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天より落ちし光の柱は魔石を運ぶ  作者: えとう えと
第八章 赤翡翠高校編
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143話 人の〇〇の〇〇は穴二つ


 蒼介は簡単に説明を始めた。

 伊織が倒れたことや芥生やイオを呼んだこと、あらかた話したところで芥生が口を開いた。


「俺に関しては問題ないぜ。本来であれば喰魔のあれこれは口蓋禁止だがここにいるのは関係者だけだ」


 喰魔の研究については行っている本人であるため何でも知っていたがいえることも限られている。

 とは言え、此処にいるのは喰魔の存在を知っているもの、いや、蒼介と紗奈は知る権利どころか津田伊織とこれから付き合っていく上で知らなければならない。


「【Nest】であっても喰魔の存在を知らないものもいるくらいだ。この情報はトップシークレットと言えるが、蒼介のおかげで人避けもばっちり俺はいつでも話せるぜ」


 けど、と芥生は続ける。


「まずは、あなたたちともぜひ自己紹介を」


 そういって視線を送ったのはイオと【鳩】である。

 正直な話、二人の正体は知っていたが、体裁を整えるために一応自己紹介をしようと考えていた。

 面識がないため、話をする機会を作ろうとしたのだ。

 一度話をした方が、話したこともないような相手の話よりは割って入りやすいし、その方が円滑にことが進むと考えたからだ。

 ちなみに、芥生はこの二人を狙ってない。

 どう見ても相思相愛なのだし入る余地はない。

 それに、百合の間に挟まる気は毛頭ない。

 三人でした結果そういったシチュエーションになるのは構わないが、この二人のように完璧に完成された空間に入ることなど叶わなかった。


「じゃあ、芥生さんの自己紹介は盗み聞き見たいであれですけどさっき聞いたので私から」


 医務室の前で聞いていた(紗奈に絡んでいたところも)イオはそう提案する。

 これ以上伸ばしては視界の端に映る紗奈が限界そうだと思いそういった。

 紗奈も、結果的に話がスムーズに進むのを分かっているからか黙っているようだが、傍から見ても見ていられなかった。


「喰魔石を持ってます。沖田イオです」


 イオは黒に紺色がメッシュのように入った髪と桃色の瞳を揺らす。

 そんなイオを【鳩】無心でバックハグをして撫でている。


「【鳩】さんの挨拶して」

「【Nest】幹部の【鳩】、今日は付き添いだから気にしなくていいよぉ」


 イオに言われてやっと喋った【鳩】はそういう。

 本来なら気にしないということはできない状況だが、この場にいた全員はすぐさま意識外へ追いやった。

 紗奈と蒼介は気を配るまで余裕がなっかたため簡単ではあったが、芥生に至っては全く幹部である【鳩】に気おされていないことから相当な実力がうかがい知れた。

 とは言え、この中で最も簡単に意識外にはずしたのはイオであったが。

 イオはもう完全に慣れてしまい特に思うところもなかったためかすぐに実行した。

 当の本人は自覚なしだが相当に凄いことをやらかしている。

 ちなみに【鳩】はもう完全に思考停止しておりイオの髪をスンスンと嗅いでいた。


「じゃあ、始めさせてもらうが正直すぐにこれだって奴はわからねぇ」


 芥生はしょっぱなからそんな弱気に見えることを言う。


「こいつの状態を聞くに、魔力は人並み外れてあって恐らくスキルもまだ残っている。そんな状態ならまだ魔石のせいだと決めつけるのには早いくらいだ」


 しかし、様々な回復手段が効かないとなると喰魔である可能性も随分と高くなる。

 まだよくわからない状況だ。

 故に。


「何かこいつが倒れる直前とか、もっとその前からでもいいけど変わったこととかないか?」


 とにかく、まずは分からない以上少しでも津田伊織自身の情報が必要だ。


「伊織君試合が終わった後おかしかった」


 初めに口を開いたのは紗奈であった。

 一番伊織と一緒に行動している紗奈がそういうのは当然ともいえた。


「何かが聞こえたようなそぶりをしてあたりを見渡してた。どうしたか聞いたら何でもないって言われちゃったけど」


 そんな何気ない行動忘れてしまいそうなくらいだが紗奈は覚えていた。

 本当に何かを聞いていたかは周りからは分からなかったし、何なら周りを少し見た程度にしか見えないその動作だが紗奈は正確に記憶して、更には行動の起因になるものまで予想していた。

 それは、普段から伊織の一挙手一投足を見て観察していたせいかとも言えたかもしれない。

 紗奈は彼本人でも気づいていない癖を正確に読み取りある程度は行動や真意を読み取ることができた。

 喉が渇いたとか、そんなことまでわかるのだからあの時の行動も予想がつくのだ。

 最も、普段は伊織に見とれすぎて飲み物を買ってくるのが遅れたり気付かなかったりしてしまうのだが。


「音か……」


 何かあったかと考えてみる。

 芥生自身喰魔の所持者である、自分のことを思い返してみる方が早い。

 

 その時点で芥生はすでに紗奈の話を真に受けていたが、反対に蒼介も薄い根拠を信していた。


 芥生はすでに紗奈の異常性を感じ取り、蒼介は蒼介で普段から彼女を見ていた結果だった。


「あ!わかるかもしれません」


 しかし、その答えをはじめに出したのはイオであった。

 二人ほどではないもののほかに手がかりもない以上考えるしかないと思っていたところに思い出したのだ。


「やっぱり、喰魔石関係ありますよ」


 イオはそう断言した。

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