28話 スライムはそんな都合よく溶かしてくれない
「近い!」
トモが確信する。
「ち、近い//」
ヤクモが顔を赤らめる。
『我々は何を見せられているのだろうかあああ!!!』
「まあ、アリじゃないですか」「俺も男でも良いかな」「素敵です!」「俺もそう思う」「俺も」「鼓動が此処まで聞こえてるような」
「結構走ったな」
俺はあの遺跡っぽいところから出来るだけ離れるために走っていた。
森林エリアに入っていた。
紗奈との合流地点は決めてあるが直行はできない。
「ん、何だこの魔力」
くっそ早い勢いでこちらに向かってくる。
「このまま向かうのは不味いか」
一旦茂みに隠れる。
コッチに来てるな。
少し右に逸れる。
あれ、こっち来る。
大幅に左に逸れる。
あれ、こっち来る。
「ん?」
気配は魔力で分かるのが一つ多分それはモンスター、近づいてきて分かったが多分その前に人がいる。
一人……いや、二人か。
「てかもう近っ」
茂みから人。
あれ?こいつらさっきの。
小柄な奴に大柄なやつがお姫様抱っこされてる。
「おーすごい絵面だな」
踏み込んで俺の上を越えていく。
なんか鼓動が聞こえる。
頬赤らめてね?
「やべっ、見とれてた」
目の前からモンスター。
攻撃。
「グッ!」
刀でガードをするも数メートル吹っ飛ばされる。
ダメージはないが。
ゲームオーバーにはならなかったようだ。
「クソッなんて奴らだ俺の気をひいて油断したところにモンスターだと」
ま、冗談はさて置きこいつ結構強いな。
大きさはゴブリンキングくらいか。
強さは……俺があった中で1番強いアデゥシロイより弱いが、それ以外の戦ってきた奴より強い。
良い感じの比較対象がないな。
「まあ、ギリギリ行けんだろ」
魔力から見て判断する。
それが全てではないが人間は兎も角モンスターはその存在に応じて魔力も上がるようだし。
「《闇炎》ッ」
流れ出る闇炎を刀に纏う。
足を踏み狙うは首。
一気に跳躍して鎧の隙間に刀を刺す。
が、腕で防がれる。
「ま、そうだよな」
だが、そんな事は分かっている。
「"腐喰"ッ」
闇炎がまとわり付き腕を蝕んでいく。
"腐喰"と言うが実際には腐らせているわけじゃない。
転移先で色々試して見た時。
「闇魔法の技少ないよな」
炎単品の魔法はよく使うが闇魔法をうまく使えてない気がする。
「でも、闇魔法とが思いつかんし」
魔法にはイメージが必要、レベルアップしたら簡単に覚えるわけではないのだ。
「スマホも充電ないし調べられないしな」
考えること三十分。
「闇、ダーク、ダークエルフ、えろい、女、ヤンデレ、病み、侵す、はっ!腐食だ」
ということで試した。
が。
「腐食のイメージって何?」
いやそもそも闇魔法は腐食を使えるのか?
二週間後。
「闇炎ッ……そう言えばコッチでは試してなかったな」
イメージは腐食というからには喰べるイメージで。
「出来ん……なんか無いかなニ属性の魔力の強さの割合を変えるとか……いや、出来るわけ」
できた。
勿論1日でできたわけでは無いが3ヶ月試行錯誤していたら出来るようになった。
正直感覚的な話しで理屈は分からない。
そして肝心の効果だが。
観察して見たところ腐食ではなかったようなので"腐喰"と名付けた。
腐ってないらしいので腐は要らないけどそんなのは知らない。
腐喰は即効性のある者では無い言ってみればゲームのデバフだ。
だから直ぐにその場を離れる。
その状態で炎を上に噴射して一瞬で地面へ落下。
地面当たる前に更に後方に炎を噴射。
その勢いのまま相手の腱を狙う。
脚を地面に擦りながら一撃を入れる。
「ガロッ」
「いっつ」
もっと、横にぐわんっていく予定だったのにほぼ不恰好なスライディングになってしまった。
脚いてぇ。
とは言え、相手の動きを妨げることくらいはできただろう。
間髪入れずに攻撃を仕掛ける。
鎧を着ているせいで身体は大きいくせに狙いが少ない。
見たところ東洋っぽいデザインで西洋のプレートアーマーのように全身を覆ってないのが救いだが、金属でできているようで南蛮鎧と言った方が良さそうだ。
あとなんか申し訳程度にデフォルメされたカドが落としてあるあのツノは何だ?
まあ良いか。
他には所々破損してて隙間もある。
だが、破損してるとは言えどうせダンジョン産とかなのだろう。
これごと切るのは大変そうだ。
隙間から刀を刺し込み闇炎を流す。
攻撃を捌きながら何度も繰り返えす。
そうする事で腐喰により鎧を減らす。
服だけなくなるとか無いからそう言う事はできない。
元からボロい鎧がよりボロくなっていく。
「そろそろやってみるか」
刀を振り上げ振り下ろす。
炎で加速させ炎で威力を上げる。
「ハァッッ!!」
「ガルロゥォォオオオオッ!!!」
刀が触れた部分を溶かし切り裂いていく。
そして下まで振り下ろす。
「どうやら上手くいったみたいだな」
そこには馬鹿でかい傷を作って佇むモンスターがいた。
『何と人間君に大ダメージを与えたあああ!!』
「伊織様ああああああ!!!!」「凄え」「強いです」「魔力どんだけ消費してんだ?」「身包みを剥いでからやるとは流石だな」「言い回しキモい」
「あの攻撃は何だ?津田伊織の測定の結果を出せ」
「は、はい」
今日は【鳰】のあれを出せこれを出せが多なと思いながらキーボードを叩く。
【鳰】の部下はいま殆どが出ているため此処にいるのはわずか3人なのだ。
そして最近部下になったばかりの下葉は先輩たち帰ってこないかななんて思っていた。
慣れない職場での上司からの叫び声はキツい。
【鳰】の人柄をある程度知っているから耐えれるが他の上司だったら逃げていた。
あと見た目可愛いから強い言葉を言われてもいいやなどとも思っていた。
「出ましたコレです」
急いで結果を表示したシタバは声をかける。
「これが原因か」




