21話 相手がいて初めて人の評価が決まる
【Nest】――魔法及びそれに準ずる力を利用し、モンスターによる排除などを目的にしている機関である。
その歴史は古いもので平安まで遡るという。
古くは陰陽寮に由来しているとされるが、約1100年前飛翔物と共に各地で発現した異能――後に魔法と呼ばれたそれら力に対する対策部門が設立された。
魔法に対する適応能力、戦闘能力で選出されたものたちが集まるそこは無法地帯であった。
そこでは実力こそあったが構成員の多くが度重なる問題行動の数々を起こし頭の名前に鴉の字があったことから陰では【烏合之衆】と呼ばれていた。
そして頭が3代目になる頃には【烏合之衆】は独立。
政府との関わりは減少した。
その為、魔法以外、陰陽に関しての知識及び技術は残っていないとされる。
独立の際【烏合之衆】からとり、【巣】と名前を変え非政府組織として活動を始めた。
後に、近代化に伴い再度名前を【巣】から【Nest】に変える。
それまでの間【Nest】は僅かながらに発生する魔法的事象による政府からの仕事の斡旋を受け活動を行う。
そして来たる12月22日【Nest】の政府との協力関係を正式なものにし数日後公式に発表した。
雪原。
それは紅い毛並みを持っていた。
それは二振りの刀を持っていた。
それは銀世界で沢山の人間に囲まれ武器を向けられていた。
「アデゥシロイかエグいなありゃ」
【鶯】が人狼を見ながら呟いた。
「うん、そうだねぇ、でもぉ幹部が3人もいるから大丈夫だよぉそれにさっき【鳰】も呼んだしね」
隣で聞いてた【鳩】がそう返す。
大丈夫というのは、死ぬ事はないという意味で勝てるという意味ではない。
本来ならこんなものを目の前にして談笑など出来はしない。
今話せているのは【鳰】の部下が抑えているからだ。
そしてこちらが攻撃すれば拘束は解かれる。
よって一撃目は大規模魔法を確実に入れる。
はあ、と白い息を吐きながら待ち時間を使い【鶯】はもう何度も読んだ作戦書を再度確認するために、手元に視線を落とした。
ネスト本部。
ネスト本拠地である此処に再び俺と蒼介と紗奈は来ていた。
詩は留守番だ。
珍しく自分も行きたいと言い出さなかった。
言われても今回ばかりは行けないが。
「俺は特例として認められてんだよね?」
「ん?そうだけど、それは別として階級が決まらないと支障が出るからね」
「えー面倒っ」
「伊織君私もいるから」
「う、うん」
なんか駄々こねてる子供みたいになってないか?
ネストには階級があるらしい。
階級に応じて施設の使用許可やその他諸々が変わるらしい。
そして特例は階級関係なく様々な許可が降りる。
何故特例である俺が態々階級を取るかというとネストからの要請の際の目安などを測るためだ。
要は危ない場所には弱い奴は行かせられないって事だ。
と言うか適材適所。
「ここは?」
目の前にあるゲートは此処に来る時も使ったゲートと同じ外観であるが少し大きめだろうか。
「戦闘に関する事はこの先で行うんだ」
先に潜った蒼介に続く。
ちなみに此処に詳しいのは蒼介が1つ前のネスト加入試験に合格してネストのメンバーになっているからだ。
今回は蒼介が案内役である。
「なんか、凄いな」
この試験は本来筆記をパスした後受けることができるらしい。
俺らは特例ということもあるが建前としてアデゥシロイの戦闘で筆記によって求められる判断能力を確認したことになっている。
てっきり入った瞬間、俺に気づくかと思ったがそうでもないらしい。
実際俺と似たような動画は多数あったようだし、もうすぐ一年近く経つのもあって今は実力者といえばネスト内部の人たちらしい。
「此処にいる人は全員もう登録を済ませてある、君たちもね」
「そうなのか?」
「此処にはそもそもカードがないと入場できないんだ、普通は申し込みをすると仮発行されてそれで入ることができるけど伊織は既にカードを持っているからね」
「そうだったのか」
「後の案内はその端末でしてくれる筈だから二人ともがんばってね、僕はあっちで見てるから」
「ああ」
『あ、あーテステス、よし、えーこれから第5回の試験を始めたいと思いますのでエリア中央に集まってください』
スピーカーからアナウンスが流れる。
「伊織君行こ」
「ああ」
『えー集まったようなので早速始めたいと思います』
壇上に立った男が口を開く。
『えっと、その前に私は一級の砂井と申します』
ネストにおける階級はいくつかある。
幹部。
一級。
二級。
三級。
四級。
幹部は一級から選出されるため1つ下の階級とはいえ幹部と一級は同等の力を持つと言われる。
だからこそ、その男がスナイだと分かると空気が引き締まるように感じた。
『じゃあ、第一試験は簡単に魔力測定から上限は50までなので、それより上は測れないんでよろしくお願いいただければと、あと、平均が大体23くらいなんでそこ目指していただきます』
では、と言い案内に従い機器に進む。
「伊織君頑張ろうね」
「そうだな、と言っても魔力は変えられないけどな」
俺たちは列に並び、モニターに映し出される数値を眺める。
[22]
[31]
「27」
[19]
案外簡単に出るもんだなと思いながら眺める。
「伊織君、次私の番だから先行くね」
「ああ」
紗奈が手をかざしてすぐに退く。
〈計測が終わりました次の方はお進みください〉
言われた通りに進む。
〈台座に手を置いてください〉
案内音声に従い手を置く。
高いといいななんて考えながら手を置く。
[50]
「マジか」
〈計測が終わりました次の方はお進みください〉
音声でやっと我にかえり急いで退く。
「凄いね、伊織君」
「ありがと」
俺はスマホを取り出し見ていると言っていた蒼介に送る。
[どう?凄くね]
そこで俺のスマホが震える。
[あの測定器はまだ殆ど魔力に触れていない人達のためだから伊織の結果は普通だよ]
マジかよ。
いや、待て。
「なあ、紗奈お前は幾つだった?」
「私も50だよお揃いだね」
何故さっき褒めたのだろう?




