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天より落ちし光の柱は魔石を運ぶ  作者: えとう えと
第四章 端島襲撃編
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39話 必要ない風習に拘る


「そっちの結界も破れた様だねぇ?」


 【鳩】は二人にむかってお返しとばかりに煽る。


「あ?関係ぇねぇーよ」


 ジュウジが限界とばかりに言い返す。


「僕たちがその程度で負けを認め――」


「いや、それこそ関係ないから」


 【鳩】の蹴りが入る。


 見えなかった。


 気づいた時にはもう遅い。


「君達バカなのかなぁ?私たち相手にまともに戦えないから魔素を使えない様にしたんでしょ?魔素が戻り始めている今、身体強化は勿論魔法だって使える。君達に勝ち目ないよ?」


 完全に魔素が戻ったわけではないが身体強化は特に出し惜しみする必要は無くなった。


「くっそ、死ねぇ!」


 ジュウジが土魔法を発動する前にやはり蹴りが入る。


 【鳩】がアデゥシロイの拘束が解かれた事で攻撃対象にならない様に遠ざけているのも理解できない様では本当に勝ち目はない。








「チッ、操魔も切れたか。さっさと要を済ませるぞ」


「はい!」


 阿木の言葉に元気よく答えるが。


「それはさせられないのぉ」


「【鵲】ッ!?」


 【鵲】は他と比べ比較的魔素に頼らないが既に結界がない以上勝ち目はない。


 それ以上にアデゥシロイへ何かしようとすれば本気を出してくる可能性は高い。


 だが。


 この状態ならアデゥシロイに近づけさえすれば良い。


 なら。


 ――転移。








 ――命秤結界。


 転移で接近するが一足遅い。


 アデゥシロイの足元から光輝く鎖が現れる。


 だが結界の解かれた今アデゥシロイを阻むものはない。


 アデゥシロイは鎖を躱そうとする。


 だが。


 鎖がアデゥシロイへと向かうが避けられるかに見えたところで動きを止める。








「はぁっはぁ……まに、あった」


 イセホであった。未だ怪我は治っていないが【鵲】の応急措置により何とかなっている状況だが。


「此処で寝ているわけにはいかない」


 どうせ動かずに居るだけなんだせめてこれくらいはしよう。








 アデゥシロイが鎖に拘束され封印予定であった祠に吸い込まれる様に入っていく。








「ホウ、手分けして全員を回収するぞ」


 失敗した以上速やかに撤退した方がいい。


「はい」


 転移の魔道具を使い全員を回収する。








「もう終わったみたいだけど良いのぉ?」


「チッくっそ」


「ジュウジ、転移だ」


 転移する直前【鳩】がギリギリ一撃を与えるが逃げられる。







 【鶯】は直ぐに先ほどの場所へ戻り確認するが。


「……逃げられたか」


 【鶯】が戻ってくるまでに逃げてしまった様だ。


 この一瞬でとなると転移の類だろうか?








「……全員いるか?」


 阿木はひとまず島から離脱した仲間に問う。


「全員います。気絶していたカケイも回収済です」


 皆を代表してホウが応える。


「そうか……ご苦労だった。まずは戻ろう」


 そう言って再び転移を開始した。








「取り敢えず封印は終わったわけだが」


 【鳰】が口を開く。


「まずは怪我人ですね」


 まずは怪我人の処置である。


 いくら助かる命でも助けなければ助からない。


「一応、回復系の子は居るけどねぇ」


 当たり前だが今作戦にも回復系の能力者はいる。


「じゃが、本部に連れて行った方が良いじゃろ」


 先ほどの攻撃の効果もわからない現状ではそれが一番だろう。


 それにもう一人――タドルは相当な重症だ。


 既に手の空いた者たち――元々怪我人を運ぶ役に割り振られていた者たちが本部へ運んでいる。


「だが、あいつら何だったんだ?」


「さぁ?」


 【鳰】の疑問に【鳩】は疑問で返す。


「何故此処が分かったのかも気になりますしね」


「わしは結構楽しかったから良いがのぉ」


「おい」


 やはりこの爺さんやばいかもしれない。


 ほぼ死人みたいなのが出ている状態で言う事じゃねぇ。


 それに弾丸を防げなかったことを忘れてるんじゃないだろうな。


 戦闘中も手加減して楽しんでいた様だし。


「とにかく撤収するぞ」


 【鳰】はため息をつきながら告げた。







 

 【鳰】の部下になったその日、たった数日前の事だ。


「俺はタドル親しみを込めて名前で呼んでくれよ二人とも。まぁ、名前しか教えないがな」


 そしてタドルさんと出会った。


「えっとよろしくお願いします。イセホです」


「よろしくお願いします。シタバです」


 イセホと共に此処に来たシタバは挨拶を返す。


 イセホとシタバ、この二人は以前から知り合いだ。


 幹部の部下になると名前か苗字だけ名乗ると言う謎の風習がある。


 呼び方には困らないが本当に謎だ。








「次はこれの説明だな」


 そう言ってタドルは説明をする。


 どうやらこの人は教育係なのだと言う。


 本人は自分からやりたいと言い出したらしいが。


「シタバもよく聞いとけよ」


「は、はい」


 ここ最近気づいた事だがシタバはあまり手際が良くないらしい。手際が悪いと言うより、慣れない仕事は初めのうちは時間がかかる。


 シタバと知り合った時には既に仕事を覚えテキパキと働いて居たので疑問に思ったが、本人曰く慣れれば上手く動けるが慣れないうちはあまり上手く行かないらしい。


 そして慣れるまでが人より少し時間がかかる。


 と言っても優秀だから此処に来たのだ。実際シタバは前いたところでは優秀な者であった。


 少しシタバに対する印象が変わった。前は何でも出来るやつだと思っていたがそれは努力した結果らしい。


 イセホは慣れるまで少し気にかけてやろうと思った。








「イセホ、お前には結界の中核の一人になってもらう」


 いきなり【鳰】にそんな事を言われた。


「お、私がですか?」


 つい俺と言ってしまいそうになったのを堪えて訊く。


「と言っても、仮だ。先ず、結界の必要な任務は無いだろう。緊急で何かあった場合のために予め決めておく必要があるからな」


 自分に今すぐやれと言うことでは無いらしい。


 何か起きた時に誰が何をやるか決めておかないと動きにくいと言うことらしい。


「いきなりで悪いな。一人抜けちまってな」


 どうやら前にやってた人がやめたらしい。


「わかりました」


 そう返事をした。








「凄いじゃ無いか」


「そうだよイセホ」


 二人はそう言ってくれた。


 まぁでも、相当なことがないと必要ないみたいだしいいか。


「よし、お前ら飯行くぞ」


 そうタドルが提案する。


「行きましょう。な、イセホ」


「あぁ、そうだな」


「何食いたい?」


 今日は俺が奢ってやるとタドルが言う。


 これが1日目の出来事だった。

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