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天より落ちし光の柱は魔石を運ぶ  作者: えとう えと
第三章 【Nest】試験編
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29話 触らぬ喰魔に祟りなし


「……ガ、ガロッ」


「あ?」


 まだ生きてんのかよ。


 とどめを刺しとくか。


「ガロゥォォオオオオオオ!!!!」


 モンスターは雄叫びを上げる。


 五月蝿え。


「なっ?」


 次の瞬間膨大な魔力。


 まさか。


「モンスターも魔力を抑えるってか」


 よく考えて見れば自分自身だって無意識にある程度抑えていた。


 こうなってもおかしくはないがさっきの二倍どころでは収まらない魔力に舌打ちを打つ。


 更に。


「傷も治んのかよ」





『おっと!!人間君が蘇ったああああ!!!』


「魔力解放したな」「魔力で怯んでる間に再生ってわけか」「もしかして人間君JⅣって事ですか?」「いや多分【秋沙】さんが改修して初めて数が上がるらしいけど……」「どう見てもパワーアップしてんだろ」「あれは俺たちでも倒せないぞ」「直ぐに中止に」






「おいおい、なんかゴツくなってねーか?」


 モンスターが拳を握り攻撃を仕掛けようとす――


「――グホッ」


 視界情報、魔力あらゆるものを使ってギリギリ追えた程度で反応できない。


 二撃目が来る。


 刀を構え――


「グッ」


 ……あ、やばっ、意識が。




『津田伊織ゲームオーバーだ!!!』


「伊織様あああ!!!」「流石に強すぎたな」「おい、何で二撃目を入れようとしてんだよ?」「お、おかしいです、普通ゲームオーバーになった受験者は襲わないはず」「おい、やばいぞ」「あっ、おい、安田っお前が行っても」


『私が現場に向かいます』


 スナイは気合を入れてフィールドへ続くゲートへと向かう。





 動けなくなった津田伊織に三撃目、四撃目と攻撃を与える。


「ガロッ!」


 何か違和感に気づく。


 可笑しい。


 こちらが攻撃しているはずなのに自身の拳がすり減っていく。


 しかも再生しているにも関わらずだ。








 


「津田伊織の結果出ました」

 

 ディスプレイを見ていたシタバが振り返り【鳰】を見る。

 

「結果は?」

 

 【鳰】はそうシタバに聞き返す。

 

「どうやら体内の2つの魔石が融合し始めているようで」

 

 と言うのも伊織の使用した魔力計測機器の隣には魔石の状態を見ることができる機器が置いてあった。

 

「原因は?」

 

「いえ、分かりません」

 

 何と言っても二種の魔法を持つものなど前例がないそれも仕方がなかった。

 

「ですが1つだけ気になる点が」

 

「?なんだ」

 

 シタバの言葉に首を傾げる。

 

「この、おそらくこの炎属性の魔石、何かいますよ」

 

「それって……」

 

 【鳰】は報告書でその存在を知っていた。

 

 これと同じ魔石を使うものは【Nest】内部にもいる。

 

 万物を喰らう魔石。

 

 喰魔石などと呼ばれている。

 

 その1番の特徴はその名の通りである。


 喰魔石は喰らう。

 

 なにを?

 

 魔素。

 

 魔力。

 

 肉。

 

 それは様々だと言われている。

 

 そして今回の場合は魔石。

 

 これがどう影響を及ぼしているのかは分からないが二種の魔法を習得するのに関係するのではないかと【鳰】は考えた。

 

 厄介なものをとモニターに映る津田伊織を見る。

 

 先程まで無意識下で抑えて魔力もダダ漏れでやっと自力で抑えたようだが魔力面、戦闘面ともに素人臭い。

 

 それでも得体の知れない者。

 

 あの濁ったようなそれでいて透き通ったように見える不思議な目、それを見た時【鳰】そう思った。

 

 そこで【鳰】はまた忙しくなるのかと察してしまった。


 本来ならこの手のことに関しては自分は専門外なのだが。

 

「な、あれは……」


 そんなことを考えていた時、シタバの様子がおかしくなった。


「どうした?」


「あれを見てください」


 シタバが指を指す。


 その先には津田伊織。


 それを囲むように渦巻く紫炎。


「……喰魔石の効果か」






 人間君は驚いていた七発目を入れたところだった。


 実際ダメージはなかったようだが。


 先程、目の前の人間から紫炎が噴き出した。


 そしてその紫炎は意志を持ったようにこちらを攻撃してきた。


 だが、其れから動かない。


 当たり前だ。


 気絶しているのだから。


 当たり前だ。


 魔力が一人でに動くわけがないとだから。


 だが、可笑しい。


 でも現に気絶した人間が立ち上がりこちらを見据えて来ている。


 こんな事は起こり得ない。


 当たり前な訳がない。


 可笑しい。


 人間の形をした何かは偽りの人間に怪しく光る紫の目を向ける。






 喰魔石――


 それは魔石で在り魔石に在らず。


 喰魔石とは。


 魔石であり。


 魔物であり。


 人間であり。


 亜人である。


 喰魔石は宿主からの供給で存在する。


 その代わり宿主に何かを与える。





「これは、喰魔石の影響だ」


 鳰はモニターに映る伊織を見ながら言う。


「魔石の?」


 シタバは疑問を返す。


「ああ、喰魔石はあらゆる物を喰らう。だがそれは宿主がいなければ成り立たない。それゆえ今回のような場合には魔石が宿主を外敵から守るために力を貸すことがある」


 表情が抜け落ちた抜け殻のような伊織を見ながら言う。


「喰魔石を使用していたものが多いとされた旧【烏合之衆】では"守葬化"、そう呼ばれたそうだ」





 ◼️◼️は宿主を(おびや)かす存在を消すために相手を見据える。


 不恰好な、人間に似せた作りの魔物。


 腹立たしい。


 魔物は魔物らしくしてれば良い物を。





 可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい



 既に思考できる状態では無い。


 何だあれは?


 わからない。


 何だあれは?


 分からない


 何だあれは?


 解らない。


 でも。


 殺さなければいけない。


 ここで。


「ガロゥォォオオオオオオッ!!!!!!!!!」


 腕を振り上げ振り落とす。


 相手はゆっくりと手を翳してきたが遅い。


 何度も叩き続ける。


 何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も


 全て紫炎によって阻まれる。


「―――」


 何か言った。


 視界が一回転して地面に落ちる。


 何かが喰っている。


 龍だ。


 マスターに教えてもらったことがある。


 ――これは龍って言うの!でこっちがサラマ……何だっけ?……トガケ!


 紫炎を纏った龍が喰っている。


 ――おはよう人間君、えーとじぇ……?、ま、いっか!

 

 何かが喰われている。


 ――君は凄いんだ!わたしが作ったからね!物を考えられる!


 あれは――自分の腕――あっちでは脚――あそこでは胴が――。


 ――コイツはマジックタイガー、凄いでしょ!


 どうしてあんなところに?


 ――君の兄弟も作って見たよ!


 龍がこちらを向いた。


 ――こっちが人間君じぇ――ん?


 逃げなければ。


 ――でこっちが人間君じぇす――名前はいいや!


 あれ?


 ――君達兄弟はデカいからなぁ


 脚が動かない?


 ――あ、これたべる?


 あれ?


 ――えー好き嫌いとかあるんだ


 あれ?あれ?あれ?あれ?あれ?あれ?あれ?あれ?あれ?あれ?あれ?あれ?


 ――どう?今回は鎧つけて見たよ!


 目の前にきた。


 ――うーん次は何つけようか……


 何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?


 ――ここは初心に帰ってツノとか?


 龍が口を開ける。


 ――あれこっちの奴張り切りすぎて巨人みたいになっちった。


 可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい


 ――うーん、体動かしたいよねぇ


 何でこんな目に遭わなきゃいけなんいんだ。


 ――そうだ!君たちのための舞台を用意してあげよう!あ、でも秘密だよ!


 可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい


 ーーでも負けてほしくないな……ん?でもこの試験強い人いないよね?まあ負けたらそれは確実に部外者って事だから……


 何を間違ったんだ?


 ーー倒して良いって事だよね!よしっ君達にわたしからの任務だ!強いやつは徹底的に倒しちゃえ!


 何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何を何をなにーー


 ――人間君っ頑張ってね!






 ◼️◼️は対象が絶命したのを確認し身体を宿主に返した。

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