43話 当たり前のことだが通ったことのない道はわからない
「じゃ、配るぞー」
HRの最中、担任がプリントを分け始める。
「進路調査?」
俺が1人呟くが誰も反応しない。いや、多分声が小さかったんだろうな、うん、きっとそうだ。
「来週の金曜までに提出する様に」
担任はそう締めくくり教室を出ていく。説明くらいしてくれても良いのではないかと思うがそんなことは無いらしい。
それにしても進路か。
漫画とかで見たことあるが、大体の場合「お前まだ出してないの」って言われて何やかんやあって決めるよな。
まあ、今回の場合は職業とかでなく学校だが。
「伊織、書いた?」
蒼介が聞いてくる。
「書いたって言われてもな。どんな学校があるかもよく分からんし」
近くの学校どころかコンビニの場所すらあまり知らない。
普段引きこもっている俺は自分の家周辺の地理もそこまで詳しく無い。わかるのは学校の通学路と最近何回か行ったネスト支部までの道のりくらいだ。
「てっきり、【Nest】関連で高校はほぼ確定してると思ったけど」
「ネストかんれん?」
どう言うことなのだろうか。
「そのままだよ【Nest】が協力して作られた学校。デカいところは全部で7つ有るんだけど、と言うかニュースでもやってたよね?見てないの?」
「ニュース何てあんまり見てないし、そもそも、あの日から10ヶ月くらいはノーメディアだったしな」
あっちでは携帯すら使えなかったからな。
「まぁ、今日やってたんなら別だな今日は朝テレビ見てたし」
「じゃあ、伊織はニュースで何やってたか覚えてる?」
「そのくらい俺だって……あの、あれだよ。えーと何だっけかな〜ここまで出てるんだけど」
マジで何だっけ。テレビ見てたのはめちゃくちゃ覚えてるんだけど。
「ちなみに多分どの局でもその学校のことが取り上げられてたよ」
「どの局でもってなんかやばい事でもしたのか?」
魔法暴発して校舎消し飛んだとか。ねぇか、そんな威力出せんわ少なくとも俺は。
「そうじゃなくて文化祭をやるんだよ」
「ブンカサイ?」
その分火災とやらはどんだけエグいんだろ。ニュースで取り上げられるくらいだし。
「そう、ここから一番近いのは青鷺かな」
青鷺分火災……焼き鳥しそう。
「で、何で文化祭するだけでそんなに取り上げられるんだよ?」
「そりゃ、魔法なんかの使い手がいっぱいいて派手な事をたくさんするからだよ。普通の人だとそう言うのに触れる機会も少ないしね」
「でも、許可ないと魔法使えないんじゃなかったけ?」
確かそんな事を前に言ってた様な気がする。
「その心配はないよ。この学校に在籍する生徒は全員最低でも四級は持ってるからね」
「今年からだろうし人数少ないだろうけどすげぇな」
魔法が公になったのは去年末、そして階級なしだと進学できない、となるとどの時期に階級試験の第一回をしたか知らないがその時に資格を取らなければないけないと言う事だろう。
そもそも、ゲートの時も思ったがどんなスピードで工事してるのか謎だ。しかも学校となると校舎と教師(教員免許を持っていて魔法知識がある人(いるのかそんな奴)、生徒を揃えただけでは機能しないだろうし謎は深まるばかりだ。
「生徒数は結構多いよ、と言っても一学年だけだけどね。詳しくは知らないけど少なくとも僕たちの学年よりは多いよ」
この学年よりというと……1クラス約30人、それが6クラス。となると……何人だ?
「なぁ、蒼介、全然関係ないけど30×6って何?」
「180だけど……ああ、この学年の人数ね。正確には195人ね。と言うか伊織計算能力大丈夫?ほぼ九九だけど……」
おい、そんな顔するな。こっちはここ数ヶ月授業受けないんだ!……あれ?九九はそれ以前の問題じゃね?
「……沢山生徒が居るんだろ。でもなんでそんなに階級持ってる奴がいるんだよ?物理的に無理だろ?」
「その事なら、入学時には持っていない生徒は圧倒的に多いよ。でも入学してから指定された期間までに階級試験で合格するんだってそうしなきゃ退学って聞いたけど」
「いや、それ以前にそんなに受けれるのか?」
「その事なら大丈夫だよ」
そう言って蒼介が話してくれる。
簡単にまとめると。
ここに進学した生徒達は特別に用意された試験を受けれる。
難易度は変わらないが開催頻度が多い。
期間までは開催されていれば何度でも受けられる。
会場が多く用意されているので人数制限で受けれないとかはないらしい。
そして、期限までに合格しなければ退学。
そんなところだ。
どうやら現在の2.3年の教室は生徒がいない為そこを活用し入学出来た生徒は現在の約三倍いたらしいが、最終的にちょうど一学年の人数に減ったらしい。
難易度は変わらないと聞いたが人数を調整せずに一学年に収めるとかすげーと思ったがどうやら校舎は増設されているらしい。
何が約三倍だよ!絶テェ嘘じゃん!




