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天より落ちし光の柱は魔石を運ぶ  作者: えとう えと
第九章 六月馬鹿編
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160話 ■11話 porte du démon


 あの日伊織が消えた。

 紗奈は思い出す。

 転移に巻き込まれたのだ。

 きっとそうだ。

 大人はもうあきらめろなんて言ってたけどきっと生きている。


 伊織が言っていたことを思い出す。

 異世界転生。

 又は、異世界転移。

 そういうものがあると言っていた。

 もちろんフィクションの話だ。

 でも、現実にダンジョンが現れて、モンスターが闊歩している。

 ないとは言い切れないし、むしろ可能性は高い。




 一年探した。

 様々な手がかりを。

 伊織の部屋にあった黒歴史ノートから世界各地のダンジョンまで。

 世界は未だ復興しきれていない。

【Nest】という組織が現れたようだが一歩動きが遅かった。

 モンスターこそ殲滅したが、動きが遅かったことに国民は避難を浴びせていた。

 モンスター殲滅時は只のボランティアで政府機関になったのは最近だというのにそんなことはお構いなしだ。

 紗奈も初めは避難しようとした。

 伊織を助けることができなかったことを。

 しかし、そんなことをしている暇があったら新たな手段を探した。


 見つからない。

 詩は引きこもりもう家から出てきていない。

 初めは一緒に探していたが限界のようだ。


 そしてある時見つけた。

 あれから更に一年。

 封鎖され入れなくなっていた屋敷。

 昼神の表札が返られたそこには陣が書かれていた。


 少しでも手がかりを見つけるために関係ないとしてもそれを調べていたが何とビンゴだった。

 しかし、調べていくうちに血統が関わることが分かった。

 修復改良はできたものの起動ができない。


 稲津家の力が必要らしい。


 蒼介の手も借りて【Nest】にシトイと言う人物がいることを知った。

 結解の要員で本来担当する方角と違うこと、そして稲津の方角を担当していることが分かった。

 怪しいと思い調べてみるとビンゴだ。


 紗奈は【Nest】に入り階級を上げて自然な形でシトイへ近づいた。

 それはもう彼女の本名である稲津美紀という名前まで聞き出すほどに。

 少々、トンナという男が邪魔だったが、自分が女であることが幸いして順調に進んだ。


 紗奈は言葉巧みにシトイに儀式の起動をさせた。

 現れたのは空間の神。


「貴様か?俺を呼んだのは」

「そうよ」

「おいおい、神にその態度かよ」


 紗奈の態度を見た空間神『ウティカイオス』は笑い転げた。

 神はものに寄るが例えば全知全能の場合知能を人間レベルに落とすことで会話を成立させる。

 だから、そんな風に笑うこともできるのだ。

 とは言え、空間神は全知全能ではないのだが。

 司るのは空間だけだ。


「まあ、いいや。面白れぇ。なんだ行ってみろ女」

「私を異世界に連れてって。あと伊織君と私二人ともこっちに帰ってこれるようにして」

「お前凄いこと言うな。自分だけでなく他のやつまで。――ほぉほぉ男か。いやあ男はなぁ」


 自身の権能を使用して伊織を検索する。

 この時の神の反応で伊織の異世界行きと生存は確定になった。


「あーでも、こんなに愛されてるなら望むところか?よし!いいだろう」

「ホントに?」

「ああ、嘘はつかねえ。でも対価はもらうぜ」

「わかった。伊織君と十分に触れ合えるのならそれ以外はいらない」

「おうおう。いうじゃねぇか!気に入った!そうだな魔法と右目の視力だな。まあ、魔力は残しといてやるよ。それに視力ならあっちでどうとでも出来るだろうぜ」


 そういうと紗奈の視界は半分黒く染まる。

 しかし、何の公開もなかった。


「じゃあ、お前とそいつに一回分の権能の付与と今からあっちに送ってやる」


 そして、神による空間移動が始まった。

 この時伊織が消えてから約三年半。








 ついたのはとある村。

 そこから情報収集をして伊織と思わしい少年が向かった集落の場所を聞き出した。

 近くにあると聞き喜んだ。

 この世界の言語からすぐに伊織が『アデゥシロイ』という名前だと気付いた。

 正直自分の名前で固有名詞の特殊な読まれ方をしなければ気付かなかっただろう。

 出会い頭に名乗らなかったのは間違っていなかった。


 集落に行くと伊織はいなかったが半年ほど前来たという。

 何でも元の世界の帰り方を聞きに来たのだとか。


 そして、神の話を聞いた伊織はある祠へ向かったという。

 そこは空間ではなく、何故か時間の神の祠だった。

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