157話 ■8話 un autre cirque
何故か六月になってエイプリル・フールネタを投稿する奴がいるらしい。
一応7話からのifルートです。
初めの方は昔に書いた奴をこのまま使ってます。ごめんなさい。
まあ、最初の方はそんな内容変わらないので飛ばしていいです。
天から降り注いだ光の中から現れたのは灰色の毛並みを持つ狼たちであった。
数にして二桁を超えている。金の目を輝かせ周囲を伺う。自分たちの脅威になるものはいないと判断しているのかゆっくりとあたりを見渡す。
暫く止まっていたが最初の獲物を見つけたらしくこちらに向かって……って、こっち来るのかよっ!?
「伊織!」
俺いつも思うんだけど何かあるときに名前だけ大きい声で呼ばないでほしいんだよね。ちゃんと要件を言ってくれなきゃ。今回みたいなのは分るんだけど、前に、遅刻しそうになって着席するときに担任に名前連呼されたから、何か用があるのかとそっちに向かったら早く着席するように担任が名前連呼してたなんて事があった。もちろん遅刻になったけど……
と、まぁ、狼のスピードは速いながらもそんなことを考えていられるぐらいにゴブリンを倒し身体が強化された俺ならば余裕で反応できる程度の速さだった。
とはいえ、階段で降りて間に合う速度なわけもなく俺は窓枠に足をかけ飛び降りる。
慣性をそのままに狼に刀を叩きつける。
刀で貫かれた狼は絶命する。これなら魔法で強化するまでもない。
さらに接近した狼を倒したところで蒼介が降りてきた。
「伊織、大丈夫?」
「ああ、っていうか、お前だけ何靴はいてきてんだよ?」
蒼介がちゃっかり靴を履いていていたのを確認して俺はそういう。俺は上履きだっていうのに。
「まぁ、伊織が間に合ったんだからいいでしょ」
そういいながら鎖で拘束して動けなくした狼を倒していく。ちなみにこの狼はグレイウルフとかいうらしい。
そんなこんなで途中刀が折れたりもしたが何事もなく狼を殲滅していったのだった。
「ふぅ、これで最後か……」
そういって最後の一匹に刀を刺した。
「……案外何とかなったね」
蒼介は服に着いた汚れを払いながらそういった。
「もしもの時は【鳰】さんに頼もうと思ったけどその必要はなかったよ」
「におさんって?」
聞きなれない名前に疑問を呈すと【鶯】の仲間だと教えてくれる。
「今回のことはいきなりだったし来てもらえない可能性もあったしね」
「まぁ、なんにしても一件落着……ってわけにもいかなっかったな」
幸いモンスターによって怪我を負った人はいないようだが先ほどまで校庭で授業をしていた中にはまだ残っている者もいる。一応まだモンスターが来る可能性もあるから校舎に入った方がいいだろう。
俺たちは校舎に入るように促すのだった。
「いやぁ~まいったなぁ」
「伊織調子乗り過ぎじゃない?」
「そんなこと……ないとは言わないが普段話しかけられすらしないんだからいいだろ!」
「はぁ……」
蒼介はあきらめたようにため息をつく。
だが、それも仕方ない。なんたって間地かで見ていた生徒たちにめっちゃ称賛されたからなぁ。こんなにちやほやされるのは初めてだ。
「じゃあ僕たちも校舎に戻るよ」
「おっけ~。これで校舎にまで入ったらモッテモテだろうなぁ」
そんなことを考えていてら蒼介がいきなり立ち止まる。
「ど、どうしたんだよ?」
まさか俺の態度にイラついたとか?
「蒼介~謝るからさぁ」
振り返った蒼介にそういうも反応が鈍い。
「伊織後ろ」
「……後ろ?」
なんだかわからないが後ろを見――
「な、なんだあれ」
光の壁――いや、柱か?狼が現れた時のような、それよりもっと、比べ物にならないほど大きな光の柱。
「い、伊織すぐ中へ!」
先に我を取り戻した蒼介が声を上げる。
「ああ」
俺もすぐ走り出し離れようとするが……
「止まった?」
止まった。校舎をも巻き込むかに見えた光輝く円柱が膨張を止める。
何で止まった?いや、それよりも地面が消し飛んでるし結構危ないのか?
「伊織、これ……」
「わかってる。結構やばいんだろ?触ったりしないから安心し――」
瞬間、光の柱が近づいて見えた。もしかしてまた拡大を始めたかと思ったが違うようだ。
近づいているのは光ではなく俺の方。証拠に足も浮いている。
突き落とされた。
誰に?いや人じゃない。モンスターだ。
まだ潜んでいやがった。
膨大な魔力の塊を前にしてモンスターの感知を怠っていた。
視界に端で姿をとらえる。さっきの狼のようだ。
このままだと確実に死ぬ。というか何してもだいぶは免れそうにない。
なら、最後に一発入れてやる。
突撃されたがこの状態なら振り向きざまに刀を刺せる。
「ッ――死ねッ!!」
その瞬間犬に攻撃したと同時に意識が途切れた。
青臭さが鼻を刺激する。
そして、なんだか気持ち悪い。
目を開けると一面空だった。
「ここは」
草原。
そういうのがしっくりきた。
数日前に雨が降っていたのか、土の草のにおいが鼻につく。
まあ、そんなことよりも今は生きていたことに胸を降ろす。
しかし、心が落ち着きふと冷静になると不安が襲ってくる。
だがそうもしてられないと思いあたりを見渡す。
先ほどの狼の死骸にそこに刺さった刀。それから――
「鎖?」
鎖……というか鎖の破片だ。いや、そこじゃない大事なのはこれが氷でできているということ。
大方俺が落ちそうになるのを助けようとしたが失敗したってところだろう。
「くそ、スマホも繋がらないし。見たところ何もないし。最悪だな」
俺は刀を回収するために足で死骸を引きはがす。汚いがまぁ、仕方ないだろう。
仕方ない。
そう思って歩くことにした。
そして今に至るわけだが。
「金がない!?」
「いや、まあ、はい」
道が見えてきたあたりでここが日本でないのが分かった。
馬が走っている。
魔物もいたから異世界だろう。
日本にいて魔法が使えるようになったんだ異世界に居てもおかしくない。
しかし、仕方ないと思いコミュ障でありながら話しかけてみたがこのざまだ。
この馬車は現代で言うバスみたいなもので定期的に、今回で言えば近くの村から王都まで走ってるんだそう。
しかし、そりゃあ金がなきゃ乗れない。
「う~ん」
そう唸っていたおっさんだが俺のことを見て提案をしてきた。
「しかたねえ今回は特別に乗せてやるよ」
「い、いいんですか?」
「ただし!」
おっさんは手を突き出す。
「俺もただで乗せたとあったらメンツにかかわる。他のやつに無料でって言われても困るからな」
「まあ、そうでしょうけど」
「だから、だ。お前のその上着を俺にくれないか?」
「上着ですか?」
俺は着ているブレザーを見る。
確かに服を売るのは異世界転生系の醍醐味だ。
多分高価に違いない。
「もしかして、これが高く売れるとか?」
「あ?いや、無理だな。そんな服王都にいきゃあたくさんある」
「そうなんすか」
「でも今回は特別に俺の好意で本当は馬車代のもならねーがそれを代金の代わりにしてやる」
残念と思っていたがいい人で良かった。
是非と言って乗らせてもらった。
長くするつもりはないのできっとすぐ終わります。
3話くらいで
多分。




