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天より落ちし光の柱は魔石を運ぶ  作者: えとう えと
第八章 赤翡翠高校編
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138話 蛇の確殺


 凄いな、なんて思いながらぼうっとモニターを眺める。

 紗奈が映っているがすでに引き返してきている。


「早え」

「わふう」


 俺の腕に抱かれたワッフルも同感のようだ。

 そういえば俺の近くにいるのは珍しい気がする。

 大抵、紗奈か詩に抱えられていたからそう感じるのかもしれない。

 それに最近はすぐどっか行くしな。

 学校の許可を得て実のところ毎日一緒に行動しているのだが、気が付くといなくなっている。

 探してみると大抵女子に可愛がられているのだが、こいつもしかして……

 うらやましい、とはならない。陰キャだと話しかけにくいのだ。

 ということで結局自分で帰ってくるまで待つしかないのだが、紗奈が見つけた時は拾ってきてくれるのでありがたい。


「わふ」

「確かにすごかったな」


 なんとなくで意思を読み取って会話する。

 確かにさっきのはすごかった。

 なんか、開始した瞬間に相手の人を囲むように鎌みたいな月魔法的なあれでザックっとやってたのだ。

 そういえば、蒼介の時も思ったけどついにみんな無言で攻撃し始めたな。

 というか、いつまでイチャついてんだ?

 未だに戻ってこない蒼介はどうせゆあさんとあんなことやこんなことをしているのだろう。

 ん?あんなことや?こんなこと?

 え?マジでしてるの?どうしよ?すっげー


「紗奈さんも魔法展開速度が速くなったね」

「うわっ」

「どうしたの?」

「なんでもない」


 いきなり現れた蒼介に驚きながらも様子を伺うとなんかそういう感じのことはしてないように見える。

 それはともかく。


「お前も無言で発動してたけど」

「ああうん、少し練習したんだ。ゆあにかっこいいところを見せたくてね」

「へー」

「とは言え、威力も出ないから基本的に反応速度以外にとりえはないし。普通に登録したものの方が使いやすいから戦闘では今まで通りにやるけどね。紗奈さんも似たような理由でしたんじゃない」

「へー」


 絶対、此処までのことができるってばらさない方がいいだろ?

 いざとなった時も警戒されてなければ強いだろうし。

 いや、なんかすがすがしいからいいけど。


「伊織もそろそろ準備した方がいいんじゃない?」

「ん?あ、もう俺の番か」


 蒼介に言われて思い出す。

 なんか、なにかに気を取られるとすべての事柄が抜けるんだよな。

 え?そもそも記憶してすらないだろって?うるさいやい。







 まあ、なにはともあれ俺の番ということで早速向かうことにした。

 というか、すぐに行かないと結構ギリギリだった。


 取りあえず駆け足程度で向かってみる。

 本来なら地面を一蹴りすれば一瞬で移動できるが、屋内で全力疾走する奴がいないように、こんなところで周囲に影響が出るようなことはするはずもなかった。


「お、間に合った」


 よかったと思いながら定位置に着く。

 ちょっと迷っていると主審の人が教えてくれた。


「随分余裕なんだねぇ?」

「え?余裕あるようには見えないだろ?こっちは遅れそうになってんだぞ?」


 バカか?と思いながら返してみる。

 いつもなら、しゃべりかけられればキョドるがいきなりで反射的に答えてしまった。

 やばい奴には反応しない方がいいのに。

 ホントにやばそうだし俺が小走りで来ているのは見えただろうにその事実に気付かないとは。

 というか、こいつ誰だと思ったけど対戦相手か。


「調子に乗り過ぎてるんじゃないか?」

「いや何が?」

「自分が人気だからってこっちを下に見て、キモイんだよ!」

「いやマジでなんだよ?」


 なんかやだなこの人。

 そもそも、俺たちの間に面識はないんだが。


「というか、名前も知らないのにキモイはないだろ」

「は?俺を知らないのか?俺は円卓だぞ?」

「あ、そうなんだ。えっと何君だっけ?」

「陸田多比だ。覚えとけ津田伊織!」


 謎の啖呵をを切った所で合図がなる。


『始め!』


 そういえば今回はいつもと違う戦い方をしてみようかと思う。

 紗奈や蒼介の試合を見ていて思ったのだが先手必勝のようなところがあるように思う。

 俺が普段しているのはモンスター相手であるため、普段の攻撃は殺傷能力の高い刀などの攻撃が多い、しかし今回の様な人間相手の戦闘、それでいて体力ゲージを減らすことで勝敗を決めるのならば、わざわざそんな方法をとる必要もない。

 まあ、要は思い出したのだ、すっかり忘れていたのだがよくよく考えてみれば俺が最初に使った魔法は『ファイアーボール』的な奴であった。

 今では刀にまとわせてでしか基本的に使用してないが飛び道具的なものとして使ってみてもいいのではないかと思ったのだ。


「それにどうやら刀に警戒がいっているみたいだしな」








 陸田多比は腹が立っていた。

 その原因は対戦相手である津田伊織にある。

 多比にとってこの手のタイプが一番嫌いなのだ。

 自分に力がないくせに、人の威を借りイキっている奴が一番キモイ。

 自分の方が何倍も努力してるのに津田伊織は可愛い彼女もいていつも何も考えないでのんきに生きている。

 なんで、頑張っている自分には誰も見向きもしないのに、こんな運だけが良くてたまたま周りに恵まれただけの屑がちやほやされるのか意味が分からなかった。


 受験時に一瞬でモンスターを倒していたがあれも恐らく自分の力ではないのだろう。

 ダンジョンでたまたま手に入れた武器で楽々と倒しているだけで本人は何の修行もしてないに違いない。


 でも、だからこそ、こいつの警戒すべき点は刀だけ。

 刀さえ使わせることがなければ確実に勝てる。

 チートを持っていても本人は雑魚なのだ。


 だから速攻で決めようと姿勢を低くする。

 すぐに刀を対処できるように備えるのだ。


『始め!』


 よし、今だ!開始直後に刀を抑える。


「それにどうやら刀に警戒がいっているみたいだしな」


「は?」


 なにが、それになのかは分からないが随分と余裕そうな姿に腹が立つ。

 ムカつく。

 しかし、こちらは厳しい修行を経てここに立っている、動きを止めることなどしない。

 だから、もうすでに手は刀に届く。


 ——バチッ!


 瞬間、触れた刀から電撃のようにはじかれる。


 何をされた?

 いや、それより刀を抜かせることは阻止しなければ。


 そう思い刀に目を向けるが、手は添えられていなかった。

 代わりとばかりにその手は自身の眼前に。


 次の瞬間、凄まじいほどの熱をはらんだ真っ赤な炎が体を飲み込む。


 アツい、アツい、アツい、アツいィイイ!!!!


 なんだこれは?おかしい。これは。この状況はおかしい。

 本来なら、こんな苦しみは伴わない。だって、この大会では攻撃を受けても痛みはないはずだ。

 その証拠に、発狂するほどアツい腕も、ただれるかと思うほどアツい足も何ら変わった様子もない。

 だから、この焼けるような肺の痛みも本物ではないはずだ。

 なら何故?

 わからない。

 いや、そんなことはどうでもいい。

 そんなことより今は、アツくて。

 アツくて、死にそうだ。 

あいつなんかがと思うことってあるよね。

主人公の場合ほんとに苦労してないけど。


あと、バカなので皮肉は通じません。

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