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天より落ちし光の柱は魔石を運ぶ  作者: えとう えと
第二章 ちょっと長めの進級準備編
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17話 半年一秋


 いつか、帰れる日を夢見て。

 

 季節は移り変わり。


 春になり。


 夏になり。


 秋になった。


 ん?


 何で?


「12月頃にここに来て今は10月……あれほぼ一年じゃね?」


「わふ?」


 ちなみにわっふるはあれから変化は止まった。


 モンスターを狩って食べて寝て。


 モンスターを狩って食べて寝て。


 それの繰り返ししかしてないような気がする。


 魔法の練習とかはしたけどそれくらい。


「伊織君、準備できた?」


 迎えに来た紗奈が聞いてくる。


「ん、うん」


「わ、わふ」


 準備と言っても10ヶ月生活してた割にほとんどない。


 そもそも、首飾りに入れるから関係ないけど。


 全員で一箇所に集まると、紗奈が転移するための道具を出す。


「それを準備してたから遅くなったのか」


 約一年も掛かるってどんだけなんだ。


 売ったらいくらかな?


「ううん、違うよ、さっき説明したんだけど聞いてなかったの?」


「え、あ、ごめん」


「わふ」


「本当伊織君は私がいないとダメなんだから」


 なんか、表情が明るい気がするが申し訳ない。


「これはそこまで遠くまで飛べないのだから、長距離転移の可能な施設の完成を待ったの、それでも結構優先してもらったんだよ」


「そうか」


「わふ」

 

「だから、これからそこに行くよ」


 紗奈が道具を使用する。


 その場にいた全員が光に包まれ一瞬で景気が変わっ――


「うぷっ」


「わぷっ」


 酔ったかも、いや、あんな一瞬で?


「大丈夫?伊織君、わふちゃんも」


「あ、ああ」


「わ、わふ」




 俺たちは近くの街に入った。


 大人数なので少し遠足みたいで気恥ずかしいが少し楽しい。


 紗奈が立ち止まる。


「ここだよ」


「でっけ」


「わっふ」


 そこには横幅のある建物があった。


 ぱっと見めっちゃ頑丈な工場に見える。


 中に入る紗奈についていく。


 中は外観からはあまり予想がつきにくい高級感のあるホテルのエントランスような内装だった。


「カードの提出をお願いします」

 

 紗奈はカウンターに向かうと何かカードを見せる。


「はい、確認しました、月宮紗奈さま、つ、津田伊織様?!」


 え、俺の名前ダメなの?


 なんか、周りも騒がしいし。


「も、申し訳ございません、月宮紗奈様、津田伊織様、そして、転移被害に遭われた方ですね、許可が既に本部から出ております。入って左手のゲートから13番、0番の順で通っていただくと本部にご到着します」


 ゲートってので転移すんのか?


「それと、津田伊織様には【Nest】本部からカードの発行がされております」


 どうぞと言われカードを受け取る。


 ――――――――――――

 階級ーー特例・2

 津田伊織

 ▼

 ▼

 ▼

 [=13→0] [0〜47≠]

 ――――――――――――


「紗奈、ねすとってなんだ?」


「【Nest】とは日本国における魔法対策機関です」


 紗奈が答える前に受付の人が答えてくれる。

 

「そうすか」




 まず案内された大きなゲートを通る。


 ゲートはトンネル的な見た目をしていて扉とかはない。


 ちなみにここにいる前のところに改札のような、というより、ゲート式金属検知器の用な門を通っている。


 あそこを通る時カードを検出しているらしい。


 他のみんなは特別に発行された仮証明書を身につけている。


 仮と言っても随分しっかりした作りのカードだが。

 

 俺たちは言われた通り13番のゲートを目指す。


 ここには40を超えるゲートがあるらしい。


 つくりはさっき通ったやつを少し小さくした感じだ。


 いつの間にこんなのを半年で作れるようになったんだ?


 それもここは支部らしいから各地に。


「これ、歩くのだるくね?」


 そこまで、距離はないがどうにかならないのだろうか?


「うん、でも、急遽設置したって言ってたよ、これからちょとずつ整えていくって」


 沙奈が俺に返す。


 どうやらまだ仮設の状態らしい。


 13番のゲートを通り中央にある0番ゲートに進む。


 他のゲートはトンネルのように開けているがここは少し違うようだ。


 0番のゲートは大きさ、外見こそ変わらないもののそこには、何か結界のように透明な膜が貼られていた。


「どうしたの?伊織くん」


「いや、何だろうなと思って」


「これは魔法的な技術で、簡単に言えば関係者以外は入れないようになってるの」


「へー」


 半年篭っていただけでここまで色々と知らないことがあったとは。


「さ、伊織君行こ」


 そして、俺と紗奈、転移災害被災者たちは【Nest】本部への門を通った。




 特に壁に弾かれたりすることもなく無事皆が通り抜けられた。


 カードを持っていない人は入れないらしい。


「すげーな」


 先程までいた支部も立派なものであったが、本部はそれとは比べものにならなかった。


 取り敢えずまずはカウンターに行くようだ。


 カウンターでカードを提示し被災者受け入れの確認を取る。


 因みに、人数が多くなければ支部でもいいらしい。


 だが今回はその他にもいろんな理由があってのことだという。


 直ぐに担当の人が来てくれるようだ。




「お待たせしました、今回皆さんのご案内をさせていただく完戸(カンド)と、申します」


 ネストはみんな鳥の名前を冠しているものだと思っていたがどうやら違うらしい。


「今日はよろしくお願いします」

 

「ども」


「わふ」


 カンドさんは俺と一緒に返事をしたわっふるを微笑ましそうに見て言葉を返す。


「ええ、よろしくお願いします、と言っても今回は、書類など諸々の件は既に済ませられているので本当に道案内するだけですが」


 どうやら後はこの人についていくだけらしい。


「じゃあ、もう少しでみんなともお別れだな」


「わふ」


 10ヶ月も一緒にいたから少し寂しい気もするが。


「ううん、伊織君早いけどここでお別れだよ」


「うぇ?」


「わふ?」


「さっき言ったんだよ、まあいいけどね、本部についたら君を呼んできてって言われてるの」

 



 そんなこんなで、他のみんなとは別れ紗奈について行く。


「どこ行くんだ?」


「わふ?」


「ん、行けばわかるよ」


 そう言ってそのまま進んでしまう。


「……あった、ここだよ伊織君」


 紗奈が一つの扉の前で止まる。

 

 すると、ドアが自動で開く。


 ガラスではないので中は見えない。


 扉が開き切る前に


「……よく来たな」


 そんな声が聞こえた。

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