132話 過去の甘露は未来の甘露
「伊織君行くよ」
「うん」
俺は今日から赤高に通い始める高校一年生、津田伊織!
今は入学式に向かうところなの!
なんだか今日は新しい出会いが待っている気がする!
「いけなーい、遅刻遅刻~!」
「お兄ちゃん何してるの?」
「イメトレ」
俺が入学するということは詩は中学三年になるということ、実に早いものだ。
とはいえ、ついこの間まで受験をしていたような気もしたが正直特筆するようなことはない。
本当に何もなかったのだ。
あえて書くとするなら、金髪、ヒヨウ、イケメンの三人組は案外強かったようで普通に合格していた。
ということは他のみんなも合格してるわけで。
「じゃあ、詩はもう行くから!」
「いってら」
「行ってらっしゃい。詩ちゃん」
「行ってきます!」
詩は相変わらず元気に飛び出していった。
「あ、おはよ。伊織」
「おはよう」
ゲートを抜けたところで蒼介とゆあさんに合流する。
どうやら待っていてくれたようだ。
「おはよ」
「おはよう」
俺たちは簡単に挨拶を交わして中に入っていく。
入学式と言っても通常の学校と変わらないようでそう何か特別なことがあったわけではなかった。
床と天井が入れ替わるとか帽子がしゃべるとかはないらしい。
と、まあ、そんなことは置いといて俺たちは振り分けられたクラスで席についていた。
教卓にはすでに入学式で紹介された担任の教師が立っている。
担任は若い女の先生で何というか大学生みたいな見た目の先生だった。
「はーい。では改めまして自己紹介をさせていただきます」
そういって注目を集めると可愛らしい仕草を取る。
なんか生徒受けしそうな先生だなとボーとみる。
ただでさえ若い人が少ない教師でしかもそれを抜きにしても人気が出そうな先生だ。
「私の名前は河瀬千です。皆さんよろしくお願いしますね~」
そんな男子たちから特に人気が出そうな先生だが俺は浮かれるようなことはしない。
俺は大人なのだ。
というか、隣に紗奈がいてそんな気にはならない。
なんか、先生の顔をちょっと見ただけなのにもうなんか怖いし。
「同じクラスでよかったね」
「う、うん。席も隣だしな」
言い淀んでしまったが俺だって嬉しい。
紗奈が隣なのも単純にうれしいが、このクラスで友達が出来なくても何とかなる。
「じゃあ、どうしようかな~。みんなで自己紹介でもしようか」
そんな先生の声とともに始まった恐怖の時間、自己紹介だが、これを失敗したら詰む。
実のところ自己紹介がうまい奴というのは定型文を使いまわしている。
聞きもしない音楽が好きとかやりもしないゲームが好きとか。
まあ、何を言うにしても定型文が決まってるためスラスラと言葉が出るし、人生で何度も同じことを言ってるため無意識の中で相手がよりよく受け取りやすい自己紹介ができる。
ということで自己紹介に必要なのは定型文、それさえ使いまわせばこの勝負勝てる!!
しかし、俺はそんなものは用意してない。
なんだよ、定型文って。
そんな固まるほど自己紹介なんてしたことねーよ。
というか自己紹介中は固まるより震えてる。
とはいえ、そんなこと話考えている間も時間は進みあっという間に俺の番は来る。
ちなみに先生曰く名前と好きな食べ物、あと入りたい部活を言えということらしい。
それとあったらネストの階級。
「あーえと、津田伊織です。好きな食べ物は……寿司で――」
やばい最悪だ寿司とか言いにくいものを選んでしまった。
もっと言いやすくて聞き取りやすいものにすればよかった。
「――部活は入るつもりはなくて、あ、あと、ネストの階級は三級です」
ふう。
取りあえず言い終わり席に座る。
やっと終わ――おい誰だ「たったの三級!?」って言ったやつ。
いいだろ三級でも、というかお前ら階級すら持ってねーだろ。
「月宮紗奈です。好きな食べ物は伊織君……こほん、伊織君と同じお寿司で部活は伊織君……こほん、と同じで入りません。それと階級は伊織君……とは少し違くて二級です」
なぜ全てにおいて俺の名前を言ってそのあとに言ってしまったみたいな顔して言い直してるんだ。
というか階級に関しては少し違うってなんだ?
というか、二級ってなんだ?
そんなこんなでみんな自己紹介が終わったのだが受験時に魔力測定の結果がトップ10に入っている人で俺の知ってる人はいなかった。
というか、俺と紗奈だけだった。
5時間かけてこれしか書けませんでした。
内訳
執筆1時間
読書(漫画)3時間
天井のシミを数える1時間




