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天より落ちし光の柱は魔石を運ぶ  作者: えとう えと
第八章 赤翡翠高校編
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131話 一が転じて二となせば(直訳)


 俺の魔力量は沢山あることが分かった。

 それはとてもうれしいことだ。

 漫画の主人公とかでも魔力がなくて努力してみたいなのはよくあるが俺がもしその立場で努力しても報われない可能性もある。

 だから、とても喜ばしい事なのだが……。


「やったね。一位だって!」


 紗奈は嬉しそうに笑って俺の手を取る。


「うん」


 俺はそっけなく返すがちゃんと嬉しいのだ、しかしながらそれ以上になんかとてもいやだった。

 正直、力があるなら見せびらかしたいし、スローライフが~なんて考えはこれっぽっちもないのだが、すごく嫌な感じがした。

 恐らくその原因は――。


「あれなんか俺見られてね?イケメン過ぎてつれー」


「黙れ金髪」


 先ほどの発表から会場の空気が変わった。

 この視線はどう考えてもくそ金髪野郎ではなく俺に向けられたものだろう。

 やばい。まずいことになった。


「俺がそこまで強くないのバレる」

「伊織君は強いよ」


 紗奈が励ましてくれるのはうれしいのだが、俺の実力はちょっと強いくらいなのだ。

 その為、今のようにこいつくそ強いんじゃねと言った状況はとても肌に悪い。知らんけど。


「俺すぐ負けてアレコイツ?とか思われたらどうしよう?」

「今回の試験に試合形式の物はないよ」

「え?まじ」


 流石だ蒼介。

 きっとこういうところがモテる要素なんだろうな。マネしよ。


「今回の試験で使われるのはモンスターの討伐タイム」

「何それ?」

「エリア内にいるモンスターをどれくらいの時間をかけずに討伐できるかを競うんだよ」

「へー」


 どうやら今回の試験は他の受験生と戦うと言ったものはないらしい。

 受験生は順番に用意されたエリア内のモンスターをより迅速に倒すことができるかを見られるらしい。

 これにより判断能力とかなんとかを見られるらしいがそれはあってない様なもののようだ。学校でテストの点が悪くても提出物をしっかり出せば成績に加味されるとか言いながら結局重要視されるのはテストの点なのと同じだね。

 あと、ペーパーで判断能力をとか言ってたが実戦でするのと筆記とでは違うからどうとか。


「でも、これ全員やっても結構時間かかるんじゃね?」


 正直何人いるかもわからないが一人一分だと仮定しても三十人いれば三十分だ。そうした場合どう考えても今日中に終わりそうもない。

 というか、実際は長ければ一時間超える奴も良そうだし。知らんけど。


「それは大丈夫だよ。会場は【Nest】の学校すべての施設を使って行われるし、受験条件には管理されてるものとはいえ、一定ランク以上のダンジョンを三回以上クリアしないといけないというものがあるから、実力が全くない人はここにこれないし」


「そうなんだ」

「とはいえ、それなりに時間もかかるからこの設備なんだけどね」


 そういいながら蒼介は自身の座る椅子を指した。








『では、お手元の端末もしくは座席にあります液晶に『入場してください』との文字が出ましたら移動を開始してください』


 そんな、アナウンスが聞こえてすぐに液晶にその文字が浮かぶ。

 そういえば俺の受験番号は『c00001』だったなと思い出し席を立つ。

 

 どうやらゲートを通るだけで良さそうなので一人でも迷うことはなさそうだ。


「伊織君こっち」


 とはいえ、番号が近いのだ。より確実な方を選ぶべきだろう。

 ということで途中までついてくことにした。








 伊織が会場に向かった後、その場にいる多くの者が同じ映像に注目していた。

 現在、四桁を超える受験生が同時に試験を受け、その映像が映されいているのだが、それでも皆注目しているのは一人の男であった。


 名前は津田伊織。

 知名度や人気は多くあったもののそれに比べ実力がファンからすら疑われていた男。

 そんな、男が今現在、実力と言う面で大いに注目を浴びていた。

 理由は圧倒的な魔力である。

 その数値は圧倒的であり、『円卓最強』という二つ名を欲しいがままとする佐梁千里を二位に抑え四千以上の差をつけて一位に君臨した男。


 そんな事実に加え予想外過ぎるその男の名前に皆が関心を寄せていた。


 そして、そんな彼が映るモニターには彼と二十五体のモンスターが映っていた。

 モンスターの名前はマジックタイガー、試験用に【Nest】開発部と協力し、生みの親である【秋沙】が受験用に調整したモンスターであった。

 とはいえ、調整されていると言ってもそう簡単にこの数を倒すことが出来る物ではない。


 しかし彼ならば。

 そう思い皆が注目したとき彼が構えに入った。


 アイテムだと思われる首飾りがわずかに光り、取り出されるのは一振りの刀。

 その全身を赤い布が包帯を巻くようにして覆っている。

 彼はその刀を無理やり制服の腰に差すと手を添える。


 刀の名前は『アヤザミカミ』。

 神の名前をその身に宿す刀。


 そして、次の瞬間合図が鳴らされる。


「え?」


 画面に注目していた誰かの声か、しかし、同じような思いに内心驚いた者は多くいた。

 しかし、驚くのも仕方ないというもの、画面を注視する者の目には微動だにしない彼がいたのだから。

 しかしあるものは画面上部にあるタイマーが止まっていることに気付く。


『0.000032』


 まさかと思った。

 機械の故障かと考えた。

 しかし、彼ではなく彼を囲むように立っていた虎を見るとないのだ。

 首が。

 首はどこにも映っていない。

 というより、消し飛んでいた。

 なによりも斬ることに特化しているはずのその武器は知覚できないうちにすべての仕事を終えていた。








「失敗した―」


 流石にあれはなかったな。

 斬撃を放とうとして斬るのではなく消し飛ばしてしまっていた。

 これでは刀ではなく剣だ。


 それにやっとこの刀を使えるようになってきたがそれでもまだまだ技量が足りない。


「お疲れ、伊織」

「うん」


 蒼介にそんなこと言われてそんな風に返すが、これってどう返せばいいんだろ?

「お疲れ」と来てもまだ何もしてない相手に同じように返しようもないし。

 コミュニケーション能力――いや、単純な経験不足が悔やまれる。


「大分強くなったんじゃない?」

「そうか?一年修行したにしては全然なような」


 この一年勉強の傍ら黒帯のもとで修業に励んでいたがあまり上達できたような気がしない。

 モンスターを倒して身体能力が上がるのとは違い技術的なことだから仕方ない気もするが。


「お前にそんなこと言われたら俺たちはどうすれば」

「私も同感」

「十分強いのにな」


 金髪、ヒヨウ、イケメンは立て続けにそんなことを言うが実際そうなのだから仕方ない。

 まあ、気持ちは分かるけど。テストとかで八十点とか取ってるやつが本気で悔しんでるときに同じ気持ちになる。俺なんか三点なのにーって。


「あ、次は僕たちの番だね。いこ、ゆあ」

「うん」

「じゃあ、俺たちもじゃん」


 回りが早いな。

 そんなことを思いながら見送った。

 そして知らぬ間に手を握られててビビったら紗奈だった。

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