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天より落ちし光の柱は魔石を運ぶ  作者: えとう えと
第八章 赤翡翠高校編
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142話 52日の魔法屁一つ

いつもより文が変ですがご了承を。


 喰魔石の所有者で現在確認されているのは七名。

 そのすべては【Nest】に所属している。

 一極集中している理由は日本国内にしか現れることがなかった点と、他の国と違い、日本国内にあるこの手の組織は【Nest】が実質的に管理しており【Nest】に集まるようになっている。

 世界中の上空から魔石が降った中、それらの反応が見られたのが日本国内だけであったため恐らく海外では出現してない。

 なぜ、日本上空だけで出現したのかは分からないが、実質すべての魔法対策組織にの中で戦力が集中していると言わざる負えないだろう。


 とはいえ、喰魔石というものは全力としての価値ではなく、爆弾としての価値が高いため、戦力だけで見た時に他組織に勝ち目がないわけでもないだろう。

 それで言うと、【Nest】内だけでも単純な戦闘においてならば喰魔石所有者に勝るものは多くいる。

 単純に喰魔石の所有者が強いのなら幹部は全員所有者だけになっていたかもしれない。


 しかし、喰魔石は十分に各組織が警戒する程度には危険であった。

 一度喰魔を呼び起こしたら基本的には対処しようがないのだ。


 そんな、喰魔を持つものが先ほど言ったように七人。

 内訳は七人の内四人が学生という比率になっていた。

 それ以外の三人には【Nest】のトップ【鴉】が含まれる。

 とはいえ、この三人で現在目に見えて活動しているのは【鴉】だけである。

 他の二名の内一人である如月風都希に至っては【Nest】幹部である【鳰】の術により封印されているため活動も何もないが。


 そして四人の学生の内訳は、青鷺高校三年色葉葉月、黄鶺鴒(キセキレイ)高校二年沖田イオ、赤翡翠高校一年津田伊織、同じく赤翡翠高校三年芥生連。

 この四名は【Nest】が敵刑している学校に所属しており、同行が把握しやすくなっている。

 沖田イオに関しては不登校気味で碌に学校に出てこないが、四六時中、幹部である【鳩】が付きまとっているので安全面では問題ないだろう。

 とは言え、学業に対して真剣に取り組んでいるのはこの四名の中で一人だけなのでそう目立つわけでもないが。


 成績生活態度ともに良いのは色葉くらいなもので津田伊織は主に成績、芥生は生活態度が問題視されていた。

 特に芥生の方は手に負えないほどの生徒で魔石所有者でなければとうに退学になっていたような生徒である。

 いや、だからこそ滅茶苦茶しているともいえるのだが。


 実際のところ本人は喰魔という免罪符があるのをいいことに何でもやらかすが、学外での素行はいたって普通であり問題はないようなのだ。

 まあ、喰魔のことを免罪符にしても他人に害意を向けることはないため弁えてはいるのだろう。


 そんな芥生は後輩からの電話で事情を聴いて医務室に来ていた。


「ちーす」


 軽く挨拶をしながら入っていくと、視線が集まる。

 気が付いたここに呼び出した張本人――つまり蒼介が立ち上がり挨拶をしてくる。


「すみません急に呼び出して」

「いや、いいよ。いつでも力になるって言ったのは俺だし」


 そういって、蒼介との出会ったときに言ったことを思い出す。


「イケメン同士仲良くしようぜ」と言って、連絡先を半ば強引に交換したのだ。

 ちなみに言葉通り、芥生はイケメンである。


「あれ、可愛い女の子もいるじゃん」


 蒼介の向こうに見える女子生徒を見つける。

 紗奈である。伊織を見つめていてこちらを見ようともしない。

 紗奈はそんなことに気付かないほどに伊織のことを考えていた。

 

「君名前は?」


 そんな紗奈に芥生は近づいてくる。

 気付いていない様なので近くで声を掛けに来たのだ。

 流石に紗奈も気付いたようで反応するがこちらを見ない。


「俺は芥生連よろしく」


 馴れ馴れしく話しかけるその笑みにはそれだけで落ちてしまいそうな感覚さえある。


「月宮紗奈です」


 紗奈にも挨拶するくらいの余裕があったのかは分からないが自己紹介をする。


「そうか、いい名前だね」


 そういって、肩に触れようとした手を紗奈は払うまでもなく躱す。

 そこで、相当な手練れだと芥生も気付く。

 今のは別に手練れじゃないと躱せないとかそんなものではなかったが動きが明らかに洗練されたものだった。


「ほう」


 思わず関心をるような声を洩らす。

 つい、来た要件を忘れ面白いと感じた。


「紗奈ちゃん。俺と……」


 そこで追撃を掛けようとして気付いた。

 この、紗奈という女が病床で横たわる男に向ける異常なまでの思いを。

 愛か、依存か。

 とにかく、この女はこの男以外には、いや、性別の枠を超えて興味が本当の意味ではないのだと気付いてしまった。


 そこで彼は完全に切り替えた。


「ごほん。改めて自己紹介をさせてほしい。俺は芥生連、喰魔石の保有者であり津田伊織君の助けになれるかもしれない男だ」


 そういった瞬間初めて紗奈は芥生を見た。







「この人は僕が呼んだんだ。力になってくれると思ってね」


 黙っていた蒼介は仕切り直しとばかりに喋りだした。

 さっきのやり取りの間黙っていた蒼介はやっとかと思いながら話始めた。


 蒼介自身、芥生の性格を知っていたからこそ黙っていたのだが。

 この男はチャラいくせに意外と誠実で恋人がいる女はもちろん、好きな相手がいる女には手を出さないのだ。

 とは言え、そんなことをして我慢できているのは、態々横取りに行くまでもなくこの男の周りには女が集まるためだ。


「ああ、この学校が【Nest】内で一番喰魔石の研究が進んでいて、研究対象が俺なわけだから俺が一番知ってると思うぜ。大船に乗ったつもりで安心してくれや」

「よろしくお願します」

「任せとけ。あと、さっきは悪かったな」


 潔くいいよったことを謝る芥生。

 しかし、紗奈は興味がなさ過ぎて気にしていなかった。


 とそこで扉のスライドする音が聞こえてくる。


「あーえっと、そろそろ入っていいですか?」


 イオだった。

 ちなみに抱きかかえるようにして【鳩】がついている。


「どうぞ」


 蒼介はすかさず椅子を出して座らせる。


「じゃあ、改めてですが、お二人の力を貸してください」」


 蒼介は頭を下げた。

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