16話 妹ときどき雷
俺が飛ばされてからちょうど二週間、紗奈が来た。
紗奈はワッフルを膝に乗せている。
ワッフルは既に日に日に小さくなり見た目もポメラニアン見たくなっている。
大きさだけでなく見た目も。
謎。
「伊織君大丈夫?」
「大丈夫だけど、どうやってきたんだ?」
「わふ?」
正直自分が何処にいるかわからないが結構な距離がある事は確かだ。
「【鳰】さんに送ってもらったの」
「そうなんだ、あの人にはお世話になってばっかりだな」
「わふん」
聞けば生徒の保護などもしていたらしい。
それも数日前に全員家に帰し終え、家が消し飛んだ人への色々は市だか県が対応したようだ。
「そう言えば、詩ちゃんが、おばさんは大丈夫だって伝えてって」
「なら良かった、あの人何処にいるかもわからないから気になってたんだよ」
「わふぅ」
年中外国に居る叔母だが各地を転々としている為情報の得ようがない。
そもそも、俺のスマホは電池切れだけど。
「あと、詩ちゃんもこっち来るって」
「え、何で?帰りたいんだけど」
「わふ」
「伊織君が言ってたここの人たちを移動するには少し時間が掛かるみたい」
「えー、車とかですぐできないのか?」
「わふ?」
「ここまで来るのに転移の影響で車じゃ通れないんだって」
「そしたら、紗奈は何で来たんだ?」
「転移だよ」
「転移なんて使える人いるの?」
「わふぅ?」
この前の大規模なやつを見た俺からすると難しく感じてしまう。
「うん、正確には道具を使ってって感じかな」
「ふうん」
「わうん」
魔道具的なのがあるのだろうか?
「伊織君はまだここにいるの?」
「うん、ここにいる人たち食糧取れないしな」
「わふっ」
「【鳰】さんから食糧をってのはだめなんだよね」
紗奈がうねる。
「うん、出来るだけ魔力が取れるものを食べたいんだって」
「わっふ」
ここは多少転移の影響もあって、魔素濃度が高いがそれでも、テイリたちが、暮らしていた場所と比べたら低いらしい。
こちらの人間に比べあちらの人間は魔力ありきの身体構造をしているだけに魔力は欲しいという。
前に聞いた亜人と少し似ているようだ。
外見的特徴はさほど変わらないが、一応俺たちから見たら亜人にカテゴライズされるのかもしれない。
「じゃあ、私も二、三日泊まってくね」
「え?」
「わふ?」
「だめ?」
ダメ?と言われても。
「ダメではないけど、いいのか?」
「わうふ?」
「どうせ学校もないから大丈夫だよ、それに、時間が合えば定期的に私もこっちに来るから」
定期的に来るほど長いのだろうか?
「いいけど、何処に寝るんだ?」
「わふ?」
ここの家屋は留守だった家で貸してもらっている状態だ。
他に空き家と言っても思い出せない。
「ここじゃダメなの?」
上目遣いで見てきやがる。
「いや、不味くないか?ほら、男女だし」
「わふっふ?」
「でも、恋人じゃん、ね、決定、別に一緒の布団で寝るわけじゃないし大丈夫だよ」
「わ、わかった」
「わ、わふ」
「ねぇ、詩ちゃん、なんで僕に連絡来ないと思う?」
蒼介が机に突っ伏しながら聞く。
「うーん、お兄ちゃんだからなあ」
「そうなんだよねぇ」
蒼介は諦めたように息を吐く。
それに、スマホ使えないらしいしと思う。
紗奈が行ったはずだからかけようと思えば掛けれるはずだが。
「で、なんだっけ」
そう言えばと蒼介がはく。
「もう、魔法の話ですよ」
そう、二人は魔法についての話をしていた。
「そうだった、伊織の話だっけ、ええと、先ず伊織は炎魔法と闇魔法を使って刀にまとって戦うよね、あと、一応二つ魔法が使えるのは言っちゃダメだからね」
「うん、【鳰】さんも言ってたしね、それよりもっと最初から、確か石を使って習得したんだよね?具体的に何をしたの?」
「これも、あまり広めちゃダメだからね」
そう言って蒼介は詩に一連の流れを教える。
「ありがとございます、蒼介さん、あ、これから用事あるんで」
そう言って詩はさっていった。
詩は蒼介と別れた後、公園に行き大事なものを入れて持ち歩いているポーチから金にも見えるほど綺麗な黄色の魔石を出す。
既に学校にいた多くの生徒が家に帰り、家がない又は親が居なくなった生徒くらいしか残っていない。
魔力の操作に関しては、前に兄が読んでた、たくさんの女の子が出てくるファンタジー小説に出てくるやり方とそっくりだった。
伊織が一度でできたものなら当然一度でそれより精度の高いもの出す事は造作もない。
魔石の色から何となく属性はわかっている。
だが、一応。
「ステータスオープン」
目の前にウィンドウが現れる。
道具がないとできないと聞いたけど何故だろうか。
まあいいか、と思いながら。
即実践。
「おー」
詩の手のひらが光バチバチと音を立てながら電撃を生み出す。
電流は向きを変え様々な動物をかたどる。
兄が数十回練習してできる事を一度や二度試すだけで出来てしまう。
だが、それでも兄を慕い尊敬していた。
兄の裁縫セットに書いてあった強そうな龍を想像して動かしてみる。
「ほっ!」
手のひらの上で形を変え龍が生まれる。
確かに小さいがされど、それは龍であった。
そしてそれは、モンスターを誘き寄せるには十分過ぎるほどの威力があった。
詩はトタンをどけ穴から出てきたゴブリンに龍を向ける。
蒼介は場所は隠していたが詳細は話してしまった故に詩は理解した。
「いけ」
龍はゴブリンに触れるとあたりに電気を撒き散らし相手を灰にする。
「うーん、聞いてたより強くないなあ」
誰がどう見てもオーバーキルだった。
ドラゴンが描いてある裁縫セット?習字バック?買いませんでしたよ。
大人なんでね。
お前年齢はって?
5から上は数えてないです。




