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全てを消し去りたい吸血鬼の暴走

その後、そのチンピラから事あるごとに付け狙われることになった。


「お前はあっち、お前はそこで見張ってくれや」


「OK」


「ものすごく強ぇからよ!出会っちまったらすぐ逃げろ」


6~7人の取り巻き連中を引き連れて、俺をとにかく見張る。


(うるせーな……。暇すぎだろ……)


その度にデコピンの刑に処した。


「ぶげっ!」(1回目)


「ぎゃんっ!」(2回目)


「ぶふぇっ!」(3回目)


「ギャオス!」(4回目)



「ブッオトコ!」(5回目)



「誰がブ男じゃ!!」



しかし、その後も全く諦める様子は無かった。


会社の会議終わり、社員との飲み会帰り、カフェでの読書中ーーー。


さらにはトイレで大をしてる最中まで上から覗き込んでくる。



「あ、くせーーー!」



「う、うるせーよ!」


持っている武器は、最初は鉄パイプなどの鈍器だったが、デコピンでの撃退回数に比例して、グレードアップしていった。


その結果、その当時には結構高価な銃などもちらほら持ち出してくるようになっていた。


ーーーそして、1805年1月。


俺は深夜までパブで酒を飲んでから、極寒の中、家路についていた。


セーヌ川にかかる陸橋を歩いていると、ふと足元に"何か"見えた。



ーーー見ると、そこには猫の亡骸があった。



しかも、その体の下には食糧にしようとしたのか、ネズミの死体が転がっていた。


その光景を見た瞬間、久しく忘れていたが、生きてきた中で一番嫌な記憶が蘇る。


(カトリーナ……!!)


そう、あの時俺はーーー俺がさっさと死んでいれば。


「ぐぅっ……!」


酒が入っていたこともあり、感情が異常に昂ぶる。


(俺は……なぜ俺だけが……なぜあいつが死んで……俺は……俺は……)


ーーー刹那、俺の中にありとあらゆる生きとし生けるものへ対する殺意が芽生えた。


(スベテ……キエサレバ……)


ーーー暴走の兆候。



しかし、自分でそれを抑える術は無く、深い怒りの波が俺を包み込んでいった。



その時、カトリーナと同じくらいの年齢の女達が楽しそうに歩いているのが見えた。


俺と出会わなければ、今もあいつは楽しく生きられたはずだ。


こんなクソ吸血鬼ではなく、普通の人間と、幸せな生活を送ることも可能だったはず。


そして、子を産んで、その子がまた子を産んで……。


ーーーそんな未来を俺が握り潰した。


(グ……カトリーナ……)


その殺意を女達に向けそうになったーーーその時。



「終わりだぁ!し、死ねーーー!!」



その大声と同時に俺の背中から腹にかけて、鉄の細かい銃弾が貫通した。


恐らく散弾銃で撃たれたのだ。



「っ!!?」



すぐに球を体から弾き出し、銃によるダメージはもちろん無かった。


しかしその衝撃によって、図らずも俺はなんとか冷静さを取り戻すことができた。



「粋なことするじゃん……」



俺は本心を呟き、振り向く。


するとそこには、案の定、いつもストーカーしてくるチンピラがいた。


そして、死んでない俺を見て「ひ、ひぃ!」と声を上げて走り出した。


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