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天より落ちし光の柱は魔石を運ぶ  作者: えとう えと
第三章 【Nest】試験編
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27話 闇雨と造花


『第三試験が始まったあああ!!!』


「お、始まっ……だれだ一瞬でゲームオーバーしたやつ?」「仲間にやられたとか」「おい画面見ろ」「あれは……」



 ――――――

〈game over〉


 徳備多々良


 ――――――



『まさかの最初の脱落者は徳備多々良!!』


「え、まさか?」「攻撃強いけどめっちゃ動きは鈍いとか?」「でも、さっきすごいスピードで動いてましたよ」「俺もそう思う」「俺も」





 実際のところ徳備多々良は外部からの攻撃は受けていない。


 では何故かといえば徳備多々良が実際に攻撃に転用している、闇属性の魔力。


 実際それは徳備多々良の魔力を利用して生み出させ続けているが、元はアデゥシロイのものである。


 それをシステムが判定、ゲームオーバーになったのである。




「《闇炎(闇炎)》――《闇雨(あんう)》ッ!」


 闇色の雨が広がり次々に退場させていく。


 威力もそこまで高く無いので使いどきはないと思っていたのだが。


 何故単属性でなく二属性の闇炎なのかと言えば雨のように降らせるためには炎属性や闇属性だけでは再現が不可能だからである。


 質量を持たせ空から地面に落ちるまでの時間を保たせるのにはこれが1番有効だった。


 既に紗奈は避難させているので思う存分出来る。


「クッソ土魔法を持ってる奴は屋根を作れ!」


 必死に雨よけを作っているが此処に留まる道理はない混乱に乗じてこの場を離れる。





『津田伊織が広範囲攻撃によって一気に数十人脱落させたああ!!!』


「新しい技だああああ!!!!」「えー燃費悪そう」「カッコいいです」「アイツゥ」「後で締めてやる」「どんだけ魔力あんだよ」「俺だったら十秒も持たないぞ」「それは低すぎじゃね」






「……トモ、あれ見えるか?」


 ピラミッドもどきにヤクモが指を指す。


「馬鹿にしてるのかな?黒い雨でしょ」


「それはまずい、まあ黒いけど」


「でどうするのかな?」


 トモは何かあんでもあるのかと聞いてみる。


「いや、逃げるっきゃねぇだろ」


 一目散に走り出したヤクモを追いかけるようにしてトモも走り出した。




 のだが。


「何だよこれ?」


「モンスターかな?」


「そりゃ見ればわかるが」




『人間君JIIIだあああ!!!!』


「流石に多くね?」「さっきのデカい方と同じか?」「でも色とか細部の形とか違いますよ鎧見たいのも着てますし。何のJ何でしょう?」「ジェネラルのJだ」「J縛りでもしてんのか?」




 黒の鎧に隙間から覗く黒い肌。


 人間君である。


「勝てる気しないんだけど」


「自分もそう思うかな」


 かと言って此処で立ってるわけにもいかない。


「よしっ」


 ヤクモは気合を入れ直す。


「ふぅ――逃げるぞッ!!」


 ヤクモはその場を離れた。


 やれやれと思う暇もなくトモもそれを追いかけた。




『逃げたぁああ!!』


「さっきから走ってばっかだな」「でも徳備が戦ってたやつより小さいけど強いからな」「ヤクモ君にずっと着いていって大変そう」「でも、ヤクモ君より強そうです」「俺もそう思う」「俺も」








 ヤクモブキ、チダトモ両名は気の使い手だが練度を見れば明らかにチダトモの技量が優っている。


 ヤクモブキは力任せにしか攻撃できないため気をうまく活用することができていない。


 対してチダトモは完璧までとは行かなくとも気を流れるように使い、二級レベルのものでも難しいとされる、気と魔力の併用ができる。


 それが出来れば、気を使い極限まで高めた様々な技量に加え魔力を使い身体強化の付与が可能になる。


 つまり。


「しっかり捕まってほしいかな」


「うぉ、速っ」


 大柄のヤクモが小柄かつ中世的なトモに抱き抱えられる――所謂お姫様抱っこをされる絵面が完成する。


 これが俊敏性も増した人間君から逃げる最善の方法だ。


 しかも向こうから下手くそなコントロールで押さえ込まれた魔力を感じる。


 つまり、津田伊織である。


 本来此処にくるものはモンスターとの戦闘経験が少なかろうが多かろうが魔力コントロールは完璧であるはずだ。


 何故ならそれが基礎であり、出来ないと魔法などまともに使うことなど出来ない。


 何故なら魔力が枯渇してしまうから。


 師を持たない独学で学んだ者でもこれだけは此処を受ける者であればできる。


 だが津田伊織は魔法コントロールは試験に参加している者の中で抜きん出て圧倒的に上手いが体内から微量に溢れ出す魔力を抑えるのは多分この中で1番下手だ。


 多分、この試験で初めて会った魔力を操れる者つまり、自分達を見て咄嗟に魔力を抑えたとトモは予想していたがそれが功を奏した。


 魔力をダダ漏れにしていた時より目立つ。


 つまり、津田伊織を身代わりにして逃げるのがトモの作戦だった。


 多分本気の津田伊織ならこの程度なら死にはしないと分かっているだから罪悪感なんかは無い。


 反応が止まった。


 敵に気付いたか?


 だが関係ない。


 こちらがそこに連れて行けば良い。


 トモはニヒルと笑った。


 そしてヤクモは腕の中でときめいた。





『何とおお!!お姫様抱っこだあああ!!!』


「ウホ」「なんかヤクモ君顔赤くない?」「素敵です!」「俺もそう思う」「俺も」「あれ、これマジで堕ちたのでは?」

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