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天より落ちし光の柱は魔石を運ぶ  作者: えとう えと
第八章 赤翡翠高校編
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140話 星頼んで地へ落ちる


 津田伊織。

 入学してから、いや、それ以前から凄い奴。

 中学の時は自分より下の存在だと勝手に思っていたのにそうでなかった。

 授業で見た体術、あれを見た時確信した。

 こいつは、自分とは比べ物にならない人物だと。


 そして、それで知った気になっていたが受験時、その認識の甘さに気付いた。

 比べるとか比べないとか、そんな次元の話ではないと。

 そんな事か考える暇があるのならば自分は努力を続けるべきだと、そう思った。


 それはきっとここにいる三人が同じ思い。


「おい、いいのか上木?」


 上木は隣から声をかけられ、百目鬼を見る。

 百目鬼の視線の先には試合を終えて出てきた伊織だ。


「良くないけど、行くわけにもいかないだろ」

「今は、私たち満足に動けないしね」


 上木の答えにヒヨウがそういう。


「ここにも、態々ついてきてるみたいだし」


 そういって、見る先にはこちらを忌々しそうに見る数人の生徒。

 学年は様々だが主に一年生で男女問わず四方八方に分散している。

 監視されているのだ、津田伊織に近づかないように。


 彼らは言うなれば津田伊織のファンである。

 と言っても、少々行きすぎてはいるが。

 彼らは津田伊織に自身の理想を押し付ける者たち。

 故に彼らは津田伊織に()()()()()人物しか近づけない。

 まあ、単純に言うと強くなければ認めないというものだ。


 最初に接触があったのは入学式でのことだ。

 式の終了した後、呼び出され告げれらた。


『津田伊織には近づくな』


 初めは気味が悪いなとしか思わなかったが、忠告を無視して近づこうとした時、攻撃をされた。

 魔法の類は許可なく使えないはずではあったが、抜け道を使ったのか彼らはシステムに引っかかることなくその力を解放した。

 こちらは、力を使えない、そんな状況なのなら答えは明白、一方的であった。

 それなりに基礎体力が強化されていると言っても相手も同じ、そのうえでの力の使用なのだから勝てるわけがなかった。


 その時から、彼らは付きまとうように監視しだした。

 どこにいても、学校中に協力者がいるようで逃げ切ることはできなかった。


 そんな時、不思議に思ってか、蒼介と紗奈が事情を聴いてきた。

 そして、力になれるかもしれないと言ってきた。

 確かに彼らの認める二人の言うことには聞く耳を持つかもしれない。

 それに話を聞くと、津田伊織のファンの組織というのは、もう一つあり、そっちは紗奈が管理しているらしく、彼らにそれを使い潰すことは可能だという。

 蒼介は知っているようであったが、それでなお引いていた。

 しかし、この二人に頼れば解決するそう思ったが断わった。

 これはすでに決めていたことだった。

 伊織と実力差があるのは本当のことなのだ、それならば強くなり、認めさせてやろうと三人で決めていたのだ。

 そう説明すると、ならばと、二人は静観を貫くと言った。

 それから、三人はさらなる努力をしている。


 ということで、暫くは動けないのだ。


「まあ、人間関係自体は問題なくてよかったよ」

「確かにな」


 そういえばと三人は思い出す。

 何かと鬱陶しい彼らではあるが、津田伊織に近づく意思がなければ監視以上のことはしてこないのだ。

 変にハブられたりしない点はありがたい。


 そんなことを思いながら見た彼は更に強くなっていた。


「頑張らないとな」

「何をいまさら」

「そうだね」


 三人はヘタレることなく気合いを入れなおした。








 前回のあらすじ!

 なんやかんやあってなんやかんやあった末に俺は勝った。


 ということで少し休憩。


「腹減ったな」


 飲み物は蒼介からもらったが食べ物がない。


「私買ってこようか?」

「いいよ。紗奈は試合あるだろ」


 そこまで任せるわけのも行かないしな。

 誰かさんのせいで試合がすぐに終わってしまう関係で出番が来るのが早いようなので買いに行っている間に試合が始まってしまうなんて可能性はなくもない。


「じゃあ、行ってくる」

「行ってらしゃい」

「うん。まあすぐ戻ってくるけどな。あ、あと試合頑張って」


 思い出したようにそういう。

 俺が返ってくる前に始まっても良いように今言っておこうと思ったのだ。








 混んでると言えば混んでいて混んでないと言えば混んでいない感じの道を歩く。

 仰々しく並んだ屋台はなんだか文化祭を思わせるが今日は只の新人戦でしかも数人しか出ないので大げさにも感じる。

 人の数は新人戦としてみれば混んでいるように感じるが、全体の人数から見ればそうでもないような気がする。

 まあ、大会に興味のない陰キャ君たちは大抵クラスにいずらくこういうところでサボってるんだよなあ。

 とはいえ、体育祭ではないのだから見る義理もそこまでないのだが。

 しかし、志高いここの生徒たちはサボりに来た風ではないものの方が多い様だ。

 俺と同じく少し抜けてきたものが大半を占めている。


 観察もそこそこにして、何か買いに行こうとしたところでまたさっきの感覚が俺を襲う。


 ――ジッ―ジジッ――


 ノイズのような音。

 今度はよりはっきり聞こえる。

 しかし、聞こえるという代償は大きいのかさっきは感じなかった激痛が走る。

 身体がむしばまれるような感覚。

 どこが痛いのかさえ分からない。いや、だた単に全身が痛いのか。


 よくわからないがとにかく休めそうなところを探す。

 こんなところで倒れてはたまらない。


 頭が回らないが考えるまでもなく休めると主張するようなベンチを見つける。

 ベンチに倒れこむようにして身を預ける。

 もう立ってなんかいられなかった。


 激痛と共に意識が沈んでいった。








「もうすぐだね!」

「楽しみ」


 観客席は盛り上がりを見せる。


「おい、遅いぞ」

「ごめんごめん」


 ここにいるすべての者がこの試合を待っていた。


「俺は、あいつがやってくれると信じてる」

「俺たちの星ってところだな」


 勝手に思いが馳せられる。


「こっちに賭けるぜ」

「俺はこっち」


 勝手に賭けられる。


「俺はあいつが初めて世間に出た時からファンなんだ」

「おいおい」


 期待が塵のように積る。


「この日を待ってたまである!」

「大げさだろ」

「いやいやいや、ホントだって」

「なんたって、この次の試合は、円卓最強佐梁千里対№1津田伊織だぞ」


 皆の思いや期待がこの試合に注目する。


 塵の山には罅が微かに入っていた。 

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