2話 全身黒タイツを着せられる(着ません)
「コレはこのまま降ってきたんだって」
「嘘はよそうよ……」
「いやいやホント」
「犯人はみんなそう言うんだよ」
「いや、違、ちょっと待て」
俺はスマホで検索をかける。
[空から落ちてきた宝石]
「あった!、これだよ」
俺はスマホを見せる。
数は少ないが俺と似たような投稿をしていた人を何人か見つける。
「確かに同じこと言ってる人もいるみたいだけど……」
「だろ!」
「みんな共犯……は無いか、お兄ちゃん友達いないもんね」
詩は今まで見せたことのないような笑顔を向けてくる。
「信用されてるのか、されてないのか」
俺自身はされてないが友達が出来ないことに関しては信用されているようだ。
悲しいかな。
「そ〜れ〜よ〜り〜、詩にもちょ〜だい」
「にもって、俺は一つしか持ってないぞ」
あげたく無い一心で嘘をつく。
コレは俺のだ!やらんぞ!(固い意志)石だけに。
「別に一つでもなんでも詩が欲しいって言ってるんだから頂戴よ、ほら、アレだよ、お兄ちゃんなんだから我慢しなさいってやつ」
「それ、言って良いのは、母親か父親だけだぞ」
「良いから早く出して」
詩はバッグ引ったくると中身を物色する。
中身と言っても宝石三個しか入ってないが
「他にもあるじゃん……う〜ん、コレかな、これとこれ趣味悪いし」
そう言って三つ目に見つけた黄色い宝石を出す。
「はぁ?かっこいいだろ!赤と紫」
「え〜、もちろん綺麗だけど微妙じゃない?」
「そんなことないし、かっこいいし」
「めんどくさ」
悲しい。
「まあ良いし、売るために拾ってきたし」
「売るの?でもあんま詳しくないけど未成年って売れなくない?」
「え、そうなの?」
「あんまり詳しくないけど、親の同意とか要るんじゃないの?」
「マジでか」
『そうだね、たしか保護者が居ないとダメなんじゃないかな』
画面の向こうで俺の友人、日高蒼介は、俺の質問に対して答える。
「そっかぁ、せっかく拾ったんだけどなぁ」
『そう言えば、それに関して、伝えたいことがあったんだ』
「伝えたいこと?」
『そうそう、伝えたいこと、ちょうど気になって調べてたんだけど、情報が入ってね』
というのも、蒼介は情報屋的な事をやっている。
ただ、よく漫画で出てくる、ヤバそうな情報を知ってる奴ではないらしい。
本人はちょっとした趣味だと言っている。
「へー、で何だって」
『その宝石、魔石って言ってね』
「ぶっくく、焦んなよ、まだ、俺らはまだ中二じゃないぜ、今はまだ知識を蓄える時期だ。でも、そうだな俺は嬉しいよ蒼介もこう言うことに興味を――――」
『それで何だけど、コレを使うと魔法の習得が出来るらしいんだ』
「ちょっ、無視すんなよ」
『君の友達できない理由はそう言うところが大きいんじゃないの』
「い、今は関係ないだろ」
『それに君話しかけられないとか言ってるけど相手から話しかけてくれる時にそんなめんどくさい返ししてるからじゃないの?』
心当たりがない訳ではない、と言うかかなりあるような。
「そんな事より魔法の習得って正気かよ?」
『君が見ている……何だっけ?とにかくゲームのモンスターに似ている生物も現実に出てきてるくらいだしもう信じるしかないよね』
「ま、待てモンスター?」
ニュースでモンスターが出ました、なんて聞いてないぞ
そもそもそんな話、いやでも、当たっても怪我しない変な石が落ちてきたからそう言うこともなくも無いのか?
『コレも魔石の事を教えてくれた人――【鶯】に教えてもらったんだ』
「うぐいす?」
何だそれ?
俺もそう言うのやって見たい。
『ちなみに、カタカナじゃなくて漢字表記絶対って言われたよ』
「俺もなんか考えようかな、鴉とか梟とか別に鳥じゃなくても良いなら……」
『まあ、兎に角使うには宝石に魔力を込めるらしいんだけどあまりうまくいかなくてね』
「魔力を込める?」
俺は拾った二種の魔石を取り出す。
魔力か、ラノベとかだとお腹ら辺から力をコントロールするなんてよく聞く話だけど。
俺は臍のあたりに意識を向ける。
何か感じる。
魔力だろうか?
いや、そんな筈は。
でも、魔石が直撃したときにこれに似たものを感じた気がする。
もし、石と関係があるとすれば
ガチなのか?
と言う事はあの光の柱は魔力だった的な奴だろうか?
意外と簡単に操作できることに違和感を覚えながら体の部位を通して両手の指先に動かしていく。
指先が光ると魔石に徐々に光が移り多く魔力を注ぐほど光を増す。
視界が白く潰れる。
『ちょ、……いじょ……ぶ?』
若干遠のいた意識の中で蒼介の声が聞こえるがうまく聞き取れない。
体内の魔力が全て吸い取られるかに思った瞬間光が消えた。
手には魔石はない。
魔法を覚えたのだろうか?
『ぐ、やっと収まった、凄い眩しかったけど、大丈夫?』
「あ、ああ、多分だけど、魔法覚えたかもしれない」
『何となくそんな気はしたけど、どうやったの?』
「なんていうか、臍のあたりから――」
蒼介に簡単に説明する。
『そうなんだ、僕もできないか試して見るよ』
「でも、お前魔石、持ってんのか?」
『うん、この話を聞いてから必死に探したよ、偶々光の筋を見たから見つけられたようなものだけど』
そんな話をしてそろそろ良い時間になったので通話を切った。
「お兄ちゃん!紗奈ちゃん家いくよ!」
妹に呼ばれ上着を持って玄関に行く。
紗奈と言うのは、両親の友達の娘にあたる俺と同い年の子だ。
何をしに行くかといえば、夕飯だ。
昔から紗奈の家にお邪魔することは多かった、お互い、両親が出張でいないなんて事は良くあったので夕飯を食べに行くことが多々あった。
それが今では毎日お邪魔しているがそれには理由がある。
俺たちの両親は少し前に交通事故で亡くなっている。
今の保護者は母の妹、つまり俺たちの叔母だ。
その叔母も海外出張や何やらで家にいないため紗奈の提案もあってお邪魔させてもらっている。
「早く〜」
詩に急かされ急いで靴を履き鍵をかける。
鍵がかかった事を確認して。
「「行っています」」
二人揃って歩き出した。