18話 一つ屋根の下
「ようこそ津田伊織」
「におさん?」
「そうだ久しぶりだな」
扉の向こうにいたのはにおだった。
呼び出したという事は何か用があるのだろうか。
「こっちだ」
そう言って部屋の中に入っていく。
つーか、会議室かよ。
多分会議室であっているはずだ、見慣れない機材が多くあるが。
なんか、凄そうな大人たちが座っている。
俺が入ると一斉にこちらを見る。
こえーよ。
「あ、伊織きたんだね」
「蒼介か、お前は何でいるんだ?」
奥に入ると蒼介がいた。
呼ばれたのだろうか?
「それも後で話すけど君も早く座ってよ」
「ああ」
俺は宗介の隣に座り、その横に紗奈が座る。
「じゃ、全員集まったんで始めます」
におがそういうと僅かに騒がしかった室内が静まる。
「今日人が出払ってて幹部俺しかいないんでさっそく、本題から」
全く知らなかったが、におは幹部だったようだ。
他の幹部がいないとなると何か大きなことでも起きてるのだろうか?
「本題は"津田伊織の処遇"だ」
「おれ?」
「わふ?」
びっくりしてつい声が出てしまった。
「ちょっとそこ黙れ会議中だ」
におに怒られてしまった。
「と言っても、形だけのものだ、既に処遇は決まっている」
どゆこと?
「津田伊織、既に受け取っているだろ?」
「……ああ、カードか」
先ほど支部で受け取ったカードを取り出す。
「そうだ、あれは【Nest】の一員となると発行される」
「一員?」
「ああ、既にお前は【Nest】に登録されている」
カードを持っているのはネストの一員だけという事は紗奈もか?
でも魔法は使えなかったはずだ。
少なくとも俺は知らない。
「紗奈知ってた?」
「うん、と言うか言ったよ」
あれそうだっけ?
「と言っても正式なメンバーではない、簡単に言うと転移ゲートを始めとした【Nest】でないと使用できないものの使用許可をやるって事だ」
「俺にそこまでしてそちらのメリットはあるんですか?」
「ああ、お前の2種の同時取得は確認されている限り【Nest】内部及びその他調査結果にはない」
二種というのは魔法の事だあえて伏せてるのだろう。
バレてたのか。
まあ、魔法を使う人が見ればバレても当然とも言えるが。
「その貴重性を加味してお前を特例として認める」
そこでにおのポケットが震える。
におはポケットから携帯を取り出す。
「――ああ、俺だ」
におは何か話すと舌打ちをする。
「急用が入った、ここで解散だ、日高蒼介、月宮紗奈はあらかじめ言っておいた津田伊織の対応、――」
におは次々に指示を出すと部屋から去っていった。
「で、俺への対応ってのは?」
「そうだったねそれじゃあまず帰ろっか」
「帰っていいのか?」
てっきりここで何かするのかと思ったが。
「多分帰ったほうが説明しやすいからね」
俺たちはゲートに向かう。
本部には複数のゲートがあるらしく1番近い先ほどのゲートともう一つの左側のゲートに入る。
右は出口で左は入口らしい。
「何だあれ?」
「何かの物資みたいだけど」
先程ゲートを通った時とは随分様子が違う俺らの向かうゲートとは離れているのでそうでもないが何か物資が積まれていて場所をとっている。
「それより邪魔にならないように行こう伊織君」
「うん」
俺たちは二つ目のゲートを潜り12番のゲートを潜る。
俺たちはそのまま外に出る。
「こうしてみると帰ってきたって感じるな」
俺は見慣れた景色を見てしみじみという。
「さ、伊織君、詩ちゃんも待ってるから帰ろ」
「あれここって」
「私の家」
「いや、それは知ってるけど」
「伊織君家住めなくなっちゃったから詩ちゃんと一緒にここで暮らしてたんだよ」
あの転移の光とは真逆な筈なんだが。
「そうか、悪いな詩の事まで」
「気にしないで、蒼介君もどうぞ」
「紗奈さん、伊織がいると伊織にしか話しかけないから僕空気で辛いんだけど」
「そうか?お邪魔しまーす」
というより、お前は友達が多いからちょっと話に入れなかっただけでダメージ受けるんじゃね。
「まあいいや、お邪魔します」
ドタドタ音が聞こえる。
詩の足音だ。
「お帰りー紗奈さん、蒼介さん」
「え、俺は久しぶりじゃん」
「お兄ちゃんは最近わざわざ遠出して会いに行ってあげたでしょ」
「いやいや、紗奈と蒼介ならもっと話す機会あっただろ」
「伊織君、私が言ってあげるから、おかえりなさい」
いや、違う。
そうだけど違う。
まあ、嬉しいからいいや。
「た、ただいま」
「お兄ちゃん、にやけててキモいよ」
お兄ちゃんの体力ゲージはドットだぞ。
紗奈に奥に案内され席に着く。
「改めて説明するよ」
蒼介が向き直る。
「じゃあ――」
「そう言えばネストってなんであんなに人いるんだ?あの日魔石が落ちてきた時から集めたにしては多く無いか?」
「遮らないでよ、元々【Nest】は魔法なんかの存在も知ってたらしいよ、何百年も前にも魔石が落ちてきたりしてその頃から代々って事らしい」
なんで、そんな昔からあんのにネストなんて横文字なんだよ。
「じゃあ、今度こ――」
「その前に大事な話があるの」
宗介の言葉を遮るようにして紗奈が喋る。
「喋らせてよ」
宗介が漏らす。
「なんだ?」
「伊織君は今日からここで暮らしてもらうから」
「いや、家がなくなったのは分かったけど、それなら蒼介とかの家の方が、な、蒼介」
「う、……ん、いや、それは無理だ、申し訳ないけど僕の家3人用なんだ」
承諾したと思ったのだが、紗奈が蒼介を見た瞬間捲し立てるように早口になった。
「それに伊織君、あっちにいた時は同じ家に止まってたじゃない」
「確かにそうだが」
「じゃあ、決まりだね」
そうして、俺の月宮家での生活が始まった。
完
明日からテストなんで多分金曜まで止まります。
すんません。
まだ何も勉強やってねぇ。




