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天より落ちし光の柱は魔石を運ぶ  作者: えとう えと
第八章 赤翡翠高校編
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128話 被写体の心撮影者知らず


 あ!野生のおっさんが飛びだしてきた!


 というか、この人物陰からこっち見てたけどなんだろうか。

 紗奈やゆあ、ヒヨウを見てたとか?

 まあ、分かるが。

 でもこの人は恐らく受験生ではない。

 高校なんて最悪おっさんでも入れるが多分違うだろう。

 というか首から関係者証かけてるし。

 しかし、関係者だからと言って安全とは限らない。


「さっ」


 いきなり喋ったおっさんに驚くが「さっ」ってなんだ?

 紗奈のさとか?

 狙いは紗奈?だとしたら俺も黙っていられないが。


「サインください!」


 は?

 いやなんで?

 つーか誰にだよ?


「津田伊織様!前からファンでした!」

 

 俺!?


「いや、待ってくだ……」


 ん?ファン?おっさん?


「あの……もしかして安田さんですか?」


 もしかしてと思い聞いてみる。

 安田という名前は前にシトイさんとトンナさんと話した時に聞いている。

 何でも俺のファンとか言っていたが。


「なぜ、俺――いえ、私の名を……ありがとうございます!!」


「いや、なにが?」


 何故かお礼を言われたがよくわからん。


「しかし、流石です。完全に気配を絶っていたのに私の気配に気付くとは」


「いやまあね」


「それでサインは……」


「ああ、サインくらいならいいですよ。描いたことないんでうまくはないですけど」


「なんと!?まさかサイン一号!?」


 なんだよ?サイン一号って。


「待って。伊織君の初めては私の物」


 なんか紗奈も参戦してきた。

 というか、めんどくさくなりそう。

 自分で言うのもなんだがこのおっさん熱狂的なファンだぞ。

 こんなとこで揉めないでほしいが。


「もしかして、伊織様の彼女様であらせられる月宮紗奈さんでありますでしょうか?」


 様様うるさいし。


「そうですけど」


 また殺気飛ばしそうだし。


「それならば当たり前です。私より紗奈様にサイン一号はふさわしい」


「わかってるならいい」


 なんかうまくいったけど。

 紗奈お前、敬語取れてるぞ。


 そして何故か俺は紗奈とおっさんにサインを描いた。

 そして、終わったかと思ったら蒼介にも反応を示して結局結構時間が経ってしまった。


「ありがとうございました!サインは家宝にします!」


 そんなことを言い満足そうな笑みを浮かべる。

 最終的に紗奈や蒼介にもサインをもらっていた。

 あと、紗奈は何故か初めに俺に描いてからあ描いてあげていた。

 いや、本当はわかってるけど。

 というか安田(呼び捨てにしてほしいと言われた。下の名前は流石に拒否した)お前、普通に受験生への妨害だろ。

 俺はもう受かってるので別にいいけど普通に考えたら殺されてもおかしくないぞ。


「なんかすごかったな津田、あの人も、お前も」


「でも、おかげで緊張ほぐれたかも」


「そうだな」


 案外好印象だったようだ。









 ということでそろそろ始まるのかなとか思っていたがまだ時間がありそうだ。

 入場受付から二時間ほど時間を取ってるらしくまだまだ時間がある。

 受かるかわからないテストだったら待ち時間長くて死んでいた可能性がある。


「あはは。確かにそうですよね。それじゃあ会場の雰囲気なんですけど」


 なんか自撮り棒持った奴が歩いてきた。

 おっさんの次は配信者か?

 声を聴く限り動画ではなくてライブ配信のようだ。

 危ないからやめてほしいななんて思ってるとこっちをカメラで映しやがった。

 肖像権侵害だぞ。テメェ。


「こんな感じでもう結構人が……!?津田伊織と日高蒼介!?」


 いいよそういうの。

 普段の俺なら承認欲求満たして気持ちよくなってただろうが安田が来たせいでもうおなかいっぱいだ。

 褒められたりして嬉しくなかったわけじゃないし気持ちも伝わってきたがもういいかなって気分だ。


「あっあの!自分Y〇uTubeやってるコウスケっていいます」


 うわ、話しかけてきたし。

 勝手にカメラ向けんな。

 つーか、お前配信する前に受験しに来たんだろ。


「お話聞かせてもらいたいんですけど」


「そういうのっていいんすか?」


 俺は指をさしながらカメラを見る。

 すまんな少年(同い年)多少ウザいかもだろうが注意させてもらう。

 それにどうせ生配信しているなら俺の方が正しいと世間は言うはずだ。

 さあ、素直に認めろ。


「いいんすよ」


「え?いいんすか?」


 いいわけなくね。


「そうなのか?蒼介?」


 ふっふっふ。

 こっちにはネストに所属している蒼介がいるんだぞ。

 お前の嘘なんか通じない。


「そうだよ、伊織」


「え?まじで?」


「マジだし。そもそも試験は【Nest】の方で配信するし」


「マジか。だれがオッケイ出したんだよ」


「【鴉】さんらしいけど」


「しそう。っていうか絶対するな、あの人なら」


 だがそれでも、どう考えてもテストの結果を全国というか全世界にばらまくのはいかがなものかと思うが。


「じゃあ、テストの点数とかバレるの?」


「いや、それはないよ。というかペーパーテストは昨日だし。僕は【Nest】に入っていて判断能力を問われる試験はパスできたとは言え普通の五教科の試験は受けなきゃだから行ったけど伊織と紗奈さんは受ける必要ないから点数自体ないしね」


 とは言え知らないのはおかしいけどねとか言ってくる。


「でも、仕方ないだろ。な?紗奈だって忘れてたろ」


 きっと忘れていたはずだ。


「伊織君ごめん。私昨日受けた」


「え?受けなくていいんじゃ」


「受けてもいいって言ってたから。どうせ勉強したんだしと思って」


 なんか申し訳なさそうに言われると逆につらい。


「い、いや、気にしてないから。ペーパー試験のこと忘れてたのは強者の余裕的なやつだから」


「そ、そろそろいいですか?」


「あ、すんません」


 ほんと申し訳ない。

 俺が最も嫌悪している身内ノリをかましてしまうとは。

 ちなみに自分でするのは大好き。


「えっと、今回の試験について何かありますか?」


「なにか?」


「何でもいいですよ。ネットの向こうの人たちに伝えておきたいこととか」


「えーそうだな。もう合格してるし、合格するぞとも言えないし。まぁ、取りあえず精一杯頑張ります」


 ここで面白いことを言えればいいのだがこういう時狙いにいって滑るのは分かり切ったことだ。

 でも、普通過ぎると詰まんないとか言われるんだよな。

 しかも、ネットだろ。怖すぎる。


「そ、そうなんすね」


 なんか引きつってるし。

 でもお前いくら微妙だからって顔に出すなよ。


 蒼介、紗奈とその場全員へ聞いていく。

 やってることが配信者というよりインタビュアーなんだが。


「それじゃあ、皆さんは今回の試験、円卓の中のうち何名かいるようですけどどう思われます?」


 気を取り直してとコウスケさんが話始めたがよくわからない単語を出す。


「円卓?」


 いや、円卓の意味ぐらいは分かるが、そうじゃない。


「【Nest】で円卓と言えば第一回【Nest】試験で三級になった人だよ」


 俺たちの時もそうだったが【Nest】の試験では初めは四級か三級しか取れないのだが、試験で三級をとれる人は極めて少ないらしく重要視されていた。

 そして、第一回と言えば魔石が降った当初腕利きだけを集めて行われた試験だったはずだ。

 後から聞いた話だと受験者同士の潰しあいが起きて三級を取るどころか四級を取ることも難しかったようだが。

 そんな、人たちのなかで三級になった人数がたしか12人だったはずだ。


「でも、そしたら俺知らないっすね。すんません」


 いや、本当に申し訳ない。

 先ほどのコメントと言い何と言い。

 ん?なんで俺は勝手に撮ってるこいつに謝んないといけないんだ?

 撮影オッケイと言われても映していいですかくらい言えよ。

 カメラ向けてから話良いですかとか言われたら断れるわけなくね。

 まあ、そんなこと考えてなかったけど。

始まらないすっね。

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