チンピラの死
コツコツとペイジの靴音が廃工場に響く。
ーーー23年前、俺のせいで、ここで母が死んだ。
そして、間もなく俺もここで死ぬ。
死に場所としては、有りかもしれないな、などと呑気に考えていた。
そんな俺の上に覆い被さるようにペイジが顔を近づけてきた。
「カイさん。今まであざした」
そう言うと、俺の脇腹に突き刺さった果物ナイフを抜き取る。
「ぐぁあああぁぁ!!!」
あまりの痛みに悶絶する。
そして、抜かれた傷口からはドクドクとドス黒い汚い血が流れた。
(俺にお似合いの色じゃねーか……)
「おぅ!ペイジやるじゃねぇか!」
先ほどまで散弾銃を食らいたくないからペイジに大声を上げていた長身のチンピラが笑顔で褒めた。
「ああ、アドンさん。俺は何もしてねぇ。こいつがザコだっただけですよ」
そう言って、俺の体を踏みつけた。
「まぁ、なにはともあれ、俺らをビビらせてくれたお礼はしてやらないとな」
そう言うと思いっきり土手っ腹を蹴り上げられた。
「うっぷぇ……!!」
その衝撃に口からも血が逆流する。
「はーい。まだ終わってませんよー」
長身の男はその身長を活かして、俺の胸ぐらを掴んで、上から振り下ろすようなパンチを俺の顔面に2発、3発と叩き込む。
「ぶっ!がっ!ぐぁっ!」
「さて、そろそろ俺の"究極最強メガトンパンチ"で昇天させてやるか」
そう言うと、力こぶを盛り上げながらアドンが拳を振り上げた。
「アドンさん。待ってくれ。こいつは俺がケジメを付けなきゃいけねぇ」
そう言うと、ペイジは振り上げたアドンの拳を掴んだ。
「あ?……ふん。まぁいいけどよ。貸し1な」
「……………」
何が貸し1なのか知らないが、とにかく俺をなぶる権利はペイジに譲られた。
そして、そのまま馬乗りになる。
ーーーどうやら、ここまでのようだ。
ペイジは血濡れたナイフを俺の首に向け振りかぶった。
「せめてもの情けですよ。一撃であの世に送ってあげます」
「イヤァぁぁあああ!!!」
オリヴィアの叫びが聞こえる。
冷静に見れば、こんな状況に自分を追い込んだチンピラがただ死ぬだけのこと。
そんなに叫ぶようなことじゃない。
それでも、なぜかオリヴィアは悲しんでくれていた。
「うるせぇなぁ!!テメーはもう反乱軍行き決定なんだよ!!」
ーーーオリヴィア。
ーーー助けられなくてすまねぇ。
ーーーいつか、生まれ変わったら。
ーーーもう、お前を悲しませるようなことはしないから。
ーーーありがとう。
ーーー恋を教えてくれて。
俺は黙って目を閉じた。
「ぶっふぇっ!!!」
その瞬間、全く予想していなかった声が、俺の頭上から聞こえた。




