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118話 金星


 大規模拘束術式"神縛結解"。

 それを構成する術者の中の更に中核を担うものたちはある適正が必要となる。


 そんな彼らは結解以外にもその適正を利用することができる。

 それは魔法に負けないともされる力。


 そして人は考えた魔石を二つ使用することは不可能だ。

 であるならば適性を持つものに魔石を取り込んだらどうなるのだろう。


 結果は失敗。

 残るのは死体のみ。


 しかし人は死体を積み重ねながらも二つの成功例を作り上げた。


「それが現在幹部【鳰】に仕えるトンナとシトイ両名」


 長々と語った声の主はやっと言葉を区切った。


「そろそろ出てきてほしいんだけどなぁ」


 シトイは気配を探りながらも相手を見つけられないので仕方なく聞いていたが、流石にしゃべり終わっても黙ってる必要はない。


「一人じゃないのかよ」


 物陰から出てきたものたちを見てシトイは少し口調が乱れた。








「――そんなほぼ百パー死ぬようなことを子供に施すなんておかしいと思いますよね」


 トンナに男は語り掛ける。


「だから我々は【巣】を潰すことにしたんですよ」


「理由になってねえよ。それをしたのは【巣】じゃなくて俺の家だ」


 いつもと違う口調で話すトンナ。

 一人称までも私ではなく俺になっている。

 そんな様子にハヤトは驚きながらも何もできないでいた。

 ハヤトだって子供とは言え素人ではない。

 ここでの自分の最善手が自分が動かないことだとわかっている。

 しかし、そんな状況を歯がゆく思った。


「でもその状況を作ったのは【巣】ですよね」


「――ッ」


 その言葉には何も言えなかった。

 なぜ、トンナにこんなことが行われたかと言えば家が落ち目であったからだ。

 本来適性者が出る家系は珍しく希少性が高いそのためその家は力を持つ。

 しかし、その当時トンナと同質の適性者が数人いた。

 本来なら命の危険の伴う職場だ。少し人数が増えただけでは適性者というカードは十分に有利に働くはずだった。

 しかし【巣】は頓名の家が組織に貢献していないことを理由に切り捨てようとした。

 実のところこれは内部の勝手な暴走であるがそれは知るところではないし監督責任は【巣】にある。


「で、なんだ?そんな【巣】の被害者である俺に勧誘にでも来たのか?」


 トンナは話をそらそうとそういう。


「違いますよ。そんないつ裏切るともつかない人は入りませんよ」


 何をご冗談をと笑う。


「じゃあ、なんだよ?」


「わかってるでしょう?魔石ですよッ!」


 男は地面を蹴り接近した。








 銃声が鳴り響き人々は雪崩のように動き出す。

 そんな中をトシユキは揉まれながらも探していた。


「ヒカリ!」


 普段は死んでもこんな人の多い中で張り上げない声を最大限張り上げながらヒカリを呼ぶ。


 二人とも美少女ベアを追っていたため、途中からは完全に忘れて遊んではいたが【鳰】たち二人の近くにいた。

 しかし、視界に隅でその二人に話してる男がいることに気付いた。

 そして次の瞬間男は銃を撃ったのだ。

 途端に流れ込むように動き出す人ごみにトシユキとヒカリは押し流され離れ離れになってしまった。


 視界の端でヒカリを捉える。


「いたっ!」


 トシユキは気合いを入れて波にあらがう。

 さっきまでは道行く人たちは間を開け十分通れるくらいには間隔があったが、我先にと皆が動くせいでなかなか進めない。


「くっそ」


 トシユキは悪態をつきながらも地道に進んでいった。








 銃から放たれた弾丸はポロリと勢いを無くし地面に落ちる。


「防がれたか」


 フヅキに向かい放たれた弾丸は【鳰】の札によって防がれる。


 アラキは呟くもすぐ行動を移す。


 本来銃は魔法やそれに準ずる力を持つ者には決定打にはならない。

 しかしそれはある程度力を使えてこそだ。

 いくら魔石を取り込もうと全く力が使われていなければ意味がない。

 魔物も倒したこともない人間にはまず防げない。

 これなら引き金を引くだけで魔法の類を発動するより早い。

 だから、フヅキのような人間から魔石を取り出す際には一番効果的だ。


【鳰】はとっさにフヅキの手を引き距離を取ろうとする。

 しかし、アラキもそれで逃がすほど甘くはない。


「江州!」


「了解!」


【鳰】は視界に入った江州の名前を呼ぶと間に割るように入ってくる。


「七赤!」


 江州は七色の炎を身にまといアラキに打つ。


「チッ」


 アラキは距離を取りつつ舌打ちをした。








「何人いるんだこれ?」


 シトイは攻撃を放ちながらそういう。


「――」


 無言で放たれた攻撃をかわして開いた胴に蹴りを入れる。

 キリがない。


「……いや、これは式か」


 シトイは手ごたえの無さからやっと気づく。


 目の前で倒れているのはみな一般的な私服であるため気付かなかった。

 しかも統一されたものではなくすべて来ているものが違う。

 唯一気付けそうなポイントである顔は被り物で隠れていてわからない。

 倒れている奴の被り物を取ってみると顔がなかった。

 勝手に襲撃犯は顔を隠すものだと決めつけていた。


「気付かれたか」


 特に驚きも悔しそうにもせずただ一言そういった。








 名瀬は襲撃者を捕獲していた。


「やられたわね」


 逃げた先で結構な人数を見つけたので深追いしてしまったが結果はただの式。

 式の被っていた被り物をそばに投げ名瀬はその場を立つ。


「西湖ちゃん戻るわよ」


「はい!」


 時間を食ってしまったがこれは致し方ない。

 それにあのメンツでアラキが勝てるはずがない。


 とはいえ万が一があるといけないと思い二人は早急に戻った。


 残された路地には数十の式が積まれている。

 そして式たちは活動限界を迎えどんどん姿を消し、もとの触媒だけがたくさん落ちていた。

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