44話 最近は何でもデジタル
「そう言えば階級試験の頻度も段々上がっていくらしいよ」
「そうなのか?」
今まで階級試験が行われた回数はこの前俺が受けたので確か五回だった筈だ。約一年弱で五回となると通常の試験で言えば多いかもしれないが人数制限がある受ける側からすると少し少ない気もする。
俺の場合は特例だった為捩じ込まれたが。
まぁ、そんな人のために【Nest】が関わっていて試験を受けやすい、その、あお……学校に入学するのが良いのかもしれない。
「さっきの話の続きなんだけど、伊織はこう言う学校には行かないの?」
「ん?行けるなら行きたいけど、頭良いとこだろ?知らんけど」
「まぁ、それなりにね、でも、試験は通常の試験と魔法とかの実技試験と、こっちは階級試験を受かった僕たちは免除されるけど魔法知識や戦闘時の判断を問われる筆記試験の合計だから伊織の場合よっぽど勉強が出来ないとかじゃなければ大丈夫だよ。」
「よっぽどってどれくらい?」
「うーん、正確な基準は分からないけど伊織の場合、免除された分が満点、実技が満点だとして、今の段階で学校のテストで平均点の二分の一くらい取れてればギリギリ合格なんじゃないかな?」
「え?平均点の二分の一ってそんなに?」
やべぇ、二分の一どころか三分の一も怪しい。
「まぁでも伊織が最後に受けたテスト一年の時だから点数も結構高いかもだからそれを考えたらもっとかな?」
「一年のテストはカンタンなの?」
いや待て、一年のテストは一年の時に受けてちょうど良いくらいに設定されている筈。そのテストの点数が低い俺は一年だと出来ない奴なわけでそれから授業すらほぼ受けてないとなると……やばいな。
「蒼介、俺どうしよう?平均点の三分の一も怪しいんだけど」
「だ、大丈夫だよ。ほら、後一年近くあるし」
「そうかなぁ?」
「そうだよ、今からコツコツ出来ないとこからやってけば、伊織さっき九九が出来なかったよね?じゃあ九九から……き、きっと出来るよ!」
「中2にして詰んだ?」
いや、今の時代Y○uTubeとかあるしなそう言うので稼げ……稼げるのか?
「……Y○uTube稼ぎ方検索っと……なになに、……なるほど〜……時には教養も必要?……ダメかもしれない」
「は、話を変えようよ。元々違う話をしようと思ってたんだよ。さっきの文化祭の話、【Nest】に所属して居れば招待状が送られてくるんだよ」
「招待状?」
「うん、【Nest】の端末に送られて来ている筈だけど」
俺は普段使っている携帯とは別の端末を取り出す。階級試験で受かったものには全員に支給されている。
「お、これか『文化祭入場許可書』」
ネストから確かに送られて来ている。QRコードが貼られていてその下に周辺地図や詳細が書かれている。
「学校見学も兼ねて文化祭に行こうと思って誘いに来たんだよ」
「じゃあ、行こうかな。でもこれってネストに入っている人しか来ないのか?」
「勿論一般の人は来るよ。僕たちは何もしなくても入場出来るけど一般の人は申請をしなきゃいけないって話。申請するって言っても入れるのは3日あるうちのどれか1日だけだし結構広いし許可は通りやすいみたいだけどね」
全国的に報道されるくらい知名度があってその上で申請すればほぼ許可が出るってどんだけ敷地大きいんだ?
「びっくりだよね、七校あるにしても。それと僕たちの入場許可書はどの学校に行っても使えるらしいけど一般の人は住んでる地域を参照して一校に限定されるみたいだよ」
当たり前の話だが七校あっても一箇所に集中してしまえばとてもじゃないが入り切らないしゲートを使えるのはネストに所属している人だけだ車でしかも転移の影響で地形が変わって通れない場所もある中、長距離の移動というのは難しいだろう。
「あと他には……」
「ん?ちょっと待て教室に誰もいなくないか?」
「ほんとだ、伊織まずい……次は体育だ!」
最悪だ。1時間目にある事すら嫌なのに。
担当の体育教師の菊井はノリも良く皆に好かれているが忘れ物をしたり遅れたりするとめちゃくちゃ怒る。あと個人的に嫌い。
「伊織あと2分!」
俺たちは急いで上下を着替える。今日は微妙に暖かいのでジャージを着ようか迷うがそんな暇はない。
「ヤバい!あと1分!蒼介窓から降りるぞ」
授業は校庭で行われる。ちなみにどうやったか知らないが消し飛んだ校庭は直っている。
俺はいつかの様に窓枠に手をかけ下に降りる。
回れ右して昇降口まで走り靴を履き替えそして校庭にダッシュする。こんな時だけ真面目に整列している。前回はしてなかっただろ!時間ギリギリまで友達同士で話し合ってれば良いものを。そうすれば遅れて来た感を少なくして元から居ましたよ風に入れるのに。
とは言え俺の足なら一瞬だ。予鈴が鳴る前になんとか列に加わる。おい!お前ら俺の並ぶ場所を詰めようとするな!「10ヶ月居なかったから癖で〜」(横の会話を盗み聞き)じゃねぇよ。少し遅れて――ほぼ同時だが、蒼介も並んだところで予鈴が鳴る。
「気をつけ!礼!」
「「「お願いします!!」」」
授業が始まり体育教師が口を開く。
「今回はちょっとした護身術の授業だ」
あの日世界中にモンスターが現れ体育に追加された授業である。




