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村の裏切り者は老婆の息子

老婆は改めて話し始めた。


「ええ……。わかりました。では呼び名は"ムーン帝国"と致します。……そして息子はムーンへ向かい、ムーン労働省で働き始めたのです」


「ここまではあんまりひどくない気がするが……」


「いえ、息子の罪はその仕事内容でした……。ムーン帝国は、各市町村から1名の欲深き出身者を呼び寄せ、今の村の水や食糧の生産状況を聞き出し、把握して、その村が耐えられるギリギリの税を課しているのです」


「マジか……」


「その見返りに、裏切り者の出身者には裕福な生活が約束されます。以前帝都ムーンへ行った村の者がローランを見かけたそうですが、この辺りではあまり見ない高価な装飾品まで身につけていたそうです……」


村人は村長の手前、あまりローランを悪く言う者はいなかったが、皆一様に顔を伏せていた。


子供の頃から村全体で育ててきたローランが裏切ったという事実を受け止めきれないのかもしれない。


事実、もしかしたら事情があったのかもしれないし、そう信じたい気持ちもあるはず。


だから、そこに関しては何とも言えなかった。


「とりあえず事情はわかった。でも、俺はサタンじゃないし、おばあさんの生贄とか差し出されても困惑するだけだ」


村人は悲しそうに俯いた。


(くそっ……。そんな顔するなよ……)


「だから……俺には……」


「サタン様……」


先ほどスープを飲んだ少女がうるうるとした目でサタンの名を呟く。


「あぁ~もう!!わかったよ!!やれば良いんでしょ!!じゃあお願いの②だけ頑張ってみるから!!でも出来なかったらごめんね!!」


村人から「おぉ!!」という歓声が上がる。


「サタン様……!ありがとうございます……!」


「いや、サタンじゃねーから」


「で、ではあなたは?なんとお呼びすれば……」


「俺の名は……、うーん。いや、やっぱサタンでいいわ」


「やはりサタン様でございましたね!あの背中の黒き翼は伝承そのものでございました。我々のために、ありがとうございます……」


老婆も涙を拭いながらお礼を言ってきた。


「それじゃ、ひとまず帝都ムーンに行ってこの現状をなんとかしてくれる人を探してみるから。帝都へ行くにはどうしたらいい?」


俺は、俺を召喚したマルタの村人を救うという目的に向け、早速動き出すことにした。


そのため、ひとまず老婆に交通手段を尋ねた。


「まずはプニプニパンパン港へ向かってくだされ。そこから船でパニパニポンパン町に行けば、そこからピロピロムーン行きの馬車が出て……」


「もうええわ!!!」


俺はプニプニパンパン港へ向かってプンプンしながら歩き出した。

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