみたいだね」
「ああ」
「じゃあ、これで魔法が使えるね、君が前考察していた通り、イメージが大切なようなんだ。だから、属性がわからないとイメージのしようがない」
「じゃあ、これで使えるってことか?」
右手を前に出し球状の炎をイメージする。
やっぱ初めはファイアボールだ。
魔力をコントロールして、手のひらにまで持っていき、炎をイメージする。
魔力が炎をかたどりそして球状になる。
そして、放出。
〈ファイアボール〉
手のひらから出た小さな火球が、コンクリートの塀に飛んでいき壁に当たると掻き消える。
「すげー」
何てったって魔法だ。
凄く無いわけが無い。
「そうそう、この、公園に呼んだのには理由があるんだよ」
「?、魔法出すからじゃ無いのか」
「それもあるけど正確には、此処にはダンジョンがある」
「ダンジョン?」
ダンジョンと言えば、フィクションの世界では冒険者が挑み、モンスターを倒したり、アイテムをゲットしたりする、アレだ。
「そう、こっち」
そう言って蒼介は壁際に寄っていき、フェンスを登り向こう側に行く。
そっちは行き止まりのはずだ。
俺も蒼介に続き向こう側へ。
「これは……」
壁に立てかけてあったトタンを退かすとそこにあったのは洞穴だった。
「ダンジョンだよ、中にいるのはゴブリンらしい」
「そんなんがいるのに、そんな薄っぺらいやつで蓋してて大丈夫なのかよ?」
ゴブリンが出てきたりしたら、ひとたまりもない。
「それに関しては大丈夫だよ、情報によればゴブリンはダンジョンから出られないようだから」
なら安心だ。トタンを被ぶせてあったのは、人みつからないようにする為、なら十分に役割を果たしている。
「そうか」
少し魔法で、炎を出し中を照らす。
魔法一つ出すのにもまだ時間がかかる。
「入る前にもう一つ」
そう言って蒼介は俺に向き直る。
「さっきのステータスの話なんだけど、まだ、機能があるらしいんだ」
はて、何だろうかと、首を傾げる。
「君も魔法を使う時、感じただろうけど、発動にはわざわざ、臍のあたりから各部位を通して移動させ、明確なイメージを持って発動する、なんて、慣れれば出来ても、まだ、覚えて間もない、君に関してはさっき、初めて発動したばかり。そんなんじゃ、モンスターと、戦う時使い物にならないだろう?」
確かに薄々それは感じていた事だ。
「でも、そしたら、どうすんだよ?」
「此処で大事なのはさっき、言った機能」
まあ、やりながらのほうがいいよねと、蒼介は先程の魔力供給器を渡してくる。
ちなみに借り物なので一つしかないらしい。
「先ず、その機能っていうのは、一連の動きを、登録して瞬時に出せるってものなんだ」
「というと?」
「簡単にいうと、君がよく言っている、ゲームとか小説のスキルだね。ただし、魔力の動き限定。これを登録すれば簡単に発動出来るってこと」
つまり、俺が先ほど使ったファイアーボールを出したい時は本来なら魔力を動かし、手のひらに持っていき、さらに、炎をかたどる。
その、工程を登録しておけばゲームの魔法、さながら、一動作で発動が可能という事らしい。
「ちょっと見てて」
そう言って何もない場所に向かって手をかざす。
「〈槍〉」
魔力が手のひらに集まり氷の槍をかたどる。
「まあ、こんな感じだね」
やり方はと説明されるがままに操作をする。
〈ステータスオープン〉
ウィンドウが開かれる。
魔法の項目に触れると"登録"と書かれた項目が表示され、それに触れる。
「そしたら、実際に魔法を発動して登録すれば完了」
実際にこの動作をしないといけないので、自分に不可能な事は登録できないようだ。
「取り敢えず先ずは、ファイアボールだな」
試しに登録してみる。
「よしっ〈ファイアボール〉!」
自動で魔力が動き火球を形成する。
「すげっ」
ちなみに、この登録したものを発動する時は登録した名前、これで言えばファイアボールと口で言わなければならない。
音声入力なのだろうか。
「それともう一つ、登録した魔法は自分で使った魔法と比べると少し威力が落ちるらしいよ」
普通に出した能力が10だとすると登録して出したものは7くらいらしい。
ついでに言うと消費魔力は同じらしい。
それと、と言って蒼介は公園の敷地内に戻る。
「どうしたんだ?」
「あまり、ダンジョンの目の前で魔力を出すと、ゴブリンが出てくるらしいんだ」
「絶対出てこないんじゃ無いのかよ?」
「そうらしいんだけど、例外として魔法の行使を感知すると、身の危険を感じるのか、出てきて術者を襲うらしいんだ」
「なら、さっきのお前の魔法は良いのかよ?」
「僕の魔法で生じる一回程度の魔力では、感知しても出てこないんだよ、何回もやったら話は別だけどね」
そんな事を言いながら元の場所へ戻る。
じゃあ早速。
「次は何を登録しようかな〜」
俺はウキウキで色々な技を考えた。
「ちなみに、登録できるのは、大体7個迄らしいよ」
「え?マジで?」
「うん、でも、これには個人差があるらしいからもっと多くあると良いね」
そんなこんなで、かれこれ十分たった。
十分かそこらで7つ全部できるのかって思ったかもしれないが、結果から言うと俺の使える数は4だった。
別に強ければ関係ないし戦闘中に7つも出すことなんてどうせないし。
「決まったみたいだし、行こうか」
「ああ」
今度こそダンジョンへと足を運ぶ。
いざ行かん!!
「ねえ、伊織?、君の魔法炎だよね?」
なんだよ、気合い入れたとこだったのに。
「うん?そうだけど、って言うかさっき見せただろ」
「まあ、ダンジョンって言っても洞窟だよね」
「そうだけど、どうしたんだよ?」
「行きたそうにそわそわしてる時にこう言うこと言うのも何だけど炎魔法、酸欠になったりして使えなくない?」
「え?」