108話 理想が欲しいわけでもない
如月風都希は完璧美少女だ。
これがトシユキの評価であった。
勉強できてスポーツ万能おまけに美人、漫画の設定かというくらいには完璧だ。
というか、勉強についてはテストが簡単だからと考えたとしても出来過ぎていてなぜこんな学校に入ってきたのかわからない。
ちなみに、スポーツにおいてはそこまで驚いてない。
というのも、この学校運動神経が高い奴が多すぎる。
INTを捨ててSTRに極振りしたのかと聞きたいほどに。
ちなみに、一学期早々の体育ではレクリエーションでドッジボールをしたときには、"クラスで一番強い奴"的な奴が大量にいてまるで銃弾が飛び交う戦場だった。
さらにちなむと、そいつら以外は陰キャなため、早々に当てられに行くか隅で会話に花を咲かせているかだ。そして、避けようともしない陰キャどもに投げても楽しくないので、狙われることはない。
正直根暗でやる気のない陰キャがここまで多いと、陰キャよりも下にいるボッチであるトシユキから見ても、ちょっとな~と思う。いや、かなりアレだと思う。
まだ一人なら気にもしないが流石高校ということで同じような奴が集まるようだ。
話は戻るがフヅキはいろいろできるため人気だ。
ということで周りに人が集まるのだが。
「邪魔だなぁー」
まぁ、のぞき見したいから退けとは言えないが。
「そんなにフヅキちゃんが気になるの?」
「うおっ!?」
突然の呟きに体が跳ねる。
「あ、えーと、お、音海さん」
「え~、ちょっと他人行儀じゃない?下の名前で呼んでよ。ヒカリってさ」
音海ヒカリ。
クラスメイトである彼女だが今年入学して初めて話した。
そんな彼女は頬を膨らませて、仲良くしようよ。久しぶりに会ったんだからさ、という。
彼女が久しぶりというのは中学は違うものの同じ小学校に通っていたからだ。
ちなみに、入学式時点で気づいていたが話しかけられなかった。
「昔みたいに……ってあれ?私のことなんて呼んでたっけ?」
「えーと、どうだったかな?」
そういわれ、回答を濁すが、実のところ名前を呼んだことはなかった。
というか、人生において小学校から女子を名前で呼んだことはほぼない。
せざる負えないとき以外は呼んだことはなかった。
「まぁ、いいや!とにかくヒカリって呼んで」
「わかったよ」
「呼んで」
「……ヒカリ」
少し気恥しくも感じながら、トシユキは脳内で、これ青春してるのでは?とか思っていた。
そして話を戻されるのはまずいと思い、口を開く。
それに、こういう時に何かしゃべらないと気まずくなると入学してから学んでいた。
「そ、そういえば結構変わったね」
成長したから当たり前なのだが、それだけだはなかった。
「何というか、前はもっと大人しかったというか」
自分から話しかけてくるような子ではなかったし、それに喋り方も変わったように思う。
「まぁ、結構立ったからね。それに見た目は努力したし」
そういうヒカリを見るとなんだかあか抜けている。
元々顔はきれいな方だったがさらに磨きがかかっている。
ちなみに、化粧を覚えてとかは、判断がつかないからわからない。してるとしたらナチュラルすぎて技術的にもすごいけど。
一応化粧自体は禁止されてるからそれ以外で頑張ってそうだが。
「そうなんだ――」
「ねぇ、話の続きだけど、なんで見てたの?やっぱ好きとか?」
流石にごまかせたと思ったがそうでもなかったようだ。
下手に、ごまかすと、バラされそうだし、そしたら俺からきもい奴というレッテルが張られそう。
「見てたのは気になったからだけど。好きかと言われればそんな気持ちはない」
あれだけ見といてなんだが、正直そんなことは一言も考えてなかった。
「え?そうなの?私てっきり……じゃあ、彼女とかいるの?」
「いないけど……」
友達すらいないんだが。
そいうか、いそうに見えないだろ。
「そういうヒカリはいるのか?」
「いっいないよ!」
まさか自分が訊かれると思っていなかったのか動揺したように言う。
「じゃ、じゃあ、何で見てたの?」
次は彼方が話を変えるようにそういう。
「え?いや、あれだけ目立ってたら気にもなるだろう」
「まぁ確かに」
ヒカリは納得したような顔をしていた。
「あ、それと、トシユキくん見てるのバレそうだからやめた方がいいと思うよ」
ヒカリが言うには何度か視線を感じて今のところたまたまだと思われているようだが不快に思っているらしい。
なら、これ以上はやめた方がいいだろう。
「教えてくれてありがとう。気を付けるよ」
「うん、あっもう時間だから戻るね!」
そういって席に戻っていった。
「次の任務を説明する」
【鳰】が部下に向けて話始める。
【鳰】が幹部になってから少し、【鳰】の経歴などを加味した結果、幹部でありながら【鳰】とその部下たちは、通常の任務をこなしていた。
「今回は任務を遂行するにあたって、まず、接触しなければならない人物がいる」
【鳰】はモニターに資料を映し出す。
「少女の名前は、如月風都希」
そう【鳰】は言った。




