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天より落ちし光の柱は魔石を運ぶ  作者: えとう えと
第八章 赤翡翠高校編
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134話 天を知るものは天を怨みず


「それで、今日は何なんです?」


 【鳰】はいつものようにそう告げる。

 相手は雑面をした少女だ。

 一年前、【鳰】はこの少女から言われたことを思い出す。


『あなたは死にます』と告げられた時のことは覚えている。

 なにか喜びと悲しみが同居したような表情を作り、そういわれたのだ。


「今日はですね予言ですよ」と彼女は笑う。面で隠れているのにそれは良く伝わってきた。


「予言と言ってもオレが死ぬってやつ聞いてからそれが最後かと思ってましたよ」


 転移災害の日を当てた彼女が死ぬというのならばすぐに死ぬと考えていたためまさかまた予言を聞くとは思っていなかった。


「でも、もう一年たってもう少しで一年半たちそうですが……」


【鳰】は言葉を告げられてからの大まかな日数を頭のカレンダーをめくり数えてみる。

 別に信じていないわけではないのだが、どうにも一年も待たされることになると少し疑問に思う。


「ああ、もうそんなに経ちましたか……」と彼女は思いをはせるようなそぶりを見せる。生憎はせるそぶりはなさそうではあるが。


「室内にいると時間の感覚がわかりにくいんですよ。それで、予言なんですけど【鳰】さんが死ぬことに関してです。日にちがわかりました」


 立て続けに言われて理解が遅れそうになるが何とか追いつき、理解する。

 彼女が言ったのは【鳰】が死ぬであろう日分かったということであった。

 彼女の予言は精度が高く当たるものの1日2日ずれる可能性もある、それを視野に入れておかなければならない。

 だがしかし、逆に考えれば日時以外のすべては的中するということだ。

 死ぬ覚悟とは言えないが、あの日からそういう類の覚悟はできている、そう思い【鳰】は正確な情報を頭に入れるため、耳を傾ける。


「日時は……ああ、ちょうど前に聞いた七祭と同じ日ですね」

「七祭というと確か――」


【鳰】は以前少女に教えた情報を思い起こすとともに、そういえば七祭への参加をかけた『新人戦』へ津田伊織が出るとの情報もあったと思い出す。

 日高蒼介とは仕事の関係でそれなりに会うが彼とはあまり会えていないとふと思う、とはいえ、数か月に一度の周期であってるため相手の方は結構な頻度であってると思っているが。

 そんな考えがよぎるが今はそれは関係ないなと思いなおす。

 自分の命にかかわる話を聞き流すわけにもいかない。


 彼女が面の下で再び口を開く。


「命日は――7月28日です」


 それは、【鳰】の脳に刻まれた。


 それと命日っていうのはどうなのかと【鳰】は思った。









 新人戦。

【Nest】に関する7校で行われる大会である。

 参加者は1年生から選ばれる。

 これは、各7校で行われて上位者から『7校合同魔法技術祭』の参加が認められる。

 この通称七祭は各学校で完結している『新人戦』とは違い、七校合同で行われることになる。

 それに加えて、別枠として二、三年生の参加枠もあるためレベルの高い大会となっている。


「なあ、ってことは、これ頑張り過ぎたらこれも出ないといけないのか?」


 俺は七祭の説明を聞いて対面にいる蒼介へと聞いてみる。


「まあ、そうだね。それぞれの学校から猛者たちが集まるから結構盛り上がるようだけど」


 恐らく、そこまで『新人戦』も勝ち進めないような気がするし気にすることはないとは思うのだが優勝した奴が出るわけではなく上位何人かは出るんだよなぁ、なんて思うと下手に勝つと不味いかもとか思ってしまう。

 しかし、受験時に少し弁明したとはいえこいつ強いんじゃね?みたいな風潮があるから下手に負けたくないんだよね。


「伊織君頑張ろうね」

「う、うん」

「大会は好きじゃないの?」


 微妙な反応をしたらかそう訊かれる。


「好きじゃないというかああいうガチな雰囲気苦手なんだよ」


 大会特有の空気とか、みんな敵とか、本気で勝ちに来てるとか。

 それが悪いとか否定したいとかではないのだが、自分としては苦手なのだ。

 もちろん、努力をしている人はカッコいいし、本気で何かに打ち込めるというのは素晴らしいけど。

 まあ、単純に俺個人が苦手というだけだが。

 というか、本人たちより本気になってる大人たちが怖い。


「俺としてはエンタメ的な感じの方が気が楽なんだよな」


 とは言え、皆が本気でしているなら俺も本気でするが。

 幸いなことに、ここ一年は特に技術向上に力を入れていたので、向き合い方としては十分だろう。


「まあ、出るからには本気でやるけどな」

「応援してるね」


 何故か一緒に出る紗奈に応援された俺は氷だけになったカップをストローで啜ったのだった。

自分に甘い世界が好き。

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